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PP版の現在

ちょうど1年前、クラウドファンディングのリターンアイテムである「プリプロダクション(PP)版」プレイ動画をYouTubeで対象者に限定公開した。
ただ、それは「なんちゃって」版であり、フラグ管理スクリプトを組み込んだ「正式」版のベースは2021年10月に完成することになる。
ダンジョン制作が2ヶ月押すと、スクリプト開発は5ヶ月以上押すことになる。いずれも外注だったが、プロジェクト管理とはそういうものだ。

11月、フラグ管理版に序盤シナリオを実装してPP版は完成した。
最初、「おお!九龍城がRTレンダリングになっている!」と胸が高鳴るが、シナリオプレイを繰り返すうちにだんだん次の会話イベントを取得する場所への移動が億劫になってくる。
ショートカットができればいいのに! そう思い、会話イベント後に次の会話イベント取得場所へワープするスクリプトを入れてみたりもした。
Unityはネットで漁るといろいろ便利なスクリプトが手に入る。
けれど──何のために3DRT空間があるのか、ショートカットを繰り返しているとゲームの目的があやふやになってくる。

そもそもクラファンでPP版のプレイ動画を公開したのは、ユーザーの意見を少しでも取り入れるためだ。結果的に、それほど多くの意見は寄せられなかったが、「細部をじっくり見たい」といった意見があり、それならばとかなりこだわり抜いて作った場所もある。とはいえ、何のための3D空間なのか──自問を続けながらもとうとう年末になってしまった。
問題は据え置いたまま、将来的に必要になるダンジョン制作に取り組んだ。先の発注によって、UnityのSceneを複製すればいくらでもダンジョンは制作できる。

2022年の年明け、そろそろ答えを出さないといけない。
PP版は「その企画で事業化するのか否か」を判断するバージョンである。その判断を下すタイムリミットが迫る。
このまま無闇にダンジョンを拡張してシナリオ実装しても、「何のための3Dなのか」は解決されないままだ。
そもそも継続プレイしていて手触り感として面白くない。これは重篤な状況だ。3D空間は、やはりアクション、そして高低差を取り入れたギミックを実装しなければ意味がない。ただ地べたを歩くだけでは役不足なのは拭えない。
最悪、「事業化ナシ」もありうる──覚悟はできていた。

ちょうど春先、クーロン25周年で何かをやらかそうという話が持ち上がった。
思えばクーロンの歴史は香港返還の歴史と重なる。となると、過去25年、未来25年──そういう壮大なプランが幻のように脳裏をかすめた。
未来に向けた新しいページの最初の数行が今作「リゾーム」の役割になるかもしれない。その予感に背中を押されるようにして、リゾームを「動くシナリオ」として位置づけようと再定義した。
「動くシナリオ」である以上、プレイ環境で人を選ぶような仕様はふさわしくない。特定のハードなしでもプレイできるようにしたい。
時期を同じくして有名なビジュアルノベルツールにおいて、背景ムービー機能が実装できることを知る。まずそのツールのマニュアル購入から始め、ツール本体や拡張機能も購入、そして有用なTIPSサイトのブックマーク集を作るなどして大急ぎで制作環境を構築した。
実装を進めて手応えを得た時点で「ムービーノベル」としてシステム変更を宣言した。特別な環境がなくてもプレイできるシステムだ。

この1年間(実際には昨年10月からだが)、とにもかくにもPP版と向き合ってきた。そのPP版を用いた事業評価をまとめると、☆☆☆☆★(4点)だろうか。
当初予定していた3DRT仕様での事業は断念した。ただ次の目標として、古いページと新しいページを繋ぐブリッジになるという役割も見えてきた。
仮にPP版制作を経ずに3DRT仕様でゴリ押し実装を進めていたならば、「超リッチな3D空間で、たいしてできることがない」という、ゲーム性のあやふやな代物が仕上がったことだろう。ここが回避できただけでも「☆」ひとつ分の功績はあると思う。
それに「ムービーノベル」なら何万円もするグラボがなくてもプレイできる。ちょっと古めのノートPCでもサクサク動く。これこそ「動くシナリオ」として、超のつくインディーズらしい仕様に落ち着いたと合点している。



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