2023年、このエンタメ(映画・小説)が面白かった

あけましておめでとうございます。
2023年もたくさんの作品と触れ合うことができました。
今回は小説も映画も取り混ぜながら、順不同でご紹介。


映画 : ラーゲリより愛を込めて

第2次世界大戦後の1945年。シベリアの強制収容所(ラーゲリ)に抑留された日本人捕虜たちは、零下40度にもなる過酷な環境の中、わずかな食糧のみで重い労働を強いられ、命を落とす者が続出していた。そんな中、山本幡男(二宮和也)は生きる希望を捨てず、帰国(ダモイ)を信じて周囲の人々を励まし続ける。仲間思いの行動と力強い信念は、多くの捕虜たちの心に希望の火を灯していく。そして自身も日本にいる妻・モジミ(北川景子)と子どもたちと過ごす日々を強く信じていたが、山本の体は病魔に侵されていた…。彼を慕うラーゲリの仲間たちは、山本の想いを叶えようと思いもよらぬ行動に出る。そしてモジミに訪れる奇跡とは――

https://filmarks.com/movies/99768

まっすぐに、言ってしまえば王道な展開に、腕を組みながら観ていたのがいつの間には惹き込まれ最後には涙していた。出演者の演技もとてもよく、特に安田顕さんが素晴らしかった。これが実話なことにも衝撃。

小説 : いけない (道尾秀介)

★ラスト1ページですべてがひっくり返る。
話題の超絶ミステリがついに文庫化!

各章の最後のページに挟まれた「写真」には、
物語がががらりと変貌するトリックが仕掛けられていて……。
2度読み確実! あまりの面白さが大反響をもたらした、
道尾秀介渾身の超絶ミステリ。


第一章 「弓投げの崖を見てはいけない」
→自殺の名所が招く痛ましい復讐の連鎖。
第二章 「その話を聞かせてはいけない」
→少年が見たのは殺人現場? それとも……。
第三章 「絵の謎に気づいてはいけない」
→新興宗教の若き女性幹部。本当に自殺か?
終 章 「街の平和を信じてはいけない」
→そして、すべての真実が明らかに……。

騙されては、いけない。けれど絶対、あなたも騙される。

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小説という商品を改良しようと、道尾秀介が仕掛ける新たな小説の第一弾。
短編ミステリーとして読む1回目も面白いし、最後の1枚の写真でまた読み返したくなる。東野圭吾「どちらかが彼女を殺した」のように明確な答え合わせをしないので2回目どころか何度もページを戻って楽しめる。謎解き好きな人にもオススメ。
いけないⅡ」「きこえる」も発売中です。読まないと。

映画 : ヒトラーのための虐殺会議

1942年1月20日正午、ドイツ・ベルリンのヴァンゼー湖畔にある大邸宅にて、ナチス親衛隊と各事務次官が国家保安部代表のラインハルト・ハイドリヒに招かれ、高官15名と秘書1名による会議が開かれた。議題は「ユダヤ人問題の最終的解決」について。「最終的解決」はヨーロッパにおける1,100万ものユダヤ人を計画的に駆除する、つまり抹殺することを意味するコード名。移送、強制収容、強制労働、計画的殺害など様々な方策を誰一人として異論を唱えることなく議決。その時間は、たったの90分。史上最悪の会議の全貌が80年後のいま、明らかになる。

https://filmarks.com/movies/105372

映画的なストーリー展開は無いと言っても良いくらい、それぞれの立場で主張しつつもただ淡々と会議が進んでいく。それこそどの会社でもあるように、多少の異論が出ても両者を尊重しながらうまく落とし所を探るような、そしてちゃんと結論が出てよかったねと終わっていく。この空気感についつい退屈になってしまいがちだが、そもそも議題が大量のユダヤ人をどう虐殺するかであり、虐殺することの是非には誰も触れないし当たり前の大前提であり誰も疑問に思っていないことを思い出し、その異様さを再確認する。そんな映画でした。

小説 : 本のエンドロール (安藤祐介)

本の奥付に載っている会社名の後ろには、悩みながらも自分の仕事に誇りを持ち、本を造る「人」たちがいる。豊澄印刷の営業・浦本も、日々トラブルに見舞われながら「印刷会社はメーカーだ」という矜持を持ち、本造りに携わる一人。本を愛する人たちの熱い支持を集めた物語が、特別掌編『本は必需品』を加え、待望の文庫化!

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印刷所が主役の仕事小説。出版社ではなく印刷所。紙の選定とかインクの調合とか原稿からゲラ作るとか、印刷だけに1文字のミスも少しかすれも許されないシビアで職人技の光る世界。仕事に対するモチベーションやパワーをもらえる作品。

映画 : バイオレント・ナイト

物欲主義な子供たちに嫌気がさして久しく、少しばかりお疲れ気味のサンタクロース(デヴィッド・ハーバー)は、体に鞭を打ち良い子にプレゼントを届けるため、トナカイが引くソリでクリスマスイブの空を駆け回っていた。とある富豪ファミリーが盛大にクリスマスパーティーを開く豪邸に降り立ち、煙突から部屋へ入ったサンタが偶然鉢合わせたのは、金庫にある3億ドルの現金を強奪するため潜入したスクルージー率いる武装集団だった。その場を見なかったことにして立ち去ろうとするサンタだったが、すぐさま大騒動に巻き込まれてしまう。サンタはクリスマスプレゼントを届ける能力は備わっていたものの、戦闘能力はゼロだった。ましてや相手は武装集団。多勢に無勢の大ピンチを孤軍奮闘切り抜け、無事子供たちにプレゼントを届ける事が出来るのか!? クールでバイオレンスなアクションと大爆笑のストーリー展開、そしてまさかの感動のフィナーレとノンストップで続く、映画ファン必見の一本!

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こういう、頭を空っぽにして観られる映画もまた良い。サンタクロースが主人公ながら、全く夢も希望も無いし躊躇なく人を潰すし、ホーム・アローンっぽいって言っちゃうし。

映画 : BLUE GIANT

「オレは世界⼀のジャズプレーヤーになる。」 ジャズに魅了され、テナーサックスを始めた仙台の⾼校⽣・宮本⼤(ミヤモトダイ)。 ⾬の⽇も⾵の⽇も、毎⽇たったひとりで何年も、河原でテナーサックスを吹き続けてきた。 卒業を機にジャズのため、上京。⾼校の同級⽣・⽟⽥俊⼆(タマダシュンジ)のアパートに転がり込んだ⼤は、ある⽇訪れたライブハウスで同世代の凄腕ピアニスト・沢辺雪祈(サワベユキノリ)と出会う。 「組もう。」⼤は雪祈をバンドに誘う。はじめは本気で取り合わない雪祈だったが、聴く者を圧倒する⼤のサックスに胸を打たれ、⼆⼈はバンドを組むことに。そこへ⼤の熱さに感化されドラムを始めた⽟⽥が加わり、三⼈は“JASS”を結成する。 楽譜も読めず、ジャズの知識もなかったが、ひたすらに、全⼒で吹いてきた⼤。幼い頃からジャズに全てを捧げてきた雪祈。初⼼者の⽟⽥。 トリオの⽬標は、⽇本最⾼のジャズクラブに出演し、⽇本のジャズシーンを変えること。 不可能と思われる⽬標に、必死に真摯に、激しく挑む---。

https://filmarks.com/movies/99735

これはもう、言わずもがな。音楽へのリスペクトがすごく、演奏シーンでは余計なセリフもシーンも挟まなずたっぷりと全力のジャズを聴かせる。音響にこだわった劇場で観て大正解。山田裕貴、間宮祥太朗、岡山天音の俳優さん達の演技もすごくよかった。

小説 : 同姓同名 (下村敦史)

大山正紀はプロサッカー選手を目指す高校生。いつかスタジアムに自分の名が轟くのを夢見て
練習に励んでいた。そんな中、日本中が悲しみと怒りに駆られた女児惨殺事件の犯人が捕まった。
週刊誌が暴露した実名は「大山正紀」ーー。報道後、不幸にも殺人犯と同姓同名となってしまった
“名もなき"大山正紀たちの人生が狂い始める。
これは、一度でも自分の名前を検索したことのある、
名もなき私たちの物語です。

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幼女虐殺事件の犯人である16歳の少年A。週刊誌が実名を暴露。それを頼りにネット民がSNSアカウントや住所、親の職業を特定する。叩く、叩きまくる。同年代の同姓同名というだけの全くの別人だとしても、勝手に晒され白い目で見られ。登場人物全員、同姓同名。こんなぶっ飛んだ設定で読みづらさもなく成立させてしまうのがすごい。平野啓一郎「ある男」とは違った角度で、名前の記号性と唯一性を問う。

映画 : エゴイスト

14歳で母を失い、田舎町でゲイである自分の姿を押し殺しながら思春期を過ごした浩輔。今は東京の出版社でファッション誌の編集者として働き、自由な日々を送っている。そんな彼が出会ったのは、シングルマザーである母を支えながら暮らす、パーソナルトレーナーの龍太。惹かれ合った2人は、時に龍太の母も交えながら満ち足りた時間を重ねていく。亡き母への想いを抱えた浩輔にとって、母に寄り添う龍太をサポートし、愛し合う時間は幸せなものだった。しかし2人でドライブに出かける約束をしていたある日、何故か龍太は姿を現さなかった。

https://filmarks.com/movies/104176

なんと言っても鈴木亮平の演技の幅よ。孤狼の血であれだけ怖かった人と同一人物とは思えない。飲み会からの帰り道、ヴォーギングを踊りながらキャッキャするシーンがほぼアドリブだと聞いてさらに感動。演じているというよりも浩輔そのものがそこに居た。

小説 : 本日は大安なり (辻村深月)

11月22日、大安。県下有数の高級結婚式場では、4月の結婚式が行われることになっていた。だが、プランナーの多香子は、クレーマー新婦の式がつつがなく進むか気が気ではない。白須家の控え室からは大切な物がなくなり、朝から式場をうろつくあやしい男が1人。美人双子姉妹はそれぞれ、何やらたくらみを秘めているようで―。思惑を胸に、華燭の典に臨む彼らの未来は?エンタメ史上最強の結婚式小説!

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2011年発売なので10年以上前の作品。4組のカップルとウエディングプランナーの群像劇。全てが同時進行で、それぞれにクセがありながらうまく絡み合っていて、三谷幸喜作品が好きな人にはすごくオススメ。映画化したら面白そう。

小説 : かあちゃん (重松清)

同僚を巻き添えに、自らも交通事故で死んだ父の罪を背負い、生涯自分に、笑うことも、幸せになることも禁じたおふくろ。いじめの傍観者だった日々の焦りと苦しみを、うまく伝えられない僕。精いっぱい「母ちゃん」を生きる女性と、言葉にできない母への思いを抱える子どもたち。著者が初めて描く「母と子」の物語。

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かあちゃんを軸にした、赦すこと/赦されることの短編8作。そしてイジメをテーマにした作品でもある。交通事故を起こし同僚を巻き添えにして死んだ父の罪を背負って幸せになることも笑うことも禁じた母、親友がいじめられたけど傍観者にしかなれなかった少年といじめた少年、認知症の祖母と介護する母と暮らす少女、優秀な教師を母にもつ新米教師、再婚した母の妊娠を知った娘。説教臭くもなくご都合主義でもない、まっすぐ心に届く。こういう作品を教科書に載せてほしい。

映画 : search/#サーチ2

ロサンゼルスから遠く離れた南⽶・コロンビアに旅⾏中に突然、⾏⽅不明になった⺟。⺟を探すデジタルネイティブ世代の⾼校⽣の娘ジューン。検索サイト、代⾏サービス、SNS・・・使い慣れたサイトやアプリを駆使し、⺟の捜索を試みる。スマホの位置情報、監視カメラ、銀⾏の出⼊⾦記録など、⼈々のあらゆる⾏動・⽣活がデジタル上で記録される時代に、⺟は簡単に⾒つかるはずだった――。事故なのか事件なのか?何かがおかしい・・・。不可解な出来事は SNS で瞬く間に拡散されて憶測を呼び、国境を越えて⼤きなトレンドになっていく。BUZZ に翻弄される中、真相に迫ろうともがくジューン。そこは“秘密”と“嘘”にまみれた深い深い闇への⼊り⼝だった・・・。

https://filmarks.com/movies/107716

PC、スマホの画面だけで構成された映画の第二弾。だいたいこのパターンは前作を超えることなく終わっていくものだけれど、全然そんなことなかった。あらゆるツールを駆使するのでデジタル好きな人におすすめ。

小説 : 壁の男 (貫井徳郎)

北関東に、家々の壁に原色で描かれた稚拙で奇妙な絵で話題となり注目を集める小さな町があった。描いているのはすべて、ひとりの男だという。ライターの「私」はその男・伊苅にインタビューを試みるも寡黙でほとんど語らない。周囲に取材を重ねるうちに、絵に隠された真実と男の孤独な半生が明らかに―。

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こんな地味なタイトルで、地味な表紙で、あらすじ読んでもまだ地味で。正直、何に惹かれて買ったのかも忘れたけど、これがすごく良かった。芸術的であるわけでもなく、町おこしなんて下心もなく、ただ描いて欲しかったという絵。それぞれのその経緯がすごく深くていろいろな角度からじんわりと沁みる。すごく良い本だった。こういう作品が見つかるのが書店の真骨頂。

映画 : ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー

ニューヨークで配管工を営む双子の兄弟マリオとルイージ。謎の土管で迷い込んだのは、魔法に満ちた新世界。はなればなれになってしまった兄弟が、絆の力で世界の危機に立ち向かう。

https://filmarks.com/movies/99300

マリオの実写化なんていうとてつもないハードルを見事に超えてきた。ちゃんとマリオ、全部マリオだった。ありとあらゆるシーンにこれまでのマリオ作品が散りばめられていて、それを追いかけるだけでもう楽しい。完璧。

小説 : 法廷遊戯 (五十嵐律人)

法律家を目指す学生・久我清義と織本美鈴。
ある日を境に、二人の「過去」を知る何者かによる嫌がらせが相次ぐ。
これは復讐なのか。
秀才の同級生・結城馨の助言で事件は解決すると思いきや、予想外の「死」が訪れる――。
ミステリー界の話題をさらった、第62回メフィスト賞受賞作。

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学生時代と弁護士になってからの二部構成リーガルミステリー。当然ながら法律の難しい用語や言い回しは出てくるけれど、でもわかりやすく、それでいて法に裏打ちされた奥深さ。2023年冬には映画化もされました。

小説 : 正欲 (朝井リョウ)

自分が想像できる”多様性”だけ礼賛して、秩序整えた気になって、そりゃ気持ちいいよな――。息子が不登校になった検事・啓喜。初めての恋に気づく女子大生・八重子。ひとつの秘密を抱える契約社員・夏月。ある事故死をきっかけに、それぞれの人生が重なり始める。だがその繫がりは、”多様性を尊重する時代"にとって、ひどく不都合なものだった。読む前の自分には戻れない、気迫の長編小説。

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多様性なんて言葉、これを読んだら軽々しく使えない。結局マジョリティ側が”許す”範囲を決めてるだけだし、そもそもなんで勝手に”許す側”に立ってんだよってことだし。多様性多様性言ってる人たちの横っ面を思いっきり引っ叩く、そんな作品。排除も隔離もする必要はないけれど、上から目線でさも理解がありますよ的に包摂するのではなく、無関心に包摂することなのよね、きっと。

映画 : 最後まで行く

年の瀬の夜。刑事・工藤(岡田准一)は危篤の母のもとに向かうため、雨の中で車を飛ばす。 心の中は焦りで一杯になっていた。 さらに妻から着信が入り、母が亡くなった事を知らされ言葉を失う。 ——その時。彼の乗る車は目の前に現れた一人の男をはね飛ばしてしまった。 必死に遺体を車のトランクに入れ立ち去る。そして母の葬儀場に辿り着いた工藤は、車ではねた男の遺体を母の棺桶に入れ、母とともに斎場で焼こうと試みた。 ——その時、スマホに一通のメッセージが。 「お前は人を殺した。知っているぞ」 腰を抜かすほど驚く工藤。 「死体をどこへやった?言え」 メッセージの送り主は、県警本部の監察官・矢崎(綾野剛)。 追われる工藤と、追う矢崎。果たして、前代未聞の96時間の逃走劇の結末は?

https://filmarks.com/movies/106864

2014年に韓国で製作された映画の日本リメイク。情けない岡田准一と狂気の綾野剛。ラストシーンはまさに「へ」の字になった綾野剛の顔に注目。

映画 : リバー、流れないでよ

舞台は、京都・貴船の⽼舗料理旅館「ふじや」。仲居のミコトは、別館裏の貴船川のほとりに佇んでいたところを⼥将に呼ばれ仕事へと戻る。だが 2 分後、なぜか再び先ほどと同じく貴船川を前にしている。「・・・・?」ミコトだけではない、番頭や仲居、料理⼈、宿泊客たちはみな異変を感じ始めた。ずっと熱くならない熱燗。なくならない〆の雑炊。永遠に出られない⾵呂場。⾃分たちが「ループ」しているのだ。しかもちょうど 2 分間!2 分経つと時間が巻き戻り、全員元にいた場所に戻ってしまう。そして、それぞれの“記憶”だけは引き継がれ、連続している。そのループから抜け出したい⼈、とどまりたい⼈、それぞれの感情は乱れ始め、それに合わせるように雪が降ったりやんだり、貴船の世界線が少しずつバグを起こす。⼒を合わせ原因究明に臨む皆を⾒つつ、ミコトは⼀⼈複雑な思いを抱えていた―――。

https://filmarks.com/movies/102653

ドロステのはてで僕ら」の製作チームの今回のテーマは、2分という短いタイムリープ。主人公だけでなく全員引き継がれる記憶。当然、登場人物すべてがタイムリープを理解したうえでの試行錯誤。「私、初期位置あそこなんで」みたいな会話とか、試しにちょっと死んでみたりとか。旅館とその周辺だけでもこれだけ面白い作品になるのはさすが。

小説 : 逆転美人 (藤崎翔)

「私は報道されている通り、美人に該当する人間です。
でもそれが私の人生に不幸を招き続けているのです」飛び抜けた美人であるせいで不幸ばかりの人生を歩むシングルマザーの香織(仮名)。
娘の学校の教師に襲われた事件が報道されたのを機に、手記『逆転美人』を出版したのだが、それは社会を震撼させる大事件の幕開けだった――。
果たして『逆転美人』の本当の意味とは!? ミステリー史に残る伝説級超絶トリックに驚愕せよ!!

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筒井康隆「残像に口紅を」に代表されるような文章全体を使ったトリックに目がない皆様、お待たせしました。美人は得じゃないんです。むしろ損なんです。って文章が延々と続く。と思ったらなんですかこの仕掛けは。思いついたとしても実行する勇気と成立させるとてつもない労力。すごい。

映画 : 遠いところ

沖縄県・コザ。17歳のアオイは、夫のマサヤと幼い息子の健吾(ケンゴ)と3人で暮らし。おばあに健吾を預け、生活のため友達の海音(ミオ)と朝までキャバクラで働くアオイだったが、建築現場で働いていた夫のマサヤは不満を漏らし仕事を辞め、アオイの収入だけの生活は益々苦しくなっていく。マサヤは新たな仕事を探そうともせず、いつしかアオイへ暴力を振るうようになっていた。そんな中、キャバクラにガサ入れが入り、アオイは店で働けなくなる。悪いことは重なり、マサヤが僅かな貯金を持ち出し、姿を消してしまう。仕方なく義母の由紀恵(ユキエ)の家で暮らし始め、昼間の仕事を探すアオイだったがうまくいかず、さらにマサヤが暴力事件を起こし逮捕されたと連絡が入り、多額の被害者への示談金が必要になる。切羽詰まったアオイは、キャバクラの店長からある仕事の誘いを受ける―

https://filmarks.com/movies/103663

17歳、子持ち。働かない旦那。頼みのキャバクラもガサ入れの結果働けなくなった。「映画、ではなく現実」というフレーズの通り、盛っている感はどこにもなく、貧困の現実を直球で突きつけてくる。沖縄が舞台で方言が強く何言ってるかわからないところもまたリアル。この状態から這い上がれる方法は残念ながら全く思いつかない。

映画 : 福田村事件

1923年春、澤田智一(井浦新)は教師をしていた日本統治下の京城(現ソウル)を離れ、妻の静子(田中麗奈)と共に故郷の福田村に帰ってくる。智一は、日本軍が朝鮮で犯した虐殺事件の目撃者であった。しかし、妻の静子にも、その事実を隠していた。その同じころ、行商団一行が関東地方を目指して香川を出発する。9月1日に関東地方を襲った大地震、多くの人々はなす術もなく、流言飛語が飛び交う中で、大混乱に陥る。そして運命の9月6日、行商団の15名は次なる行商の地に向かうために利根川の渡し場に向かう。支配人と渡し守の小さな口論に端を発した行き違いが、興奮した村民の集団心理に火をつけ、阿鼻叫喚のなかで、後に歴史に葬られる大虐殺を引き起こしてしまう。

https://filmarks.com/movies/105272

関東大震災のあと噂やデマが蔓延、朝鮮人(注:劇中表現)は見つかったら殺され、朝鮮人の疑いをかけられた日本人も村人たちに虐殺された史実。加速した集団心理はもう止められない。冷静に考えれば、自警団なんてものができた時点ですでに加速は始まっている。そして令和6年能登半島地震でも似たような言動がSNSで散見される。。

映画 : ミステリと言う勿れ

天然パーマでおしゃべりな大学生・久能整(菅田将暉)は、美術展のために広島を訪れていた。そこで、犬童我路(永山瑛太)の知り合いだという一人の女子高生・狩集汐路(原菜乃華)と出会う。「バイトしませんか。お金と命がかかっている。マジです。」そう言って汐路は、とあるバイトを整に持ちかける。それは、狩集家の莫大な遺産相続を巡るものだった。当主の孫にあたる、汐路、狩集理紀之助(町田啓太)、波々壁新音(萩原利久)、赤峰ゆら(柴咲コウ)の 4 人の相続候補者たちと狩集家の顧問弁護士の孫・車坂朝晴(松下洸平)は、遺言書に書かれた「それぞれの蔵においてあるべきものをあるべき所へ過不足なくせよ」というお題に従い、遺産を手にすべく、謎を解いていく。ただし先祖代々続く、この遺産相続はいわくつきで、その度に死人が出ている。汐路の父親も 8 年前に、他の候補者たちと自動車事故で死亡していたのだった… 次第に紐解かれていく遺産相続に隠された<真実>。そしてそこには世代を超えて受け継がれる一族の<闇と秘密>があった―――。

https://filmarks.com/movies/106633

原作も面白いし、ドラマも面白いし、当然映画も面白い。説明不要。原作・ドラマを見ているならぜひ観よう。

映画 : 月

そして、その⽇は来てしまった。 深い森の奥にある重度障害者施設。ここで新しく働くことになった堂島洋⼦(宮沢りえ)は“書けなくなった”元・有名作家だ。彼⼥を「師匠」と呼ぶ夫の昌平(オダギリジョー)と、ふたりで慎ましい暮らしを営んでいる。施設職員の同僚には作家を⽬指す陽⼦(⼆階堂ふみ)や、絵の好きな⻘年さとくん(磯村勇⽃)らがいた。そしてもうひとつの出会いーー洋⼦と⽣年⽉⽇が⼀緒の⼊所者、“きーちゃん”。光の届かない部屋で、ベッドに横たわったまま動かない“きーちゃん”のことを、洋⼦はどこか他⼈に思えず親⾝になっていく。しかしこの職場は決して楽園ではない。洋⼦は他の職員による⼊所者への⼼ない扱いや暴⼒を⽬の当たりにする。そんな世の理不尽に誰よりも憤っているのは、さとくんだ。彼の中で増幅する正義感や使命感が、やがて怒りを伴う形で徐々に頭をもたげていく――。そして、その⽇はついにやってくる。

https://filmarks.com/movies/110824

神奈川県で発生した精神障がい者施設での殺傷事件をモチーフにした作品。綺麗事が言えるのは自分が当事者でないから。高年齢出産だから堕ろそうとしたんでしょ、出生前診断しようとしたんでしょと自問自答する宮沢りえのシーンがまさに。重いけれど、それだけ作品にする意味はあるのだと思う。

小説 : 六人の嘘つきな大学生 (浅倉 秋成)

成長著しいIT企業「スピラリンクス」が初めて行う新卒採用。最終選考に残った六人の就活生に与えられた課題は、一カ月後までにチームを作り上げ、ディスカッションをするというものだった。全員で内定を得るため、波多野祥吾は五人の学生と交流を深めていくが、本番直前に課題の変更が通達される。それは、「六人の中から一人の内定者を決める」こと。仲間だったはずの六人は、ひとつの席を奪い合うライバルになった。内定を賭けた議論が進む中、六通の封筒が発見される。個人名が書かれた封筒を空けると「●●は人殺し」だという告発文が入っていた。彼ら六人の嘘と罪とは。そして「犯人」の目的とは――。

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就職活動という名の閉鎖空間での心理学実験。これだけでも充分に面白いのに、まだ前半パート。そして期待を裏切らない、いやむしろ裏切られ続ける後編。設定のキャッチーさも相まって各所で話題になるのもよくわかる。映画化も期待。

映画 : TALK TO ME/トーク・トゥ・ミー

母を亡くした高校生のミアは、気晴らしに仲間とSNSで話題の「#90秒憑依チャレンジ」に参加してみる。ルールは簡単。呪物の「手」を握り、「トーク・トゥ・ミー」と唱えると、霊が憑依する――ただし、必ず90秒以内に「手」を離すこと。 ミアたちはそのスリルと快感にのめり込み、憑依チャレンジを繰り返してハイになっていくが、仲間の1人にミアの母の霊が憑依し――。

https://filmarks.com/movies/108708

その手を握って、talk to meと言うと霊が見える。さらにlet you inというと憑依される。その時のトリップ感にハマって、ドラッグのごとく順番にキメまくる若者たち。そして発生する事故。霊がいるかいないかのせめぎ合いなんて取っ払って、憑依をキメすぎちゃったあとに特化したホラー。秀逸。

最後に

あまりにも有名なものは改めて紹介するまでもないので割愛。⻤太郎誕生 ゲゲゲの謎とか首とか怪物とかコナンとか仮面ライダーとか。
2024年もいろんな作品に触れたいものです。今年もどうぞよろしくお願いします。

#小説ソムリエ 始めました。 普段あんまり小説を読まない人でも、趣味・好きな映画などなどを伺って、あなたに合った小説をおすすめします。