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【まったり骨董日記_vol.31】トーハク新春展示・めでタイガー!で、ほのぼの初笑い

遅ればせながら、明けましておめでとうございます。
昨年末、めずらしく我が夫が仕事に追われていたため、なにやら落ち着かない気分が私にも乗り移り、あんまり実感もなく迎えてしまった今年のお正月。

気分新たにスタートしようと、先日、東京国立博物館(通称:トーハク)の新春展示へ足を運びました。夫は仕事のため、今回は私ひとりです。

お目当は、新春恒例の国宝「松林図屏風」(長谷川等伯筆)公開と、干支にちなんだ特集「博物館に初もうで 今年はトーハク150周年!めでタイガー!」。
毎年、お正月になると鑑賞に行きたいと思いながらも、コロナ禍含む諸事情により、この時期にトーハクを訪れるのは数年ぶり。ここの常設展示では、一部作品を除いて撮影もokなので、カメラも持参しました。

まずは、国宝「松林図屏風」の展示室へ。通常なら仕事はじめ後の平日にもかかわらず、それなりの数の人々が集っていました。なかにはじっくり腰を据えて、この大作を堪能している人も。さすがは近世水墨画の最高傑作、人気ぶりは衰えません。

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照明を落とした暗がりのなかに、ぼんやりと浮かび上がる一双の屏風。
白地に濃淡の墨のみで描かれた松の木々は、遠目には幽玄として儚げでありながら、近づくにつれて雄々しく荒々しく力強い存在感を放ってきます。

静動、剛柔、夢うつつ。
ミニマルななかに宇宙のすべてを内包するかのような、この不思議な作品は「等伯がいつ、何のために描いたのか?」などが正確にはわかっておらず、いまだ謎が残されていると言います。
どの季節を描いたのかも定かではありませんが、そこにはひりりと肌をさす冬の朝の静謐な空気が漂っているよう。

やはり新たな年のはじめ、ふたたび自分を見つめ直すときにこそふさわしいアートなのかも、とあらためて思った次第です。
(2022年の「松林図屏風」公開は1月16日まで)

一転して「博物館に初もうで 今年はトーハク150周年!めでタイガー!」は、今年の干支である虎をモチーフにした作品がずらりと並ぶ、にぎやかで楽しい展示です。

狩野派の「龍虎図屏風」や円山応挙の「虎図」など、錚々たる作品が集まっていますが、虎の生息していない日本で、生きた虎を見ることのできた人は江戸時代後期になるまでほとんどいなかったのだとか。
そのため、虎だか猫だか、さらには何の動物なんだか。。。というモノたちまで、すまし顔で「自分、虎ですが何か?」と鎮座しています。

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↑いやいやキミ、ほんとはゴブリンでしょ?
(虎水滴/江戸時代・18〜19世紀)

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↑どう見ても牛だけど「ボクは虎だい!」と言い張る子
(虎水滴/江戸時代・18~19世紀)

それでは、虎の生息地だった中国大陸や朝鮮半島(中国では現在も)には、さぞかしリアルなタイガーアートが!と思いきや、特にそんな気配は感じられないのも楽しいところです。

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↑虎かにゃ?猫かにゃ?イッパイアッテナかにゃ??
(青花虎文皿/中国・景徳鎮窯、17世紀)

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↑「がおーっ!」と吹き出しを入れたくなる、李朝の壺の虎
(青花辰砂虎鵲文面取瓶/朝鮮時代、19~20世紀)

まあ、いくら虎が生息していたところで、動物園もない昔、虎なんてそうそう気軽に観察できませんよね。
今回、あははと大口開けての爆笑は遠慮したいこの時節にふさわしく、ゆる〜りにんまりとした初笑いで、ほのぼの気分にひたれた展示でした。
(本館 特別1・2室にて、1月30日まで)

さて帰宅後、我が夫に今年の抱負を聞いてみたところ、夫が「これ」と手帳の一頁を指差しました。
そこには大きな文字で「ニコニコ」と、ひと言だけ。

どうぞ皆さんの2022年が、ニコニコ笑顔に満ちた一年になりますように。

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