日々の時間に意識を向けて豊かに過ごす
日常で起こることは、基本的にニュートラル(中立)である。
人間が何らかの意味を与えない限り、そのこと自体には特定の意味はない。
電車に間に合わなかった、という状況は、自分が希望していたより五分か十分遅れて目的地に着いた、ということでしかない。
「希望」していたのと「計画」していたのとではまた少し違うが、いずれにせよ、そのことが自分が人間として良い悪いということは意味していない。
ただ、人によってはそうした出来事で、
「私は決して時間に間に合うことができない怠情な人間なんだ」
と考えてしまうかもしれない。
以前、私がヨーロッパに旅行へいったときに、途中の電車に乗り遅れてしまい、空港でゲートまで走っていくと、まだ飛行機がいるのに、もうゲートが閉じてしまった。
早めにゲートが閉められてしまったのである。どう頼んでも決して乗せてくれない。一日一本しかフライトがなく、これは一日遅れることを意味する。
家に帰るには遠すぎるため、その晩はホテルに泊まらなければならなくなった。そのため、考える時間がたっぷりできたわけだが(笑)
私はホテルの部屋で座って考えていた。
「私はいつも、必ず、遅れる。きっと、私は遅れることを<計画>しているに違いない。」
そんなこと、今まで考えたこともなかった。
そういえば、ふと、母のことを思い出した。
彼女は常に遅れて帰ってきていた。
そこで私は気づいた。
第一に、これは母から学んだのだ、と。
母の姿をみていた私は、どこか無意識的に遅れても仕方がないような「計画」をしていた。
さて、では、どうすれば私の計画を改善できるのだろうか。
私は、いつも十五分程度の余裕をもって目的地に着く、という計画をしていた。
私は自分に聞いてみた。
「空港に行くという旅で、どんな経験をしたいのか?」
「ぜいぜい言いながら、汗をかいて空港に着きたいのか?」
「いや、私は一時間前には空港に着いていたい」
「じゃあ、そうするためには、何時に家を出なければいけないのか?」
「じゃあ、朝、準備をして何をするためにどれくらい時間がかかるのか?」
このように、バックワードプランニング(逆方向への計画)をした。
前回お話しした『時計じかけのオレンジ』の話のごとく、私自身を飛行機に見立てて後ろ向きに飛ばしてみたわけである。
それは、時間の構造をどのように使っていくのか、ということでもある。
これについては後日で詳しく話をするとする。
バックワードプランニングをすることによって、たとえば、何時までに起きなければいけないかが分かる。
それをやっていくうちに、私の中で明らかになったことは、あらゆることに時間がかかる、ということであった。
私は、いつも時間というものはじっと静止している、そんな感覚があった。
たとえば、朝、私がシャワーに入るとき、
「今は7時だ・・・お湯が温かい・・・なんて気持ちいいのだろう」
シャワーが終わった時も2分ぐらいしか経っていないような感覚である。
しかし、時計をみてみると、
「え、7時半?」。
温かいシャワーに当たった途端、私のフォーカスが変わっているのである。
その瞬間、私の注意は、ああいい気分だな、という方にいってしまい、30分も経ったという時間の経過にまったく自覚がない。
そうやって私はいつも遅れていたんだ、と。
この時が私は心の底から本当にどういうことかが「分かった」瞬間だった。
そのときに、時計というものは決して止まることがない、誰のためにも止まってはくれない、ということを痛感した。
そして、そこからもう少し考えてみた。
「さて、どうすれば私は今回の経験を使って人生を豊かにできるのか。」
それによって、かえって負担が増えるのではなく、豊かな人生にするにはどうしたらいいのか。
一時間前に着くために、空港に行くまでの活動すべてを焦って急ぎながらやるのでは、何をやっていてもまったく楽しみを感じられない。
かと言って、今まで通りでは、電車は私がホームに着く少し前に行ってしまう。
私の心の中で聞いてみた。
「私は本当にこのように人生を生きていたいのか」。
というのは、この問題は、空港に行くときだけではなかったからである。
私にとって、あらゆることがいつもそうなってしまっていた。
そう、私が母親から学んだパターンである。
だから、自分自身が今までとは異なったフレームで見てみることを自分に招待してみたのである。
「いつも焦って急いでやっていては、人生のどんな経験も味わうことができないではないか。そんな生き方ではなく、バックトラックしていくことによって、喜びが増えていく、より豊かになるような時間の使い方をしていこう」。
つまり、
「自分が一日のさまざまな経験を楽しみながらできるような、そんな
生き方をしていこう」
と考えたのである。
そのおかげで、私は今は十五分間、素晴らしいシャワーを味わうことができている。
何をしたのか。シャワールームの中に、ウォータープルーフの時計を置くことにしたのである(笑)。
私はシャワー中に数分おきにその時計を見ている。
「見ていると、お湯を沸かすのには、とても時間がかかる」
ということわざがある。
やかんに水を入れ、ガスをつける。そして、別のところで何かをして戻ってみると、もう水が全部蒸発してしまっていた、なんてことがあると思う。
つまり、とても時間がかかる、ということをリフレーミングして、時計をシャワーの横に置いて見ていれば、十五分という時間を長い豊かな時間に感じることができるわけである。
自分の現実の経験をリフレーミングして、それをとても豊かなものにすることもできるのである。
◆参考文献:クリスティーナ・ホール博士の言葉を変えると、人生が変わる NLPの言葉の使い方 2009 ~信念/観念と現実 より
クリスティーナ・ホール博士(Christina Hall Ph.D)
1978年、NLP開発者であるリチャード・バンドラー氏らによって設立された世界で最も歴史の長いNLP協会、The Society of NLPの現理事長。心理学・神経意味論言語学の博士号保持。
「究極の言葉の魔術師であり、NLPの発展に終わりがないことを証明し続ける人。NLPについて彼女に教えたことより、彼女から教わったことの方が多いと言えるだろう」By リチャード・バンドラー(NLP開発者)
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