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「自分らしさ」を大切にするほうが、幸せになれますよ。子イヌのまねをして、失敗したロバ(イソップ物語)

「あの人、うらやましいなあ」「自分はダメだな」と落ち込むことはありませんか。そんな時、どうすれば? イソップは、「考え方を変ればいいんだよ」と言って、こんな話をしています。

 ある所に、子イヌとロバを飼っている人がいました。

 子イヌは、主人が家に帰ってくると、いつも尻尾を振って出迎えます。

 うれしそうにとびはねて、主人のひざに登ったり、顔をペロペロなめるのでした。
 なんてかわいい子イヌでしょう。
 主人も喜び、ますます子イヌを大事にするようになりました。

 それを見ていたロバは、子イヌがうらやましくなったのです。
「ボクはいつも、重い荷車を引く仕事ばかりだ。ボクも、あの子イヌのように、かわいがられたいな……」

 次の日、ロバは子イヌのまねをしてみました。
 帰ってきた主人の周りを、大きな尻尾を振ってとびはねます。
 主人は、びっくりして立ち止まりました。

「よし、次は、顔をなめよう!」
 ロバは、大きな口を開けて主人に近づきます。
 ところが、勢いがありすぎて、前足で主人を蹴飛ばしてしまったのです。

「あっ、ごめんなさい。失敗しちゃった……」

 主人は、カンカンに怒っています。
「いつも真面目に仕事をしているのに、今日は、どうしたというんだ! この暴れん坊め」
 棒でロバをたたいて、小屋につなぎ、
「もう、出てくるな!」
と言って扉を閉め、カギをかけてしまったのでした。

 子イヌには、ロバのまねはできません。
 ロバには、子イヌのまねはできません。

 だけど、子イヌには、子イヌのいいところがあります。
 ロバには、ロバのいいところがあります。
 みんな違って、当たり前。
 それぞれ特長が違うだけなのです。

 私たちも、周りの人を見て、うらやましく思ったり、嘆いたりしていないでしょうか。
「自分らしさ」を大切にするほうが、幸せになれますよ。

イラスト・黒澤葵

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