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振袖着付けの魅力:着付師のやりがいと思い

はじめに


振袖は、未婚女性の正装として、成人式や結婚式などの特別な日を彩る重要なアイテムです。とはいえ、成人式で着たきり、着物なんて着ていないよ、という方も多いのではないでしょうか。着付けを習い始める前は、私もその1人でした。しかし、実際に自分で着物を着るようになり、人に着せるようになると、振袖には他の着物とは違う独特な魅力があることに気付きました。特に振袖の着付けは、ただ美しく装うだけでなく、「その人らしさ」を表現できる力を持っています。

着付師のやりがい、「その人らしさ」を引き出す振袖の着付けに込める思いを、着付師としての経験を交えながらお伝えします。

振袖の魅力

振袖は、未婚女性の正装で、成人式や結婚式などの特別な日に着用されることが多いです。長い袖と華やかなデザインが特徴で、友禅や鹿の子絞り、紅型などの伝統的な技法から、現代風のモダン柄まで、技術やデザインは多岐にわたります。振袖のカタログや雑誌は、いつまでも眺めていられるほど魅力的です。

平安装束とは異なりますが、袖が長く優美な雰囲気は憧れ!振袖が正装であるというルールがなければ、普段着も振袖にしたいくらい、振袖には憧れがあります。

振袖の着付け

振袖の着付けは、一般的な着付けとは異なり、袖が長く重量がある分、高度な技術を必要とします。着崩れないように着付けることは当然のことですが、衿の角度やおはしょりの美しさ、帯の位置や帯結びのバランスなど、360度どこから見ても美しさが求められます。

振袖そのものは華やかで美しいものですが、お嬢様やご家族様が心を込めて選んだ振袖や帯、小物類を、着付師の技術によってさらに引き立てることができます。また、着付師が違えば魅せ方も変わり、それぞれの技術やスタイルが反映されます。お嬢様らしさを最大限に引き出しながら、着付師自身の技術と魅せ方を融合させることで、唯一無二のスタイルを作り上げることができます。

振袖着付のやりがい

成人式当日の着付師は日が昇る前から出勤し、お嬢様成人式当日の着付師は、日の出前から現場に入り、早朝からお嬢様方の支度をお手伝いします。普段は低血圧で朝が苦手な私も、この日だけは不思議とすんなりと起き上がり、エネルギッシュに動くことができます。

日常の練習では、仲間内で相モデルをしながら、教室の振袖一式を借りて技術を磨いていますが、成人式当日は初めて会うお嬢様に、お嬢様が選んだ新品の振袖をお着せします。とても緊張しますが、非常に貴重でやりがいを感じます。

事前の持ち物チェックがあるので、「あれがない」「これがない」ということはありませんが、コーリンベルトもゴム伊達も袋帯も全部新品ですので、手が荒れてしまったり、疲労で力がうまく入らなかったりします。立ったり座ったりを繰り返す中で膝も悲鳴を上げます。身体がボロボロになるほどのハードな一日で、翌日はグッタリと起き上がることができないほどですが、それでも私にとって成人式は1年で最も好きな日であり、充実感に満たされる日でもあります。振袖を通してお嬢様の特別な瞬間に寄り添えることは、着付師としての大きなやりがいと誇りを感じています。

普段は事務職として働いていますが、「誰かのためになっていること」を実感することは難しいです。個性やオリジナリティ、ひらめきやセンスを求められることはほぼなく、私以外の誰かでも対応はできるし、AIに取って代わられるかもと思うこともあります。それに対して、着付けの技術は個性を引き出したり、その時々のひらめきやセンスが着姿に反映されるため、違う人が着せれば違うようになるし、AIやロボットでは再現できない仕事だと感じることができます。

振袖のお支度が済んだ後、お嬢様やご家族様から「ありがとうございます」と感謝されると、心から嬉しい気持ちになります。自分の技術やセンスが他の人に喜びを与える瞬間は、着物を着せる仕事の醍醐味であり、大きな達成感を感じることができ、「誰かに着せられる自分」は普段よりも自信を持つことができます。このようなやりがいは振袖ならではのもので、自信を持つことができ、さらに着物や着付が好きになる…というポジティブなループとなっています。

着付師の思い

私は着付師として、「着崩れないこと」は当然のことながら、それ以上に、お嬢様やご家族様が心を込めて選んだ振袖や帯、小物類を最大限に引き立てる着付けを心がけています。振袖は、それ自体が華やかで美しいものですが、着る人に合った美しさを引き出すためには、ただ着せるだけでなく、その方の個性や「その人らしさ」を映し出すことが重要であると考えています。

「振袖カワイイ!」「振袖きれい!」という瞬間的な感動ももちろん嬉しいですが、特別な日を迎えたお嬢様が着姿に自信を持てて、会場でお友達同士で集まったときに自慢できて褒められる着姿にしたい、その日が一生の思い出となり何度でも写真を見返してもらえるような着姿に仕上げたい、お嬢様一人ひとりが自分らしく輝ける瞬間を提供したい、そんな思いで日々技術向上に励んでいます。

おわりに

振袖は言わずもがな美しさを持つ特別感のある着物です。ただ着せるだけではなく、お嬢様の個性や「らしさ」を引き立て、美しさを最大限に引き出すことに、私自身大きな喜びを感じています。
成人式当日に限らず、前撮りや後撮りの着付けもお手伝いさせていただきたいですし、いつかは北九州みやびのド派手な振袖も着付けしてみたいと思っています。

私が目指すのは、着付師として働くことだけではなく、着物を通じて日本文化の素晴らしさを伝え、一人一人のお客様に特別な日を提供することができる仕事。振袖が着物への興味関心の入口となり、「またきものを着たい」「きものをもっと知りたい」と思っていただけるよう、心を込めて着付けを行っています。

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