【華鬘結び】(けまんむすび)
寺院などで仏像や曼荼羅を荘厳するために用いられる装飾の一つが「結び」であり、日本では吉祥を表すだけでなく結界を意味するものとして、神事仏事の両方で用いられてきました。
その一つに華鬘(けまん)結びという結びがあります。
華鬘の語源はサンスクリット語の「クスマ・マーラー(kusamamala)」と言われています。
日本の仏教はインドからシルクロードを通って中国、朝鮮半島を渡り、日本に伝えられているので、元々のインド仏教が直接伝わったチベット仏教とは違った形で伝承されているようです。
語源の「クスマ・マーラー」は中国で音写されました。
「倶蘇摩」が花、「摩羅」が鬘(カヅラ)という意味だそうです。
カズラというのは植物を、髪に結んだり、巻きつけたり、からませたりして用いた髪飾りという意味でだそうです。
今でも生花を糸でつなぎ花輪にして髪に飾るスタイルはインドの女性によく見られる髪飾りです。
それが仏教の風習として、信者が僧侶の首や肩に花輪をかけ、お布施の一つとされていたようです。
しかし日本の華鬘は語源の花や髪飾りとは別の形で用いられています。
日本の華鬘は仏殿の中で高い場所からかけて使われる荘厳具(しょうごんぐ)として用いられます。
宗派によって仏壇や祭壇の荘厳に違いはありますが、華鬘は仏様の戸帳(とちょう)を飾る大事な役割を持った荘厳具だといえます。
華鬘の形は様々ありますが一般的には、うちわのような丸っこい形の薄い板から、房が下がっている物が多いです。素材としては金属、革、木材や絹紐などがあります。
絹紐で結ぶタイプの華鬘は紐華鬘とか糸華鬘と呼ばれ、葬儀の際にお骨の入った骨壷を覆う袋にかけられる紐にも同じ結びの形が用いられます。
3つの輪を作り、左右の輪を互いに引き抜いて作るこの結びは、私が調べた本によると「仏教とともに伝わり、仏の力によって衆生を幸福に導く結び」と説明されていました。
このように仏教とともに伝えられた装飾結びには、大切な意味が込められています。