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時間が薬になるって、本当? 大声で泣きだしたキツネ(イソップ物語)

 時間が薬になるって、本当でしょうか? イソップが「時の流れに身を任せ……」と歌いながら語ってくれたような寓話がありました。意訳してみましょう。

大声で泣きだしたキツネ(イソップ物語)

 おなかをすかせたキツネが森を歩いていると、いいにおいがしてきました。
「おや、あの木の辺りに、何かありそうだな……」

 近づいてみると、大木の根元に小さな穴が開いています。中は、空洞になっていました。
 キツネは、そっと顔を入れてみました。

 なんと、そこには、たくさんのパンと肉があるではありませんか。
「わあ! おいしそうだ。こんなごちそう、久しぶりだ」

 キツネは、自分の体がギリギリ通るほどの狭い入り口から、大木の根元の穴へ入っていきます。そして、パンと肉を全部、食べてしまいました。

 大満足です。おなかが大きく膨らんで、歩くのも苦しいくらいです。
「よし、これで帰ろう」
 穴から、顔と手を出しました。

 しかし、大きく膨らんだおなかが、穴につかえてしまいました。
 どれだけ力を入れても、穴から出ることができなくなったのです。
「ああ、閉じ込められてしまった。もう、出られないよ!」
「こんな暗い所で、一生を過ごすのは、いやだ! 誰か助けて!」
キツネは大声で泣いてばかりいます。

 そこへ別のキツネが通りかかりました。
「どうしたんだ」
 泣き声に驚いて駆け寄り、事情を聞いて、こうアドバイスしました。
「しばらく、そのまま待っていればいいよ。また、おなかがすけば、楽に出られるようになるさ」

 苦しみに襲われると、途方に暮れ、泣き出したくなります。
 でも、じっと、時の流れに身を任せることも大切なのです。
「もうダメだ」と、絶望したり、
「あいつのせいだ」と、怒りの心が燃えているときは、何をやっても、うまくいきません。

 では、少し落ち着いてきたら、どうすればいいのでしょうか。
 イソップは、
「この苦しみの原因は何か、冷静に見極めることが大切なんだよ。解決する方法があるはずだから」
と励ましてくれているのです。

イラスト 黒澤葵

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