経験に勝るもの無し 初舞台編② (全③)
その3. 本番当日(ゲネプロ〜本番直前)
当日お昼過ぎにゲネプロがあり、私の出番は20時近く。それまで自主練習したり、ご飯を食べたり、差し入れを頂いたりと長い待ち時間を過ごす。
楽屋ではみんな和気あいあいだったが、私個人は精神的に「生殺し」の状態だった。自主練をやりすぎてもくたくたになってしまうし、あれこれ考えすぎて、がんじがらめになりかねないので、悶々としながら「もう早く踊らせてくれ!」と心で叫んでいた。
本番まであと3日とまで近づいた頃に掲げた目標は、「萎縮して小さく踊るよりは、失敗してもいいから大きく踊る」だった。しかし、大きく踊ると息切れして最後まで大きく踊れるかわからない。大きく踊るとリハの段階ではぜーはー云っていた。そのためにジムで筋トレもしていたが、本番は結局どの程度の大きさで踊るか。
ゲネプロで大きく踊ることを試してみた。思ったよりは息は切れなかったが、周囲と合わせる意識がすっとんでしまった。でもここでの失敗は本番に活かされることになる。
何気にメイクの下手さも落ち込んだ。
まずお借りしたドーランの使い方が間違っていたらしく、メンバーに教えてもらった。
日頃から5分程度のメイクしかしてないので、アイシャドウをのせることすら下手で、丁寧にアイラインを引くなどの根気が無い。手を掛けることができない。
メイクの上手なメンバーがやってくれると云ってくれたが、盛った自分の顔が怖くなる気がして、お願いできなかった。仕舞いにはメイクが面倒になり、やっとこさアイラインを引いて何とか周囲の了承をもらった。もう下手以前の、根気の無さ。メンバーのメイクは盛りながらも、元々のお顔と一体感があり、さすがだなと感心。
その4. 舞台に立ったら
20時近くになり、ピリピリもピークになった頃、順番が来て、舞台袖でスタンバイ。やっと悶々から解放されるのが嬉しくもあり、緊張でドキドキだし、と複雑な心境。もう天に任せるしかない。
ステージに出て行く...
4曲分の一部分をつなげてメドレーにした構成になっている、全体で約5分の曲。
暗転の中、4列で並び、私は一番後ろのセンターに立つところから始まる。
全体を見渡す。
「意外とこじんまりしてるんだよなぁ」
実際のステージに立つのは本番含め3回目だが、大きいホールだと散々聞いていたわりに、ステージから客席を見渡すとそれほど大きく感じない。
照明が当たる。1曲目始まる。
スタートはまあまあ。ダブルを回るところは回り終わったときに正面にきちっと戻る意識を強くしっかり持たなくてはいけない。あとは大きく。
お客さんが見える。お客さんに観られてると考えても、意外にもそんなに萎縮しなかった。でもほんの少し周囲が見える程度の客観視が出来つつ、あとは大きく動く、間違えないように踊るのでいっぱいいっぱい。
1曲ずつ踊るたびにフォーメーションが変わり小走りに移動するのだが、その度に「あぁ、この曲はもう終わりなんだ」とよぎる。
2曲目。ペアを組んで踊る。叙情的な曲。相方と作り上げるように、メロディより動きが先行しないように、その中で自分なりの表現を意識した。
3曲目は私がステージの一番手前、端だが、一番お客さんに近い距離で踊る。そこでも意外に冷静だった。というか踊ることに集中しながらも
「観てくれてる人、どうか楽しんで欲しい。楽しんでくれてますか」
と想いを込めて踊った。
最後4曲目。開放感のある歌詞とメロディーで、最後にふさわしい、踊り手も最も盛り上がる曲。この曲こそ、一番大きく、楽しんで、のびのびと、残ってる力全部使いきっちゃえ!でも絶対に先走るな、メロディにぴったり動きを合わせろ!と言い聞かせて踊る。
終わった...
つづく
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