【毎週ショートショートnote】おにごっこ?
初めての鬼
「もーいいかい!」
「まーだだよ!」
子供たちの声が公園に響き渡っている。
「なぁ、今日が初めての鬼なのか?」
「うん」
草陰に座る二人が話し始める。
二人は木の幹で顔を隠すようにしていた。
「お前、緊張してんのか?」
「してないよ……」
「嘘だぁ!」
男は女を小突いた。
女はわざとらしく叩き返す。
「うるさい。緊張なんて関係ない。やることやればいいんでしょ?」
「そうだけどさぁー! 緊張して失敗したら元も子もないよねー」
「マジうるさいわ……」
女ははぁ、とため息をついた。
「静かにしなさいよ。みつかるよ」
「大丈夫大丈夫。みつかりゃしないよ。お前こそ初めてのくせに偉そうなこと言いやがって」
「は?」
女は目を三角にして男を睨んだ。
男はどこ吹く風。
「しーっ」
男は不意に口に手を当てた。
女も体勢を整える。
「もーいいかい!」
「もーいいよ!」
子供たちの声が響く。
ぱたぱたと、走り回る音も聞こえる。
「よし、行くぞ」
「えぇ、」
二人は銃を持ち直し、駆け出した。