創業者の潮時はいつなのか
創業者には、CEOとしての有効期限っていうものがあるのか。Wework、Uberの創業者は不祥事が理由になり、上場前に身を引かなければならなかった。一方、Twitterの創業者だったジャック・ドーシー氏のように、自らCEOの席から退陣するケースもある。創業者はどのような理由で、どのタイミングにCEOの席から身を引くべきなのか。また、創業者がCEOであることは会社のためになるものなのか。こういった質問に答えるため、約2000社の上場企業の成果を分析したが、うち、約半分は創業者がCEOの席に残っていた。
分析結果、IPOのタイミングで創業者がCEOだった場合、そうでもなかったケースより企業価値が約10%高かった。しかし、その後の企業価値の差は速く縮まり、IPOから3年後には両グループの企業価値の差はほとんどなかった。IPOまでは創業者のいる会社の企業価値が高いことを考慮すると、VCとしては創業者がCEOである戦略が有効とも言える。しかし、上場後には株主の価値と透明性がより重要になるため、経験豊かな専門経営者が必要となるのだ。
どのCEOであってもいつかは辞めなければならない。創業者は、どのような形でCEOから身を引くのかを工夫する必要がある。いずれいつかは経験する現実から身を背けず、現実をポジティブに受け入れるのだ。
CEOではなく、別のロールで組織に寄与できる方法を見つける
他にパッションを注げることを見つける
新CEO候補を見つけるプロセスに初期から参加する
創業者CEOが企業価値の向上に寄与できるのは、初期段階であり、平均では6年目以降からはその価値が下落する傾向があった。もちろん、この6年間というのは平均値に過ぎない。しかし、時間が経つことに応じて創業者がCEOではなく、他のポジションで寄与できるようになるのは事実だ。例えば、Google社の創業者たちは売上が1億ドルを超えたところで投資家たちにより専門経営者の採用を要求された。結局、エリック・シュミット氏を新しいCEOとして選任し、創業者たちの役割は彼にアドバイスをする役割に変わっていったのだ。
創業者たちの創業理由は人それぞれ。しかし、個人のパッションに集中することにより、会社と個人両方が満足できる結果を導くこともできる。Microsoft社のビル・ゲイツ氏は、退陣後、ゲイツ財団を作り地球の環境問題解決に専念している。エンジェル投資家として他の創業者を支援することも、後輩を育成する教育に専念するのもありなのだ。ちなみにTwitter創業者のジャック・ドーシー氏は、Bitcoinに専念すると宣言した。創業者CEOが他の意味のあることに集中するということは、会社と創業者両方に意味のある結末である。もしあなたが創業者CEOであれば、普段からどこにパッションを注いでいくのかを考えておこう。
創業者の影響力がとても大きい組織であれば、会社役員や経営陣が創業者と退陣の話をとてもしにくい環境であろう。しかし、承継というのはある日突然できるようなことではない。承継プロセスにおいては、初期からCEOが関われるようにしよう。もし創業者がCEOの座を譲る気がないのであれば役員会が外部から客観的アドバイスの出来る人を招き、創業者を説得する。CEOではなくなるが、役員会メンバーとして影響力を保つことが出来ることも説明してあげよう。
創業者というのは、会社に相当の愛着を持つようになるものだ。よって、CEOを辞任することを敗北することのように受け取る可能性もある。しかし、企業価値の側面ではIPO直後から企業価値が下がる一方であること認識しておくべきだ。Google社、Apple社の事例のように外部の専門経営者により企業価値が何百倍も跳ねあがる可能性もある。タイミングの問題であり、いつかはCEOは変わらなければならない。そのタイミングを自分で決め、自分はどのような役割に変わっていくのか、どのようなCEOを選任するのかなどを役員・経営陣と一緒に悩んだ方が組織のためである。
<Bradley Hendricks, Travis Howell, & Christopher Bingham, "Research: How Long Should a Founder Remain CEO?", Harvard Business Review (December 2021)>
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