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「たぶん、だいじょうぶだ」は、失敗のもとですよ~目的を果たせなかった男(『徒然草』第52段)
「今さら、そんなこと聞くの?」と思われたくないですよね。でも、こんな恥ずかしいめにあうくらいなら、勇気を出して教えてもらったほうがいいのでは? 『徒然草』52段を意訳しましょう。
(意訳)
みんなが行ってきて、「あそこはよかった」と言っているのを聞くと、自分も行きたくなるものです。京都の仁和寺(にんなじ)にいた男が、ある日、急に思い立って石清水八幡宮(いわしみずはちまんぐう)を見に行くことにしました。その場所もだいたい分かっていたので、一人で歩いて向かったのです。
さて、目的地に着くと、確かに山のふもとに、いくつもの寺や社が建っています。
「さすが、石清水だ。立派だなあ!」
長年の願いをかなえ、男は満足そうです。
これでやっと、「自分だけ行ったことがない」という引け目から解放された思いがしました。
仁和寺に戻った男は、得意顔で仲間に、語り始めました。
「やはり、話に聞くのと、実際に見るのとでは大違いですね。山のふもとに建っている寺社は、素晴らしかったですよ。しかし、たくさんの人が山の上へ登っていったのは、なぜでしょうね……。あそこには何があるのか知りませんが、石清水まで来た目的を果たしたのですから、わざわざ山には登らずに帰ってきました」
「……」
山の上に建っているのが石清水であり、あなたが見てきたのは違う建物だとは、その時、誰も言えなかったそうですよ。
ささいなことでも、知っている人から、よく聞いてから行うことが大切ですね。
(かいせつ)
まぬけで、おっちょこちょいな男もいたものです。
せっかく遠くまで歩いていきながら、違うものを見て帰ってきたのですから。
行ったことのある人に、場所を確かめてから出発すれば、こんな失敗は起こらなかったのです。
もしかしたら、人に聞くのが恥ずかしかったのかもしれません。
兼好さんは、「初めてのこと、分からないことは、素直に、先輩や経験者に尋ねたほうがいいですよ」とアドバイスしているのです。
これは、人生の悩みにも、同じことがいえるのではないでしょうか。
一人で苦しんでいないで、勇気を出して信頼できる人に相談すれば、きっと、解決する方法が見えてくると思います。
(原文)
少しの事にも、先達はあらまほしきことなり。
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