芸術の作り方
ちょうど、見下ろすような格好だった。
4歳の娘が床の上に夢の国を広げている。おもちゃ、絵本、それからお友達のウサギのぬいぐるみ。
そこにあるのは、雨上がりの虹よりもっと鮮やかな色の連なり。今朝咲いた花の白さよりまだ白い子どもの指。
娘は自分でも何を作っているのかわからないままに、床の上に芸術をこしらえる。すぐれた作品がそうであるように、そこには意図がない。むしろ、自分でもよくわからないからこそ芸術になるんだろう。
「おとうさん」
娘が顔を上げた。
「あのね、今せんろつくってるんだよ」
娘はにっこり微笑むと顔を伏せ、それからまたぱっと僕を見てこう言った。
「おとうさん。あのね、せんろってなあに?」
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