注ぎ合い【毎週ショートショートnote】
目の前から、同じ傘を持っている人がやってくる。
今流行りのビール傘。
ビニール傘のような表面には、生き生きとした泡を携えたビールが映し出されている。
同じ傘の人物とすれ違う。
すれ違う瞬間、傘を互いに傾ける。そして、傘の先を合わせるのだ。
これが、ビール傘ユーザーの決まり事。
とくとく、と小気味良い音を立てて互いの傘のビールの量は同じになる。
私はぺこりと頭を下げると、真っ直ぐ歩き出した。
「あ、あの」
不意に呼び止められる。今ビールを注ぎあった……彼女、に。
「そのビール、クラフトビールですよね。九州の」
「え、あ、はい。そうですけど……」
「やっぱり! 珍しいですね。クラフトビールに設定してる人あんまりいなくて」
彼女はスキップしてこちらに走って来た。足元の水たまりがばしゃばしゃ跳ねる。
「ぜひ! クラフトビールについて語りましょうよ!」
彼女に手を引かれて私はファミレスで彼女と話す羽目になるのだが、これが無ければ私は彼女と結婚していないだろう。
参加させていただきましたー!
結婚ネタ……ベタで申し訳ありません…………
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