なぜ少子化なのに教育現場は人手不足なのか 深掘り学校教育(第4回)
これからの社会を担っていく子どもたちを育てる教育としては、一人一人が人格を尊重され、それぞれの個性を伸ばすということが必要とされているのは間違いありません。
現在学校で行われている様々の業務をそのまま維持して、さらにこうした目指すべき教育をプラスαで実現することは、現在の学校に配置されている教職員の数では困難と私は考えます。
まず、この点を認めることが、今後の教育改革の議論の出発点ではないでしょうか。
しかし、今の学校現場がなぜこんなに忙しくなったのでしょうか。市民の方の中には「今は少子化で子どもが減っているし、先生1人あたりの子どもの数も昔より少ないのではないか。そんなに忙しいとは思えない」とおっしゃる方もいます。
先生が多忙化が進んだ一つの要因として、学校の先生が、子どもや保護者、地域に対して「上」の立場ではなくなった、ということが考えられます。
・先生と子どもの関係の変化
例えば一昔前の学校であれば、児童生徒に対して、いわゆる愛のムチ、今で言えば、体罰は許容されていました。また、廊下に立っていなさいとかグラウンド10周、そんな指導も当たり前に実施されていました。しかし現在ではそうした指導は社会通念上許容されませんし、また望ましいとも思えません。
つまり、先生と児童・生徒の間に、1人の人間と人間として関係を取り結ばなければ、学級運営や授業を進行していくことができないと状況です。
すると現在、青森市では小学校は33人学級、中学校は40人学級となっています。
この人数で生徒児童生徒一人一人と関係性を取り結んでいくと言うことが果たしてできるでしょうか。それは非常に難しいと言わざる得ないのではないでしょうか。
・先生と保護者との関係性の変化
現役の先生から、教員の多忙化の原因の1つとして、保護者の対応を挙げる声が多くがあります。
学校や先生に対して、保護者や地域が多くの要求がなされることが課題になっているわけですが、これは、先生と保護者との関係性の変化といえます。昔は先生が立場が上であって、先生の指導にも従っていたのが、今はそうではなくなった、という関係性の変化があると思います。
これは年配の市民の方からお聞きした話で
「先生が保護者を怒鳴りつけるようなこともあった。つまりあなたの子供の素行が悪いのはあなたの育て方が悪い。しっかりと家で指導しなさい。親もしっかりしなさいと指導をすることは日常茶飯事であったし、別に珍しいことでもなかった。保護者もそれを受け入れて、先生の指導に従っていた」
とのことでした。
また地域住民も「先生は偉い」という感覚を持ち、先生の指導に従っていたようです。
これも子どもとの関係性と同じで、昔に戻せばいいということではないと思います。
教員が上で、保護者が下という関係性が正しいとは思えませんし、「先生のいうことを聞く」教育がこれからの世の中を作っていく教育のあり方として良いものとも、私は思えません。
ただ一方で、そうした対等な人間として尊重される教育環境をつくっていくには、現在の教職員の配置状況はあまりにも少なすぎるのではないでしょうか。