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せっかくだから、美しいものを使いたい。

前回のエントリで、製品を見ていく基準としてこんなふうに書きました。

・無駄な装飾がないもの
・意匠それ自体が機能するもの
・作り手の強み(得意な部分)が出ているもの
・作り手の意思が感じられるもの
・受け手次第で色々な解釈ができるもの
・ながく使える工夫がされているもの

項目自体は個人的にモノを選ぶときに非常に重視していることなのですが、本当に良いと思えるものは、これを一つ一つ検討していって「これは良いものだ!」となるのではなく、実物を見た瞬間にわかるものが多いです。

こういう構成要素がフォルムに現れて、美しさになっていくというか。
説明なしで美しく感じ、その美しさ、意匠がそのまま機能となって使用感に現れる。

これは持論ですが、美しい製品は上記要件を結果的に満たしているんですよね。ロジックが先行して完璧に組み立てられているというより、美しいものを目指したら、この要件が勝手に満たされてしまった。というような製品。

こういう製品をわたしは愛しています。

ということで、今回の企画でテストしたものに、そういう製品があったのでご紹介したいと思います。

TOUNの3-three-

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このTOUNというシューズ。まず独特の見た目に惹かれて履きたくなりました。

とにかくフォルムがミニマルで美しい。一見スケートシューズのような印象がありますが、足入れは柔らかく、履き心地は他のどのシューズにも似ていないかもしれません(強いて言えばCLARKSのデザートブーツが近いかも)

その構造は非常にシンプルで簡潔。アッパーはつま先とかかとの補強部分以外を一枚革で構成されています。

クツベロ(シュータン)も、アッパーと同じ革でできているので、シューレースを縛った時に、自然とアッパーが畳まれて、独特の膨らみが生まれる仕様です。

この仕様のおかげで、シュータンがゴロつかず、足入れも快適、圧迫感がないため、このフォルムの印象通りのリラックスしたフィット感で履くことができ、一日中はいても快適です。

そして、もうひとつ、一眼見て特徴的だったのは、スニーカーというカテゴリにも関わらず、アッパーとソールをステッチダウンで接合している点。

ここにこのシューズの堅牢性と(後述しますが)革靴メーカー製である矜持を感じます。通常のスニーカーはここを接着剤で貼り合わせる製法が主で、経年や、使用方法によっては剥がれてきてしまう部分。ここをステッチダウンするディテールに「使い捨てでは終わらせない」という気概を感じます。

そして、このシューズをプロデュースされている奈良のクリエイティブファーム、オフィスキャンプの坂本さんにお話を伺ったのですが、ソール内に鉄のプレート(シャンク)をいれていて、横へのねじれを防ぐ構造になっているので、ソールが柔らかすぎてグラグラしないようになっているそうです。確かに、ねじれずしっかり地面に着地してくれます。抜群の安定性!

わたしが冒頭からTOUNを「スニーカー」ではなく「シューズ」と呼んでいたのは、こういった革靴の要素がふんだんに盛り込まれているからです。

シンプルな美しさとは裏腹に、ソールの堅牢な仕様。さっぱりしているのに筋肉質な感じ。やさしいのに、力強く受け止めてくれる感じ。

構造上、雨などには弱いかもしれませんが、全国平均すれば年間3分の2は晴れの日の日本では主力で活躍する場面も多いと思います。

製造メーカーについて

TOUNは奈良県の革靴メーカーであるオリエンタルシューズさんのブランド。

オリエンタルシューズの創業者である松本常雄は、
第二次世界大戦でのビルマ(現ミャンマー)戦線からの生還者でした。
戦地では靴がないことが原因で命を落とした兵士を目の当たりにしてきました。
戦後、靴をつくり社会に奉仕することが使命だと決心し、
靴づくりを始めたのです。
時は流れて、靴は生活必需品から
自分を表現するファッションアイテムになりました。
オリエンタルシューズは、お客様が自分らしさを表現するツールとしての
靴づくりを目指していきたいと考えています。

詳細には書かれていないが、あの激戦のインパール作戦を経験されているのだろう…非常に骨太なバックグラウンドを感じる会社さんのプロダクト。(個人的にいつかお邪魔したいと思っています…)

他のコンテンツも工場のこだわりが感じられて、見ていてさらに製品が好きになっていく感じ。

オールユアーズ的にも勉強させていただきました!

この記事は、中川政七商店が運営する「大日本市」の企画で、
暮らしの道具を実際に使用し、プロのカタリベとして感想を記事にしています。

バイヤー向け展示会「大日本市」のサイトはこちら
https://www.dainipponichi.jp/shop/pages/exhibitions202105.aspx?utm_source=note.dainipponichi.jp&utm_medium=referral&utm_campaign=note202106exh
他のカタリベの記事一覧についてはこちら
https://note.dainipponichi.jp/m/ma0cf1e57b52f


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