「業務のデジタル化」って、いろいろあって難しいよね、という話(1)
「業務のデジタル化」の現在地
最近は雑誌や新聞記事などで「AIやDXを採用して業務のデジタル化を推進し、生産性を向上させましょう」という言葉をよく見聞きします。
例えばこちらのファミレスチェーンでは3000台もの猫型配膳ロボットが活躍中とのこと。業界によってはこのようにタブレットで注文、ロボットや寿司店のレーンのように人ではなく機械が配膳、といったように省人化が進んでいます。
※なお、こちらのファミレスチェーンは、ロボット導入は省人化が目的ではなく、従業員の負担軽減が目的のようです
このように一般社会でもロボットが活躍する場面を多く見つけることが出来ますが、製造業などでは1990年代からロボット導入が進んで、製造プロセスの自動化・省人化が進められてきたのは皆さんご存知かと思います。
さて、一方で大多数のオフィスワーカーの皆さんにおかれましては、「業務のデジタル化」はどこまで進んでいますでしょうか?
日本の「オフィス業務のデジタル化」は早かった
実は日本では「オフィス業務のデジタル化」は長い歴史があります。
今を遡ること30年以上前の1980年代後半からオフィス業務に「コンピュータ」が導入され始めました。
当初の使い方は、メインフレームという大型計算機とCOBOL(コボル)という言語を使ったソフトウエアで給与計算などの事務処理を行うというもので、今のようなオフィスで仕事をするための道具ではありませんでした。
「ベンダーロックイン」が足かせに
このように日本では比較的早くからコンピュータを業務に導入していましたが、これらのシステムは開発会社/メーカーの独自仕様のため、一旦ある会社製のシステムを導入してしまうと、そのシステムが古くなったり、機能を新しく追加しようとすると導入経費が嵩んだりソフト開発期間が長くかかるという問題が起こってきました。
これが今現在で国や自治体などのシステムで問題になっている「ベンダーロックイン」(開発会社の言いなりに価格などが決められ、一旦契約してしまうとその開発会社と契約し続けなければいけなくなる)と呼ばれる問題です。
日本では主にコンピュータ業界が長くこの状態を主導して続けてしまったために、日本のオフィスにおける業務のデジタル化が大きく遅れをとることになってしまいました。
「業務のデジタル化」=「システム導入」ではない
コロナ禍において「業務のデジタル化によるリモートワークの活用」が政府から発信され、Zoomなどのリモート会議が活用されました。
しかし、実際の「業務」で使うソフトウエアはオフィスソフトや会社のワークフローなどあまり変化はなかったと思います。
或いは会社さんによっては、「クラウドの名刺管理を入れました」とか「人事管理のクラウドサービス入れました」というシステム導入をされた会社様もいらっしゃると思いますが、さて問いです。
日本企業では
「◯◯システムが流行っているから」導入して、
「◯◯システムは流行が終わったから」使わなくなる、
ということが繰り返されてきましたが、
「コロナ禍だから」システムを入れて、
「コロナ禍が過ぎ去れば」システムは使わなくなる、
という状態は、従来の姿勢と全く同じです。
「業務のデジタル化」は、本来は「紙中心」だった業務を「デジタル(ネットワーク)上で完結させる」ことに意味があり、「コロナ禍」という社会的イベントがあってもなくても進めなければならないのですが、システムの導入経緯を「コロナ禍」に求めてしまっている会社様も少なくありません。
「業務のデジタル化」の、とっかかり、って?
現代のオフィスでは、各パソコンやプリンタがネットワークで繋がり、各パソコンにはオフィスソフトが入っており、それらを使って文書作成や表計算、プレゼン作成などを行うのが一般的かと思います。
しかしコロナ禍で話題になった「上長に印鑑もらうために出社する」など、未だにデジタルファイルを紙出力して業務を進める会社も多いと思います。その一方で、コロナ禍を経て、業務をデジタル内で全てやってしまおう、という会社様も増えました。
「業務のデジタル化」をうまく実現できている会社様を見ていますと、一つの「基準」を守ってシステムなどを上手く活用しています。
その基準とは、
ことです。
例えば、社員名簿一つをとっても、社員番号、氏名、生年月日、入社年月日、などが挙げられると思いますが、入力される社員名が「河野太郎」、「河野 太郎」(全角スペース)、「河野 太郎」(半角スペース)、のいずれでも一つの氏名とシステムは認識してくれません。
こういった「一つのデータ列の入力規則を統一すること」をデータの正規化と言いますが、「データを基本に業務設計すること」のまず最初はこのデータの正規化を意識して従業員さんにデータ入力してもらうこと、です。
次回は業務のデジタル化推進のボトルネックになっている問題を深掘りしようと思います。
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