~地域おこし隊発~八多のいいひと、みいつけた! 第1章 松原伸元さん
「ここがもっと家族や子供が集まる場所にできたら面白いよなっていうのは、前から思ってんねん」農園を眺めながら、にこやかに微笑みつつそう語る松原さんが印象的でした。
こんにちは。地域おこし隊の木村です。
八多町で頑張る人インタビューの企画第一弾として、「神戸北まつばら農園」の松原伸元さんにお話を聞きました。
現在5反ほどの農地で主にスイートコーンを栽培しておられるほか、自給用に米作もされているそうです。趣味はバイクで、夢は北海道をツーリングで回ることだとか。そんな松原さんですが、まずは就農に至る経緯からお話を聞いてみました。
きっかけは定年
サラリーマンで定年を迎えるにあたって、何をやっていこうかと考えたという松原さん。
「そのまま会社に嘱託職員で再雇用という形もあるんやけど、自分が生まれ育ったこの土地で、自分の両親がやっている農業という仕事に結構魅力あるなと思ってな。」
定年後からだと続けられても長くて20年前後。20年でどれぐらいできるかわからないけれど、これまでは実家の手伝いをするぐらいだった農業が、定年を機会にもう一度新しくチャレンジするには面白い業界だなと思ったといいます。
「それで、いっぺんやってみようかないうんで、定年前の1,2年間、週末に農業セミナーに行きだしたんや。」
そこで同じような境遇で農業を始めた講師の話を聞いて、もともと兼業ではありつつも実家が農業をしていて、受け継ぐ土地もある環境ならやっていけそうだなと、農業の世界に足を踏み入れることを決意されたそう。
ただ、始めるのならば現代の農業のやり方や考え方を習得しようということで、改めて農業について学びなおすため、定年後1年間兵庫楽農生活センターの農業学校に通うことに。
性に合うのは
当初は、有機農業を目指したという松原さん。研修コースも有機農業で応募したものの、倍率も高く受講は慣行農法コースに。しかし、後から考えてみると有機農法は自分に合っていなかったといいます。
「今でもそうやけど、なかなか販売ルートが少なくて売るのが難しいやん。手間もかかるしな。手間の分だけ高こうなったらええけど、かといって単価が2倍とかになるわけでもないしな。」
栽培計画においても最初は多品種作付けを計画したものの、管理の手間を考えると大きく作って一度に刈れて、大量に出荷というスタイルに落ち着いていったそう。
「いっぱい品種植えたら、どんどん管理が複雑になっていくやろ?でも、結局反当りでどんだけ売れるかやん。そう思うた時に、売り先から考えて品種を絞り込んでいったんや。」
そうして順番に試していった結果、最後に残ったのは単価が比較的安定して高いスイートコーンになったのです。松原さんがインタビューの中で語ってくれたこの言葉が印象的に心に残っています。
「ばーっと蒔いて、コーンができたらばーっと刈って、ばーっと売ったらさっと終わって気持ちいいやん。やっぱり自分の性に合った方法でするのが一番やで。」
やっぱり動物は大変
困っていることは何かと聞くと、間髪入れず獣害という言葉が出てきました。会社員時代に猟友会に入ったという松原さんは害獣駆除のため罠猟をしておられますが、いまだに動物との闘いは続いているそうです。
「イノシシはコメも食べるし、畑とかも荒らすからスイートコーン植えたときは周りに電柵せなあかんねん。それで畑の周りはネットが張っぱなしになってるんやけど、そういうのもなくすために捕らねばならんやろうなと」
捕ったイノシシは自分でさばいていただくところまでするという松原さん。
「この前捕ったのは60キロぐらいやったかな。大人のイノシシは賢いからカゴの檻には入らんからくくり罠で捕るんやけど、かかったらやっぱりその日のうちに絞めんと死んでまうってこともあって、時間的に制約ができたりとかであんまりやりたくなかったんやけど、今年はあまりに荒らされるからな」
それでも、まだまだ地域の人から捕ってほしいとの要望は多いそうで、一つの地域貢献にもなるということで今後も続けていくつもりとのこと。これだけ捕れるならビジネスに…と考えたこともあったそうですが、行政許可とそれを満たす施設が多数必要で断念したというエピソードも話してくれました。
「今は基本自分らの畑を荒らされんための有害駆除で、自分らで食べるだけやな。ジビエのなんかとかできたら面白いは面白いけどな」
目指すところ
スイートコーンは出荷だけでなく、収穫体験としても楽しめるのが魅力だと話してくれた松原さん。
「今は毎年楽しみにしてくれてる家族に来てもらってっていうぐらいなんやけど、みんな子供にトウモロコシ狩りやらせたがるんよな。ポキッって。それを親はカメラ持って追いかけて(笑)。そんで帰りはカエル捕まえたり、オタマジャクシをペットボトルに詰めたりする子もおって、そういうの見てたらええなって気はするよな。最終的にどうなるかはわからんけども、ホンマの観光というか、観光農業みたいなんできたら楽しいよなと思ってんねん。」
ただ、観光農業として考えると、実際には平日と週末の人数差や収穫タイミングなど課題は多く、まだ実現には至っていないのだそう。それでも、観光に力を入れていきたいという思いは持っているといいます。
「まつばら農園として、今後はやっぱり観光に力入れたいというのはあるんよ。コーンの売り上げをもうちょっと伸ばしてもええねんけども、そこもほどほどにしといて、全体として観光農園の機能をもうちょっと持たせたら面白いやろなというかな。ここに滑り台なんか置いてな、子供が遊べるようにしたりとか、そういうのもええよな。」
農業を始めるなら
新しく始めるならだれかに教えを乞うのが定石ということで、学校などに勉強しに行くことがおすすめとのこと。
「経験するために、やっぱり学校は行った方がええんちゃうかなとは思うな。正直学校で教えるって言っても実務は家庭菜園レベルぐらいやけども、農業に対しての、その周りの環境とかが何となくわかるからな。それで始めて、夫婦でどっちかは働きに出て。これやったら楽しいと思うし、成功できるんちゃうかな。学校行ったら、仲間が増えるしな。最終的に残っていくのはやっぱりいろいろあって1,2割ぐらいやけど、仲間にはいまだに相談できるしな」
学校で教わる内容それ自体ももちろん大事だけれど、そこで手にする周辺情報であったり、仲間とのつながりであったりというところが大切だという実体験に基づいた経験者ならではのアドバイスでした。
八多の魅力
最後に松原さんの思う八多町のいいところを挙げてもらいました。
「神戸に近い、三田に近い、要するに街に近い。やっぱりこれは一番のメリットやと思うな。当然近いから通勤もできる距離やし。だから逆に、兼業農家が多いっていう側面はあるかもしれんけどな。でも、半農半Xでやろうっていう人にはぴったりなんちゃうか。農業も楽しめるぐらいの、収入の半分ぐらいが農業でできるぐらいの規模感でいったら、ひょっとしたら面白いかもわからんな」
農業者の視点から魅力を語ってもらいましたが、やっぱり街に近いということは皆さんメリットだと思っているところなんだと実感しました。
最後に
今回第一弾としてインタビューさせてもらった松原さん。ワイルドでかっこいいお父さんのような方で、とてもフランクに接していただき、大変楽しいインタビューとなりました。この場でもう一度お礼をさせていただきます。
ありがとうございました。
さて、次回第二弾は誰になるのか…?ご期待ください。