オーロラ見るためアイスランドへ その2
アイスランド初日
日本を出発しておよそ20時間、ようやくアイスランドに到着。
高揚感であまり疲労は感じない。
到着後のファーストミッションは、羽田で預けたスーツケースをゲットすることだ。
機械的に吐き出され、コンベアを流れていく荷物たち。
旅行前に友達から借りた派手派手なスーツケースはすぐに見つかった。
だがこのタイミングで妻はトイレに行ってしまったので、私が妻の荷物も確保しなければならない。
そして悪いことに、妻のスーツケースのデザインをよく覚えていなかった。
アレかな?と思ったスーツケースが出てきたが、出遅れてしまい取れなかった。
しかしコンベアの先にいた外国人が察して「You?」と聞いたので、イエス!と首を縦に振ると妻のスーツケースを取ってくれた。
アイスランド人だろうか、さっそくアイスランドが好きになってしまいそう。
荷物の回収が速く終わったので、今のうちに免税店で買い物をしておくことにした。
まずは海外土産の鉄板である酒!
アイスランド大使館の通訳さんにヒンブリミという鳥のイラストが描かれたジンが超うまいと聞いていたので、見つけて即購入。
支払い時にお酒の免税手続きをどうすればいいのかわからなかったけど、妻がカタコトで店員さんに聞いてくれて会計を終えることができた。
とても助かる。
妻は「私がいると旅が楽でしょう」と調子に乗り、なぜかもう一度免税店に行き、滞在中にホテルで飲む用として12本も缶ビールを買ってきた。
なんで?
ようやくツアー全員の荷物受け取りと集合が完了したので、空港の入り口に移動。
そこで添乗員さん現地ガイドの女性を紹介される。
どうやら一部観光地は添乗員+現地ガイドという組み合わせでいくようだ。
空港から出てようやくアイスランドの地を踏んだ気持ちになる。
屋内よりもさすがに寒いが耐えられないほどではない寒さ。
辺りを見渡すとまだまだ暗い。
空港で現地時間に合わせた時計は午前10時30分を過ぎているのに日が昇っていない。
12月のアイスランドは極夜と呼ばれる状況で、いつまでたっても日が昇らないのだ。
日の出から日の入りまではおよそ5時間。
だからこの時期の観光は日没との戦いになる。
皆でバスに乗り込み出発。
現地の運転手さんがツアー最終日までハンドルを握ってくれるそうだ。
おお、右側を走っている!
大半の国が右側通行で当たり前なのだけど、初海外なので変に驚いてしまう。
妻が免税店でビールとともに買ってきたチョコを食べながら聞く。
中にリコリスが入っていてかなりクセが強い味。
好き嫌いがはっきり分かれそう。
こちらでチョコを買うときはリコリス入りかどうかをしっかり見よう。
本日はゴールデンサークルというアイスランドの観光地密集地帯に行く。
密集していると言ってもそれぞれバスで30~1時間ほど離れている。
アイスランドは北海道と四国を合わせた程度の広さなので意外とでかいのだ。(しかし人口は新宿区とほぼ同じ38万人程度)
最初に到着したのがストロックル間欠泉
……の横にあるレストラン。
出発時間が遅くなってしまったのでいきなり昼食になった。
まず出てきたのはトマトをベースにしたスープ。
それに切り分けられたパンが出てきた。
アイスランドではじめて口にする本格的な食事。
金属のボウルにオタマと一緒に入っており、4~5人で一つのボウルから取り分けて食べる。
前に座っている親娘のツアー参加者さんと分け合って食べることになった。
こちらの親娘はカメラを大事そうに抱えていて、オーロラ撮影が旅の目的なのだという。
このスープはコクがあって美味しい。クセの強過ぎる香草類は入っていないようだ。
しばらくすると、メインディッシュの北極イワナが登場してきた。
切り身の大きさから日本の川にいるイワナとは比べ物にならないほど大きい!
しかし味の方は濃厚であり、これまたとても美味しい。
バターベースのソースと非常によく合う。ペロリと食べてしまった。
紅茶やコーヒーはセルフなので飲みたい人が飲む感じ。
私は水が美味しいと思ったのでコップの水をガブガブ飲んでいた。
出発前に得た知識によると、アイスランドは水道水が美味い。
というか水道水がほぼミネラルウォーターなので、売られているミネラルウォーターを買うのは馬鹿らしいとのこと。
これには心から同意したいと思った。
アイスランドは世界でも珍しい水道水を安全に飲むことができる国の一つ。
そして物価が高いので500mlのミネラルウォーターが400〜700円する。
もし旅行することがあったら空のペットボトルや水筒に水道水を入れて持ち歩けば十分だ。
肉厚で濃厚な北極イワナを楽しんだ後、ストロックル間欠泉に移動する。
といっても道路を挟んだ隣の敷地なので10分ほど歩くだけでよかった。
歩道がよく整備されていて、ほとんど足元に注意する必要はなかった。
観光地として大事にされているのだろう。
歩道が終わると、少し奥に人が集まっている場所があった。
そこがストロックル間欠泉だ。
この場所は6〜7分周期で噴き出す。
吹き出すと大きな歓声が上がる。
間近でこんな迫力あるものを見れるなんて
アイスランドにきて良かったなあと早々と思ってしまう。
噴き出す動画を撮影するためにスマホを構えて揺れないように気をつける。
それでもいつ噴き出すかは神のみぞ知るわけで、根気が大切だ。
満足のいくもの撮影できたので、レストラン横の売店に戻る。
売店にはアイスランドの服や乾き物のおつまみ、塩、ぬいぐるみ、チョコレートなどが販売されていた。
ここで夫婦2人のアイスランドの思い出にと小さな置物を購入した。
出発前に添乗員さんからもらったイヤホンガイドを観光地では耳に入れて行動している。
これは添乗員さんの話した言葉がかなり遠くにいても耳に入る優れもの。
一方通行ではあるものの、観光地での注意事項や解説、バスの集合時間などを教えてくれるのだ。
次の目的地はグルトフォスの滝。
アイスランドには有名な滝が多いのだけど、その中で1,2を争うほど有名な場所。
圧倒的な水量にはただ気圧されるばかり。
展望台は上下2つあるのだけど、上を選択。
下の方が迫力あるっぽいのだが下り坂になるため転倒しそうなほど足場が悪く怖い。
すっ転んでいる人も2人ほど見かけたので、足場の確認はとても大事なだと思った。
上の展望台からでも十分すぎるくらいの開けた展望と大きな滝を見ることができた。
ちなみにグルトフォスの滝が有名になった理由は、ある一人の女性の奮闘があったからだという。
むかしこの滝に水力発電所を作る計画が持ち上がったことを知り、白紙に戻すために運動を重ねたそうだ。
アイスランドの人々の注目をこの滝に集めることに成功し、間接的ではあるものの発電所の建設は撤回されることになった。
今でもグルトフォスの滝には彼女の功績をたたえた案内板が設置されている。
アイスランドは男女平等指数が世界でもトップクラスであり、
現在の国のトップも36歳の女性ということでニュースになった。
しかし昔のアイスランドは男尊女卑の国であり、滝の保全運動には多くの困難があったことだろう。
そういった案内を添乗員さんのイヤホンガイドで聞く。
そして本日最後の目的地に向かっているのだが、今いる場所から1時間ほどかかるという。
走りながら思ったこととしては、「おひさま間に合うかな?」というもの。
数日前に冬至を迎えたばかりのアイスランドは『極夜』という状態にある。
これは日がいつまでも沈まない白夜の反対、つまりほとんど日が昇らない時期なのだ。
日の出から日の入りまでは5時間ほどしかないという
車窓から外を見ると日は沈みかけていた。
自分はアイスランドの車窓から見える景色がもう好きになった。
アイスランドには大きな木は生えないという。
厳しい自然の中、草と苔と氷が大地を覆う。
そんな中で街から街へ電気を運ぶ送電線が見えたり、山の麓に佇む家、広い広い牧場の敷地にわずかに見えるアイスランドホース。
いつまで眺めていても飽きる気がしない。
バスの前を走る車の速度が遅いらしく、運転手席の後ろに座る自分にもドライバーの焦りみたいなものが伝わってくる。
道幅が広くなったり対向車が来ない場所をうまく見つけて追い抜いていく。
速度はグーグルマップの速度表示では70~90キロは出ている模様。
路面は半分凍りついているようなところなのに、とんでもない運転技術だと思った。
しかし事故だけは怖いので、ツアー中はシートベルトを締めることを意識した。
運転手さんの奮闘も虚しく、最後の目的地であるギャウに到着したのは1時間20分後だった。
急いでバスを降りたが、あたりは夜と言ってさしつかえないほど暗くなっていた。
屋内施設であればなんら問題ないのだけど、地形を説明し、風景の雄大さを堪能する場所なので日没の相性は最悪。
やや早足で進む添乗員さんとガイドさんに遅れをとるまいと進んでいく。
途中の国旗を掲揚するポールのところまでやってきたところで完全に日は暮れた。
さて、このポールは非常に意義深いもので、今から1000年前にアイスランドに住んでいた人々がここで会議を開いたらしい。
これが世界初の民主的な会議、評議会の場所とされているという。
いまでも運が良ければアイスランド国旗が翻るのを見ることができるのだそうだけど、
今日は無情にもポールのみが立っていた。
ポールを通り過ぎると、いつの間にか左右に荒々しい岩肌の岩壁が現れた。
暗くなっているので全貌は不明だが、暗いがゆえに迫力を感じることができた。
この岩壁も大変貴重なもので、地質学的には有名なところらしい。
実は左右の岩壁はプレートであり、今自分たちが歩いているのはプレートの境目なのだ。
世界のほとんどのプレートの境目は海底に没しているのだけど、陸上で間近で観察できるこの場所は非常に珍しいのだという。
ギャウというのも地の裂け目という意味があるようだ。
暗くなってしまったのが本当に惜しい。だが左右のプレートに触れることができる場所があるので触っておく。
この二つのプレートが再び合わさるのが日本近海。
これが日本まで続いているのと思うとなおさら味わい深かった。
ギャウを通り抜けた場所にバスが先回りして停車していた。
いつの間にか肩に積もっていた雪を払ってバスに乗り、一息つく。
今日の観光を終えたのでホテルに向かう。
さて、ここまで合計2時間ほどバスにゆられてわかったのだが、アイスランドの天気はあてにならない。
15分間隔で変わるという表現をどこかで見たのだけど本当だと思う。
曇りだったのが突然晴れ、晴れたと思ったら雨になりそして雪になった。
ちなみにアイスランドには傘が不要。
風が強いから傘が無意味というわけだ。
暗い道を1時間ほど走ると市街地に入ってきた。
家々はイルミネーションをしていてとても綺麗。
アイスランドではクリスマスを盛大に祝うらしいが、それが終わっても飾り続けを続けているのだろうか。
それとも防犯対策なのだろうか。
ともかく旅行者の目を楽しませてくれる。隣の席の妻は寝ていた。なんとももったいない。
添乗員さんがホテルに到着したことを車内マイクで告げてくれる。
これから旅行最終日までずっとお世話になるホテルナチュラに到着した。
ここは世界最北の首都であるレイキャビクの中心部からやや離れているので、
もしかしたらホテル前からでもオーロラを見ることができるかもしれないそうだ。
うまく説明できないが、ホテルのロビーから自分の部屋に行くまでの間になんとなく北欧らしさを感じることができる。
空間を上手に使い、シンプルだけど統一感のあるソファや椅子類、木を使った温かみあるオブジェなど、なんとなく良いホテルだなと思った。
部屋はこんな感じ。
ツインベッドだったのは嬉しい。
トイレと手洗い場、シャワーが同じ区画なのが気になるが外国はみんなこんなものだろう。連泊には十分な部屋だと思った。
40分後に夕食だというので急いでスーツケースを開きあわてて荷解きをする。
それからシャワーを浴びてゆったりした服に着替えてから夕食場所であるホテル1階のレストランへ向かった。
夕食までにホテルの中を少し探検する。
ロビーの近くには軽食を販売するコーナーがあった。欲しいものをケースから取って会計するようだ。
やはり驚くべきはその価格。ISKというのはアイスランドクローナの略で、カードの手数料込みでだいたい1ISK=1.2円程度。
だから650ISKのコーヒーは730円となる。
どんな立派なコーヒーが出てくるのかと思ったら、こちらのコーヒーマシンで自分で作るコーヒーが730円。
そして後日購入することになるサンドイッチ類はだいたい1100~1200円というのだから恐ろしい。
絶対に買ったらだめなだと思った。(後日2つ購入するのだが…)
世界トップクラスの物価高の国というのも頷ける。
レストランに行くと、ツアー全員でテーブルを囲んでの夕食。
ブルスケッタのようなものが前菜。
バルサミコ酢のソースがマッチしていて美味しい。なんだか落ち着く味だ。
メインディッシュはチキンのローストしたもの。
これまた食べやすい。モリモリ食べた。
長時間フライトから休憩無しで観光をした疲労のためか、参加者の一人が夕食を欠席していた。
そうなると食事が一皿余る。気を利かせた添乗員さんが自分に食べませんか?と進めてくる。
たぶんすごく食べそうに見えたのだろうか、こういうときに太っていると得だ。遠慮なくいただく。
お孫さんを連れた御夫婦と少しだけ話し、食べ終わるとすぐに自室に帰った。
ちなみにツアーの参加者数は満員で24人とのことだったが、実際の参加者は19人。5人はなんらかの事情で来れないかキャンセルしてしまったのだろうか。
無事にアイスランドに来れて美味しいものを食べられている自分たちの幸せも噛み締めてしまう。
二階に上がるエレベーターが閉まる寸前、他の外国人のお客が乗ろうとしていた。
ギリギリだが開くボタンを押してみると間に合ったようで扉が開き、そのお客は乗ることができた。
乗った瞬間に無言でサムズアップをしてきた。こちらもサムズアップで応えた。異文化交流である。
部屋に戻ってからは荷解きを続ける。
部屋は暖かく、Tシャツでも十分なほど。
枕元にスマホ関連充電場所を作り、一安心して眠りにつく。
体を伸ばして眠るのは何十時間ぶりなのだろう。時差でよくわからない。
さてぐっすり眠ろうとしたのだけど、もしかしたら窓からオーロラが見れるかもしれないという期待が高まり、1~2時間ごとに起きて窓の外を眺めた。
オーロラは見れなかった。