見出し画像

〇〇はママの味~

 インターネットの海で思う画像を探すことが多いのだけれど。
まぁだいたい1時間も検索かければドンピシャではなかったとしても、まぁまぁ「こんなかんじ」っていう画像が見つかるもんなんですよ。
でも、この記事のカバー写真は見つからなかったなぁ…

 私はちっちゃい頃、ばぁちゃんの家(正しくはじいちゃんの家)に住んでた。はじめはじいちゃん、ばぁちゃん、お母さん、おいちゃん、おばちゃん、私で住んでいた。私が4歳くらいの時おばちゃんが駆け落ちして出て行った。おいちゃんは出て行ったり帰って来たりをくりかえしていたなぁ。

 私の一番古い記憶の中の母は「白鳥」っていう喫茶店で働いていた。いわゆる「軽食喫茶」ってやつ。たまにお店に行って、ホットミルクとかミルクセーキとかクリームソーダとかを飲んで、サンドイッチを食べたりしていた。子どもの脚で歩いても20分くらいで行ける距離だったし、いつもは21時とかまで働いていた母に私は会えなかったので、月に2~3回なら一人で行って一人で帰っていた。土曜日か日曜日のお昼に。今では信じられない話だけれど、母は月に1度か2度、私の幼稚園や学校の行事の時以外は休まないで働いていた。

 当時の私はあまり深く考えたことが無かったけれど、時々母がお土産を持って帰る日があった。その日だけは21時過ぎても「寝なさい」って言われなかったから、幼心に「あ、今日はお土産の日」って判ってワクワクしていた。

 「お土産」って書いてるけど、毎回同じだった。「リンデンのバームクーヘン」。なんでそうだったのかはもはや母もよくは覚えてないらしい。けれど。毎回、必ずおなじ。詳細は母はもう何も覚えていないのだが(なぜ!)私は覚えている。白い箱に入って、細いリボンで十文字に縛ってあって、真ん中で蝶々結びになっている。開けるのは私。銀色の敷き紙の上に乗ったまるいバームクーヘン。外周ぐるりとアーモンドスライスがびっしりとついていて、すごく美味しかった。小学3年生くらいの時、アーモンドスライスではなくて、白いアイシングに変わったんだけど、それすら話しても誰も共感してくれなかったんだよ。。。大人にとっては大したことじゃなかったんだろうか。私にはその変化はすごい大きかったんだけど。(どちらにせよ美味しかったけれど)

 大人になってから聞いた。お給料日だったんだって。毎月、その日だけ私のために母が買ってくるバームクーヘンは、本当に美味しかった。その後も帰郷して、時間があったらリンデンまで買いに行ってた。けれど、その店ももうずいぶん前に無くなってしまった。
 
 あれから長い時間が経って、自分で何度もいろんなお店でバームクーヘンを買うんだけど、あの美味しさに巡り合ったことが無い。あれよりおいしいバームクーヘンに出会ったことがない。それはもちろん、「想い出補正」もあるかもしれないけれど、たぶん今巷に溢れる「バウムクーヘン」とは違うものなんだろうと思う。あの頃、山口県の端っこの田舎町で、バームクーヘン売ってる店なんか他に無かったんだもの。

いいなと思ったら応援しよう!