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夏の着物と浴衣の見分け方

夏に着物を着ていると、
「浴衣いいですね」「今日はどこかでお祭りがあるんですか?」
と声をかけられる方にはもれなくそう言われます。

着物を着る人が少なくなってしまっている今の時代、
『夏に着ている着物=浴衣=お祭りに着ていくもの』
という公式が多くの人の頭に浮かぶのも無理ないよなぁと思ってしまいます。

そもそも夏に着物を着ている人のほとんどが、お祭り会場にいる浴衣の人な訳で、そう思ってしまうのも仕方ありません。
でも、着物には浴衣ではない夏着物と言われるジャンルもあるのです。

夏の着物と浴衣、何が違うのか、どうやって見分けるのか、どうやって使い分けるのか。
そういった内容を私が持っている少しばかりの知識と、実際に着てすごした経験に基づいて私なりの見解をまとめていきます。

結論としては、夏の着物と浴衣の見分け方は、柄付けや色合い、帯の合わせ方などで総合的に判断する必要があるということ。そして、どちらを着るにしてもTPOが1番大切ということです。
コレ!とはっきり線引きできるものばかりではないのです。

そもそも、夏着物って何?

洋服にも夏物冬物があるように、着物にも着用する季節によって種類があります。
図にするとこんな感じ。

夏着物や浴衣は、単衣ひとえという裏地のないものの中に含まれます。
単衣ひとえ=夏着物か浴衣というわけではなく、春や秋、真夏以外の通年着られる単衣もあります。
夏着物や浴衣は、単衣の中でもより涼しい生地で作られているものです。

夏着物と浴衣って何が違うのか

こちらに夏着物と浴衣の写真をいくつか並べてみます。
これら4枚の写真の中で、どれが夏着物でどれが浴衣かわかりますか?


“一応の”正解としては、1と4が夏着物、2と3が浴衣です。

夏着物も浴衣も、仕立てられた形は全く同じです。では、どこで見分けるのか。
それは、生地の種類や柄付け、色合いといったところ。つまりは雰囲気です。
なんともふんわりした答えですが、これが私が思う見分け方です。

そして、先ほどの写真の答えを”一応”としたのは、夏着物を浴衣として着たり、浴衣を夏着物として着ることもあるからです。
つまり、夏着物や浴衣のもつ特徴によっては、はっきりとこっち!という線引きできないものもあります。

浴衣はもともと湯上がりに着るもので、今でいうパジャマです。
つまり、主に家の中で着るもの。リラクスウェアのような扱い。
(もちろん今はお出かけに着るのもOK。時代の流れとともに使われ方は変わってきています。)
一方の夏着物は、お出かけのときに着る外出着。いわゆるお出かけ着です。

浴衣:リラックスウェア
夏着物:お出かけ着
そう思って写真をもう一度見てみてください。

いかがでしょうか?はっきりとした線引きは難しくても、なんとなくそれぞれの特徴が見えてくるでしょうか?
実際にものを見て、生地触れて見比べたりするとよりわかりやすいと思います。

浴衣を夏着物として着るってどういうこと?

そうはいっても言葉だけではわかりにくいので、浴衣を夏着物として着るとはどういうことか、少し例を紹介します。
参考にさせていただくのは、山崎陽子さんの著書「大人の浴衣、はじめます」です。

この本の中から、いくつかコーディネートを抜粋します。

ここに使われている着物は全て、”浴衣”に分類されるものです。

でも、上の2枚と下の2枚、ずいぶん印象が異なりませんか?
浴衣の柄付けや色合い、合わせている帯の色味や帯結びの形、帯揚おびあ帯締おびじめを使用しているか否か、そういった違いで全体的に着姿を見ると、ジャンルは同じ浴衣でもこんなにも印象が変わるのです。

合わせる小物によって印象の幅を持たせやすい浴衣を持っていると、夏着物としてはもちろん、浴衣としても重宝するよなぁとこの本を見ていると思います。

夏着物でも浴衣でも、気をつけたいのはTPO

浴衣は今ではお出かけにも着るようになりました。
だからと言ってどんな場所でも必ずOKというわけではありません。
先ほど紹介したようなコーディネートの幅がある浴衣もありますが、ザ・夏祭りな浴衣は場にそぐわないこともあります。
その感覚は、洋服でも同じようにあると思います。
洋服でも、ホテルで行われる披露宴にTシャツとデニムで参列はしませんよね?その感覚と同じと思ってもらえればOKです。

もちろん、自分が好きな場所に出向く場合は制限されるものではありません。
しかし、そこに相手がある場合、その場の雰囲気や一緒に過ごす方たちのことを考えるという相手への思いやりは必要だと思います。

ひと口に浴衣と言っても、夏祭りをイメージするような浴衣もあれば、パッと見たときに着物に見えるような浴衣もあります。
その違いは、生地の染め方や織り方、柄付けによって生まれるもの。それぞれの浴衣の個性に合わせて、着ていく場所や目的を使い分けるとその浴衣の良さが活かされるとも思います。

どこで誰と、どうすごすか

くり返しになりますが、この感覚については、はっきり線引きできるものばかりではなく、帯の合わせ方など雰囲気によって変わることもしばしば。文章だけでは伝わりにくいニュアンスも多くあります。
その感覚を早く掴もうとするなら、いろんなシーンで着てみることが1番の近道かもしれません。
着てすごしてみて、可能ならその場所で着姿の写真を撮って後で見返すと、きっと気づくことがあると思います。

この夏着物や浴衣が自分がすごす空間にふさわしいかどうか。
この正解があるとするなら、自分がその場所でどんな風に見られたいか、どんな風にありたいかを考えて、自分らしさを表現すること。そんな風に私は思います。

なんとなくの雰囲気ではなく、ハッキリとした夏着物と浴衣の線引きがあれば、こうも迷わなくていいのですが、そうは問屋が卸しません。
でも、そのふんわりした線引きだからこそ、夏着物や浴衣のコーディネートが楽しめる、とも言えるのです。
それぞれの特徴を自分なりに受け止めて、そのアイテムの良さが活かせるようなコーディネートができると、着物でのお出かけをより楽しむことができるようになります。
そして、それがまた着物の良さでもあると感じています。


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