効果的な低山トレーニングを考える

低山歩きをトレーニングとして活用する場合、ただ歩いているだけでは効果が薄いことを今さならながら気がついた。
 
思えば、近場の低山を好んで歩くようになったのは10年くらい前のこと。始めた当初は年間100回程度であったが、その数年後から100〜200回に。そして体力の衰えを感じ始めた3年ほど前は400回、一昨年は約500回、去年は約700回を登った。
 
登ったといっても、標高差60mの「丘」を登る程度なので、いわゆる山とはほど遠い。しかし、例えば年間100回登山であれば月あたり8回、400回であれば33回、500回であれば42回、700回であれば58回の計算となる。
 
ある時、ふと気がついたのだが、登山の本質は高低(標高)差にあることに思い当たった。おそらくそこが、単なる歩きだけのウォーキングと決定的に異なる点で、逆にいえば、標高差に注目してトレーニングを組むことが大切ではないか、と仮説を立てた。
 
そこで、前述の年間登山回数を標高差で読み替えてみた。
・年間100回登山:17m/日 500m/月 6000m/年
・年間400回登山:67m/日 2000m/月 2万4000m/年
・年間500回登山:83m/日 2500m/月 3万m/年
・年間700回登山:117m/日 3500m/月 4万2000m/年
 
こうして考えてみると、たかが標高差60mの年間700回登山といえども、累積すれば、月に3000m峰を1回往復すると同等で、相当な運動量になることがわかるだろう。しかし、重要なことは、感覚値としてその程度では想像以上に「伸び」を感じないことにある。つまり、運動の割に体力アップした感覚がないし、3000m峰を登った後に実感する体力向上を月あたりで感じることがないのである。
 
それは一方で、地道な努力によってベースの力が少しずつ上がり、感覚値としてなかなか感じにくい、あるいは一回に往復3000mを登るほどのダメージがなく、そのため効果が薄いといったことも考えられるが、正直、伸びを感じないトレーニングにモチベーションは続かない。
 
そこで導入したのが、無雪期は心拍トレーニング、積雪期はラッセルトレーニングである。いずれも心肺に対して負荷をかけることで、運動強度を上げるのである。注意したいのは前者の心拍トレーニング。これはタバタ式トレーニングを山に適用したものだが、思い切り心拍を上げる(例えば走る)ことを20秒間継続、その後10秒間歩くことを1セットとして合計8セットを行うのだが、内臓が口から吐き出るくらいに苦しすぎてせいぜい5セットが限界で、2回ほどやってみてやめてしまった。
 
その後、どうしたかといえば、心拍数を少しだけ上げてその後ペースダウン、この繰り返しを継続し、汗を少しだけかく程度まで運動を続ける(標高差60mを数回登る)ことを始めてみた。これが、なかなか調子がいい。何より、無理なく継続できるところがいい。最近は積雪もあるので、スノーシューやワカンを使って雪上を歩くことで、運動強度を調整している。また、縦走などを想定すれば、荷物を背負って歩くことも効果があるだろう。などとも考えている。
 
トレーニングとは、漫然と「継続する」だけでは効果が薄い。目的とそれに対するメニューを考え、その結果をみながら工夫することが大切である。当たり前といえば当たり前のことだが、こんなことに気づくだけでも、10年の歳月を費やしてしまった。しかし、自分なりのトレーニングを自ら作り出すには、それなりの時間と思考が必要なこともわかった。

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