真木和泉守『大夢記』(安政五年)
既にして上赫怒す。遽(にわか)に諸大臣を召して曰く。これ忍ぶべけんや。孰れか忍ぶべからざらんや。朕云云を欲す。大臣皆曰く。謹んで諾すと。乃ち史臣を召して詔を草す。密かに使を発しこれを伝えしむ。その詔に曰く。朕眇眇の躬を以て忝くもその業を継ぐ。夙夜勉励して祖宗を辱むを恐る。而して即位の初め。洋虜の東海を侵凌するを聞く。乃ち詔を幕府に下しこれを備えと為す。然して有司特に恬凞に務め以て意を為さず。遂に癸丑(嘉永六年)の禍を馴致す。爾来舶来漸く多し。侮謾漸く甚し。ここに於いて天地鬼神