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平均年齢30歳。働きたい人が絶えない屋根屋さんの秘密ーいらか代表・成田崇さん
こんにちは。 HouScapeの木村です。
先進的な取り組みをされている屋根屋さんにお話をお伺いする本企画、今回はいらか代表の成田崇さんです!
いらかさんは、1937年創業の成田屋商店の平塚支店(神奈川・湘南エリア)が2022年に独立してできた会社です。
従業員10名ほどのいらかさんには、なんと毎月10件ほど採用応募が来るそうです(!)
それだけでも凄いですが、業界未経験で入社した事務員さんがいまでは単年で契約実績1億円の営業さんになっていたりもします(!!)
多くの屋根屋さんが採用や育成に課題を感じている中で、どうしていらかさんには人が集まり、育つのでしょうか。
いまの組織を作り上げられるまでの背景や試行錯誤も含めてお伺いしてきました。
社会人の最初は、正直休みたかった
ー木村:成田さん、本日はよろしくお願いいたします!
成田:よろしくお願いします。
ー現在の株式会社いらかさんの元となる「成田屋商店」さんは、お祖父様が創業されたとのことですが、子どもの頃から屋根に興味はありましたか?
成田:いえ、子どもの頃はまったく屋根に興味はありませんでした(笑)
三人兄弟の次男だったため家業は誰かしらが継ぐと思っていましたし、自分は「イケてるところで働きたい」と漠然と考えていました。
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ーイケてるところというと、どんなことに興味を持たれていたんですか?
成田:実は元々はプロのサーファーになりたかったんです。子ども時代は何かが特別できるわけではなく目立たないタイプだったのですが、サーフィンだけは好きで、たくさんやっていたから他の人より上手で楽しくなって、それでまた楽しくなって、という感じでした。
ープロサーファーを目指されていたんですね。そこから成田屋商店さんに入社するまでの経緯をお伺いできますか?
成田:大学を卒業後、プロサーファーを目指してオーストラリアに行くことになったのですが、1年で結果が出なければ帰ってくると父親と約束したことがきっかけです。
それで2000年に帰国して、成田屋商店に入社しました。
プロのサーファーにはなれませんでしたが、海外に行ったおかげで屋根に興味を持つことができました。
ー学生時代にもかなり海外に行かれていたとお伺いしました。
成田:オーストラリアだけでなく、学生時代からバックパッカーとして東南アジアとかアメリカなど、サーフィン関係なくたくさん海外に行ってました。
さまざまな国に行ったからこそ、「日本の文化」の良さに気づきましたね。特に屋根や瓦は他の工事よりも「文化」が出やすいので、面白味を感じました。
ーたしかに、屋根は他の工種よりも「文化」を感じますよね。成田屋商店入社後はどんなお仕事をされていたんですか?
成田:最初は下積みからです。2年間職人さんの下積みを経験して、その後は現場監督の見習いをしていました。
ーその頃はどんな想いで仕事に取り組んでいたんですか?
成田:正直言って仕事は肉体的にもきついし面倒だし、サーフィンしたくてしょうがなかったんですよね。経験してみて職人さんは本当に大変だと思いました。
でも仕事を続けていくうちにどんどん責任のある仕事になっていって、面倒だなんて言ってられなくなりましたし、売上を気にし出すようになりました。
ー売上を気にし出すきっかけみたいなものはありましたか?
成田:給与が個人の売上に紐づく体系だったことがきっかけですね。
当時はその給与体系というか、その給与体系からくる組織の在り方に違和感がありました。
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”超”個人主義な組織への違和感
ー「成果が高い人=給与も高い」というのは当たり前のようにも思えますが、何に違和感があったのか詳しくお伺いできますか?
成田:おっしゃる通りビジネスでは当たり前といえば当たり前だと思います。ただ、派閥を生み出してしまうような仕組みに抵抗があったんです。
当時は横の連携は少なくて、古くからいるスタッフにとっては成果も給料も上げやすいシステムだったんですよね。
古くからいるスタッフが先に「いい感じ」に働いてくれる職人さんを押さえてしまったり、仕事を振ってくれる元請けさんと個々人がつながっているから、そもそも連携の必要もなくて。
横の連携がないので、あるスタッフや職人はすごく忙しくしてて仕事を断ってすらいるのに、隣にいる社員は仕事がなくてすごく暇していたり……。
ー良くも悪くも、個人事業主の集まりみたいになっていたんですね。
成田:そうそう。その結果、派閥ができたり見方によっては足の引っ張り合いをしているように感じました。
それが嫌で、給与体系も含めて会社のルールを変更したいなと思っていました。
ーなるほど。違和感も感じられつつ、2015年には成田さんが副社長に就任されています。
成田:そうですね。父親が退職し、自分が副社長になったタイミングで給与体系も含めた会社のルールを変更しました。
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事業承継が絡み、”どん底”を経験
ー会社のルールを変更したことで何か変化はありましたか?
成田:それはもう。人が辞めていってしまいました。
もともと父親を慕っていて辞めた方もいますし、会社のルールをフェアな仕組みにしたから辞めた方もいますし、辞職理由は人それぞれです。
トータルで見れば、社員の半数以上が辞めてしまいました。
ー半数も…!?それは大変でしたね…。
成田:そうですね。副社長に就任して2〜3年は営業も工事も採用も経営も、すべてをやる必要があり多忙を極めました。
ーその経験が、今にも活きていらっしゃるんでしょうか。
成田:活かされていますし、いま思えばこの経験があったから本格的にスイッチが入ったように思います。
ありとあらゆることをやる必要があったので、いろんなことを勉強するようになりました。わからないことは本を買って読むようになりましたし、そんなどん底の状態だからこそ、本の知識を吸収できたと思います。
ーそのどん底の経験が成田さんの原体験なんですね。そこから事業はどのように回復していったのでしょうか?
成田:その後はリフォーム事業で売上を回復していきました。
2011年頃までは9割が新築工事だったのですが、2014年頃からリフォームの割合を増やしていきました。
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BtoCは「レクサスを売るつもりで」
ー元々はBtoB(下請工事)がメインだったと思うのですが、BtoC(元請工事)に切り替えていったきっかけはありますか?
成田:2016年頃、愛知県の森さん(株式会社モリテツ)がBtoC工事(元請工事)をしている話を聞いたのがきっかけです。
「屋根屋さんが、お客さんに数百万円の工事を直接売ることができるのか!」と驚いたことを覚えています。
森さんの話を聞いて、「BtoC工事(元請工事)をやれば理想的な会社に近づける」と思いました。
ーどのような点でそう感じられたのでしょうか?
成田:BtoB(下請工事)だと、元請けの意向によっては土日も働かないといけないし、利益はある程度決まっているんです。
屋根材も元請けに決められたりすることもあって、専門家からすると「もっと安くて良い屋根材があるのにこれ使うの?」と思うこともしばしばありました。
一方、BtoC(元請工事)なら工期も利益も自由度が高まります。私は、いらかを屋根業界の中で一番良い環境にしたいと思っているので、高い給料で土日休みなどを叶えるためにはBtoC(元請工事)をやらないといけないと思いました。
ーなるほど。BtoB(下請工事)からBtoC(元請工事)に切り替えるために意識したことはありますか?
成田:「自分はレクサスを売っているんだ」と自己暗示をかけました。
屋根屋の中だとスーツで営業する人はまれです。でもお客さんからしたら、数百万円のリフォーム工事を発注することはレクサスを買うことと一緒だと思うんです。私たちは、人生の中で何度とない大切なお買い物に向き合っています。
汚い事務所で、短パンの営業マンからレクサスは買わないですよね。
それでスーツを着て営業するようにしました。あとはハウスメーカー系のリフォーム会社と競合することになるので、彼らに負けたくなかったのもありました(笑)
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良い職場づくりは、「付加価値(=利益)」について徹底的に考えることから
ー先ほど「屋根業界の中で一番良い会社にしたい」と仰っていましたが、そのためにしていることはありますか?
成田:冒頭に言ったように、もともと自分は休みたい性格なのかもしれませんが(笑)利益がなければ休むことはできないので、「どうすれば付加価値(=利益)を出せるか」を考えています。
私は、仮に10ヶ月で会社が目標を達成できたら残り2ヶ月は休みにしても良いとすら思っているくらい、ワークライフバランスは重要だと思っています。
社員が幸せで休んでいないと社長の自分も休めないですしね(笑)
それに、経営者は休んで余白の時間を作らないと新しい価値を考えることはできませんからね。
ー確かにそうですね。屋根工事の中で「付加価値をつける」とはどういうことなんでしょうか?
成田:言ってしまえば、「仮にうちの方が高くてもうちに発注してもらう理由」をつくることだと思います。
そのためには、「お客さんが本当に困っていることを聞いて掬い上げること」その一言に尽きるのではないでしょうか。うちが売りたいものではなく、お客さんが困っていることを解決してあげることをモットーにしています。
簡単なところで言えば、他の人がやっていないけど需要がある工事をやるとか。例えば、天窓工事はニーズが多いものの、屋根屋さんがやりたがらないので、あえてやっていたりします。
でもそれだけでは他社との差別化は図れないので、「いらか」というブランドを作り上げることも重要視しています。
ーなるほど。いらかさんのオフィスも、デザイン事務所といっても過言ではないくらい素敵な空間ですが、オフィスもブランドの一環でしょうか?
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成田:そうですね。オフィスの雰囲気もそうですし、例えばお客さんからの口コミや、見積もりまでのスピードだって、どこを切り取っても一貫した「いらか」のブランドを作るということですね。
利益や付加価値を考えることは、ブランドを考えることと同義なんじゃないかと思っています。
「利益率」とか「お金」って言うといい顔をしない屋根屋さんは多い気がするんですが、僕も同じで、お金のために働いてるわけではないと思ってます。だからこそ、仕事の中で効率的に価値を生み出せればみんな幸せで、そのためには「利益率」が重要、ということだと思っています。
ーなるほど。とはいえ、価値を作り続けることは非常に難しいことだと思います。
成田:そうですね。価値を作るための会社の計画も、「考えて終わりにしない」ことが大事だと思っています。
経営計画の発表会を社内向けにやったり、社員の相互理解のための社員旅行やキャンプなどもやったりしています。みんなに宣言したら、やらないといけなくなりますしね。
最初は経営者の独りよがりだと思っていたものの、やってみたら意外と評判がよかったんですよね。
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他にも、経営計画書を作って手帳サイズに製本して社員に渡しているんですが、モノとして質量があるものをみんなが持っていることが大事だと思って行っています。
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ーそこに時間とお金を投資しているからこそ、価値が生まれていくんですね。
「見て覚えろ」の育成は伸びないし、良い環境とはいえない
ー経営計画を遂行していくためには教育も重要かと思いますが、成田さんの社員教育のモットーはありますか?
成田:この業界は「見て覚えろ」が多いと思うんですけど、うちではいきなり現場に出して下働きはさせずに、1ヶ月間、屋根のテキストやブログを読んでもらったり、営業のテキストを読んでもらうことにしています。
ペーパーテストもするし、ロールプレイング的に私や社員がお客さんの役をやって、営業の練習をしてから現場に出しています。
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ーすごいですね!業界的には、「現場で覚えるしかない!」という意見もお伺いします。
成田:そう、うちは現場主義ではないんです。営業だけでなく職人さんだったとしても同様です。社内に訓練スペースがあるので、そこで1〜2ヶ月訓練してから現場入りしてもらっています。
職人さんの訓練を雨の日にやる会社って多いんですよ。雨の日は工事ができないから。でも間隔を開けて訓練するより、まとめてガッと覚えてもらった方が効率がいいですよね。忘れてしまいますから。
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ー面白いです。営業さんも職人さんも、ある程度基礎的なことを覚えてしまってから現場に出た方が吸収率が高いかもしれませんね。
未経験でも、価値観が合う人と一緒に働きたい
ーいらかさんの今後の展望などをお伺いできますでしょうか?
成田:もっともっと世の中に価値を提供していきたいと思っています。屋根や建設領域ははグレーなことも多いですから、「本当のこと」を発信して、それで選んでもらえる会社にしたいですね。
ーそんな会社にしていくために、どんな方と一緒に働きたいですか?
成田:経験よりも価値観を重視しています。未経験でも全然OKです。即戦力じゃなかったとしても、素直で明るい人、向上心がある人と一緒に働きたいなと思います。
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終わりに
InstagramやYouTubeでの発信のこと、リノベーション事業のこと、営業のことやブランディングのこと……おしゃれで勉強熱心な成田さんを深掘りすると良いのか……いらかさんには特徴がありすぎて、インタビュー前は何を聞くとよいのか正直悩んでいました。
インタビューを通じて、一見バラバラなように見えるひとつひとつの特徴が、成田さんのこれまでの経験に基づいた一貫した軸で貫かれていて、とても腑に落ちるインタビューでした。
採用や育成に悩む屋根屋さんにとって、考える足掛かりになれば嬉しく思います。
また、いらかさんで一緒に「価値」を作っていきたい方がいらっしゃったら、ぜひこちらからご連絡されてみてください!
また、このnoteには載せていないいらかさんの具体的な取り組みを、下記のFacebookコミュニティ「屋根2.0研究所」で取り上げています!
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