通勤途中に戸頭交差点から新大利根橋を渡って農道に下りるまでの間に考えたこと
「頬」から始まる「斜陽」の歌詞。
きっと、「ほー」っていう音ではじめたかったんだろうな、と考えてしまうくらい「ほー」の響きは美しいです。文化や人種を超える、あるいは他の動物にも共通する心からの声に聞こえます。
言葉は「意味」であり「音」であると気付かされます。
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言葉の「音」に惹かれて作った曲に違いない。
そう思わせるのはレキシの「KATOKU」です。
この曲は「世襲制!」と声高に叫びたくて作ったはず。
せしゅうせい!
固い意味とは裏腹な、フランス語と英語が混ざったようなおしゃれな響きがたまりません。聞けば聞くほどミラクルな単語です。
C'est sur say!
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ミラクルフレーズの頂点。
それは「ギンギラギンにさりげなく」ではないでしょうか。
哀愁ときらめき、バカらしさとまじめさ、カッコ悪さとカッコよさ…世界のエッセンスが凝縮されたような奇跡のフレーズ。
ギンギラギンにさりげなく!
作詞は伊達歩(=伊集院静)さんなんですね。
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音で遊んでいる曲といえば聖飢魔Ⅱの「不思議な第3惑星」でしょう。
高校時代、文化祭の前夜に写真部の展示の準備をしているとき、同級生のNくんがこの曲を延々と流していました。そのせいで「わっさーびー」と聴くと大判用紙(だいばんようし:模造紙とか鳥の子用紙と呼ばれることが多いらしい)に写真を貼る作業を思い出します。
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言葉の「意味」に注目した名曲といえばKIRINJIの「非ゼロ和ゲーム」。
「非ゼロ和ゲーム」という言葉について語るだけのこの曲中には、親しい関係の男女(たぶん)が出てきます。
彼女が聞きます
『非ゼロ和ゲームってそれ何?』
でも、おそらく彼女は「非ゼロ和ゲーム」の意味について、それほど強い興味は持っていません。それが「ハーゲンダッツの新味」とかであれば、少しは興味があるけど...くらいのレベルでしょう。
男性もそれは理解しています。言葉の意味について説明したところで彼女に聞く気はありません。でも、「昨日たまたま耳にした言葉だよ」などと適当にごまかしたりしません。この言葉のエッセンスを彼女に伝えます。
『愛の呪文さ』
男性は「非ゼロ和ゲーム」の考え方は人類の幸福と世界の平和をもたらすものだと考えています。それを最も短い一言で表すなら、「愛」なのです。この言葉に「呪文」という役割を与えたこともポイントです。「呪文」ですから、もう意味を考える必要はありません。「愛の呪文」は魔法の杖。彼女の人生を彩り豊かなものにしてくれるはずです。
さらに、男性は付け加えます。
『君も唱えて』
この一言で、「これはあなたに無関係な言葉じゃないんだよ」と伝えているのです。聞く人を当事者にする一言。完璧です。
この言葉に彼女はどう反応するのでしょう?
村上春樹の小説に出てくる10代の女性なら「バカみたい」って言うでしょうし、それが30代であれば「じゃあ明日から朝に3回、寝る前に2回唱えることにするわ。あと、カキフライを食べる前に大声で1回。それでいい?」とでも返すのでしょう。すると男性は「最高だ、エビフライが嫉妬しそうだけどね」とか言うのかもしれません。
でも、実際には曲はこの一言で終わります。
『わかんない』