成人式は私が自分で振袖を着る
今回は、私の「ママ友」、村上かおりさんをご紹介します。10年以上前に、息子が通っていた幼稚園で出会いました。
かおりさんは、園庭にただ佇んで息子さんを見守る姿さえも美しいお母さんでした。その後しばらくしてお茶やお華を嗜み、箏曲の先生であることを知り、「やはり!」と納得したことを覚えています。
かおりさんは高校生のころに、成人式の振袖を自分で着たいと思ったことが着物を着るきっかけだったそうです。
振袖をご自分で!?
我が子を見て思う。10代が秘める力強い探究心
「今思うと、すごい発想ですよね。成人式の当日にきちんと着られなかったらどうしようなんて想像できないほど無知だったのだと思います。
(昔の人は自分で着ていたんだから、私にもできる!)と安易に考えていたのでしょうね。いやいや、振袖は自分で着ないでしょう、と今の私なら思うのですが、当時“振袖は着付けてもらうもの”という固定観念がありませんでした。
大人と子どもの狭間にいる時代だったからこそできたのでしょう。今年、高校生になる息子を見ていても感じることですね」(かおりさん)
高校3年生の春、彼女は着付け教室に通い始めます。
「高校を卒業したら留学することが決まっていたので、それまでに振袖が着られるようになりたいと、無理なお願いをしました。浴衣から始まり、普段着、フォーマルと進んでいき、最後に振袖を教えてもらったように思います」(かおりさん)
教室の指導と彼女の熱意によって、お正月には振袖を着て初詣へ。その後成人式も彼女の望み通り、自分で着付けをして会場へ向かったそうです。
ご自身で振袖を着て成人式へ。ご自身で着た達成感や満足感、喜びを表情で感じることのできるお写真です。
「地元の小学校が会場でした。来賓の方が祝辞で「最近の若者は自分で着物も着られない。自分で着られる人、手を挙げてみて! ほらやっぱりいないではありませんか……」とそのまま話を続けられていたのですが、私は堂々と手を挙げていました。周りの人や、先生方は気付いていましたが、来賓の方はそのままお話を続けていらっしゃいました。会場を見渡すこともなく、自装できる若者なんていないと思っていらしたのでしょうね」(かおりさん)
彼女は着物によって大人の既成概念を覆しました。
気持ちと行動までの距離が近いティーンエイジャーの時代。かおりさんのその力は、来賓というお立場の大人でさえ想像できないほど、強かったのです。
着物はときに温かく、ときに背筋をただしてくれる
現在は、お茶会やお箏での指導や発表会、慶事の席だけでなく、お出かけの際にも着物を選んでいるそうです。
フォーマルな装いにはきものを選ぶことが多いそうです。実家にしばらく眠っていた着物に袖を通して。
「着たいと思ったときはいつでも着て楽しんでいます。結婚式、子どもの入学や卒業式など、折り目ごとに迷うことなく衣装が決められるので助かります。
また立場上、人前に出る着る機会も多いので、より速く美しく、私にとって心地のよい着付けを探しています。今もなお、YouTubeの動画や着付けの本を見たり、講習会に参加しています」(かおりさん)
名古屋城本丸で10月に開かれた箏曲の会にて。袷の季節とはいえ、まだ暑い時期。この日は洗える着物を選んだそうです。
「そして着物は、日本の伝統美。綺麗なものを身につけることができるのですから、純粋に幸せな気持ちにもなれます」(かおりさん)
お正月は毎年必ず着物で過ごします。お父様のお知り合いからいただいた小紋を着て。
「日本の文化はどれも知れば知るほど奥深く、学ぶことが多いと感じます。そしてきものは誰にでも温かく、時にはきりりと背筋を正すようにと励ましてくれることを纏うたびに感じます」(かおりさん)
Personal data:07
村上かおりさん(40代/箏曲講師、フラワーアレンジメント講師)
Instagram:@kaori1911 着物暦:25年くらい
箏曲千景の会
「着物リアルクローズ」取材時の交通費などに充てさせていただきたいと思います。もしご興味を持っていただき、サポートしていただけたらうれしいです。どうぞ宜しくお願い申し上げます。