空気は簡単につくれないので、まずは想像力をもって地道なリレーションズを
今回は広報・PRについて。
読んだ4冊のなかでは、グローバル基準のPRを体系立てて説明してくれている以下の書籍が面白かったです。いつもどおり、感じたことをまとめます。
PRにおける5つのリレーションズ
広報がパブリック=ターゲットとの的確なリレーションズを行う代表的なものに、以下の5つがあげられます。
1)メディア・リレーションズ(MR)
2)インベスター・リレーションズ(IR)
3)ガバメント・リレーションズ(GM)
4)エンプロイ―・リレーションズ(ER)
5)コミュニティ・リレーションズ(CR)
特に「メディア・リレーションズ(MR)」はPRのコア・コンピタンスとも言われ、記事掲載を目的にメディアへ情報提供をするパブリシティ活動とは異なり、広報とメディアの相互理解と信頼関係を構築し、有効な記事掲載を期待するものです。
1→10で関係を深くしていくケースもあれば、0→1のために業務と少しかけ離れているイベントにも足を運んで、地道につなげていくこともあります。
MRにおいて一番意識しているのは、企業とメディア間の調整役として『メディア視点』を持てているかどうか。なぜこの情報をいま露出する必要があるのか、露出すると読者や生活者はどう感じるのか、メディアや担当者を一つひとつ研究し、企画し、アプローチすることが重要だと勉強中の身ながら実感しているところです。
一方で、「エンプロイ―・リレーションズ(ER)」は社員のモチベーションを高め、円滑なコミュニケーションや新しい発想がうまれるように、社員が知りたい情報を必要に応じて定期的に、正直に、十分な内容で発信することが求められます。
不信感や不満につながりやすいのは、会社に関する情報を社内ルートではなくメディアで知ること。それに加えてタバコミュニケーションなどが加わると、変な憶測まで広まることもあるだろうし、良いことは少ないでしょう。『価値』と『一貫性』と『質』が担保された情報をいち早く届けることで、信頼感ある関係構築が可能です。
何の会社か分からない会社
さて、少し話は変わりますが、私が勤める会社は「何の会社か分からない」とよく言われます。実際に現場も管理部門も、一言で説明できる人はほとんどいないでしょう。
説明する際は、具体例を出すと『あ、そういうこと!』『へぇ、そんなこともやってるんだ』とちょっとだけ理解してもらえることが多いです。
特にいまは多角化戦略のためにさまざまな角度のサービス開発・提供を行っているため、さてどう表現しようか……と頭を抱えることもしばしば。
そもそも、我々はどんな会社に見られたいのか――。
そんな話をしていると、ミッションのほかにいつも出てくるのは『いろいろなことをしている、おもしろい会社』。
そのイメージを付けをするには、まず“いろいろなことをしている”ことを知ってもらうことが大前提だと改めて考え、今年はこのnoteでの発信をとおして解像度を上げていくことに力を入れています。
間接的に事業内容が分かる内容もそうですが、スタッフやクライアント、社内の様子をみせることで各ステークホルダーが信頼感を持ちやすくなる。さらには、MRではリレーションを行う際の材料として、ERでは相互や”いろいろなこと”への理解促進として活用できています。
私が思う基本条件
広報がさまざまなステークホルダーとの関係構築をするなかで、必要な基本条件は「倫理観」「ポジティブ思考」「シナリオ作成能力」「IT能力」「英語力」の5つ。また、PRを成功に導くものとして必要なのは「倫理観」「双方向性コミュニケーション」「自己修正」の3つの要素です。
書籍の冒頭から倫理観(人として守り行うべき道、善悪・正邪の判断において普遍的な規準となるものの考え方や捉え方)が強調されているのは
個人も組織体も、他者やパブリック(一般社会)との関係を築くうえで、普遍的な倫理的価値観をシェアすることが、結果として最短距離で目的や目標の達成を可能にする大きな要素になる
から。個人的には「倫理観」のほかに『想像力』が重要だと考えています。ここでいう想像力は、この情報が出たら関係者がどう捉えるか、どう感じるか、どんな影響があるかを冷静にイメージできること。
5つのリレーションズだけでなく、危機管理においても重要な要素だし、イメージできなければ事前に対策も考えられない。MRにおける『メディア視点』も想像力がなければ成り立ちません。
広報やPRに興味を持ってから、話題になっていた戦略PRの本(だけ)はよく読んでいましたが、仕事を始めてから正直いうと「空気なんて簡単につくれない」と実感します。
戦略的に広報をしながら、まずは社内も社外も、想像して気を配って話して手をとって寄り添って理解し合うしかない。広報・PRで一番大切なのはコミュニケーションの本質で、それこそ倫理的な部分だと思います。
まずは相手を好きになること、そして前向きに関わることをこれからも続けていきます。