デジタルのメイン機材は変遷した
【自分史の切片としてのカメラ機材 #6 】
2005年前後だったか。仕事上でおつき合いがあったオリンパス社の決算説明会を見学させていただいた。そこに登壇したいまは被告人となったK社長が「素晴らしい画期的な技術による製品を開発しているから期待してほしい」という趣旨の発言をしていた。当時も低迷していたオリンパスのカメラ事業。アナリストや機関投資家に向けて大風呂敷を広げているのだろうと思っていたのだが、それがどうやら2008年に発表されたマイクロフォーサーズのことだったようだ。ミラーレスに適した規格、小さくて高性能なカメラが実現できるという。
これはいいかもしれない。デジタルはセンサーサイズだけで性能が決まるわけではない。技術はどんどん進歩するから小さいセンサーサイズでも高画質は得られるようになるはずだ。
年齢を重ねるにつれ、重いニコンの一眼レフがそれこそ重荷になっていた。改良版が出て早くも旧式になってしまったD600から心が離れて、2013年に発売されたオリンパスのミラーレスOM-D E-M1をメイン機にすることに決めた。ニコンのデジタル一眼レフは手許から1台もなくなった。
しかし、ニコンFマウントの大三元レンズは売らずに残しておいた。いずれニコンからも軽いミラーレスが発売されるだろう。そのときもニコンはFマウントを見限ることはないはずだ。いずれまた使える日が来るだろう。ニコンに未練が残っていた。
ニコンがミラーレスの開発にまごまごしているうちに数年が経過。ようやくニコンから本格的なミラーレスのZシリーズが発売されたのは2018年。しかしすぐには手を出さない。Z7もZ6もどうせすぐに改良版が出る。もう「痛い目」には遭いたくない。
オリンパスOM-D E-M1とその改良機のMarkⅡは気合いの入ったカメラだ。機能も十分。レンズの性能にも文句はないが、それ以上に撮影に持ち出すのにちょうどよい焦点距離のズームをリリースしてくる。このあたりはなかなかうまい。
スペインやフランスへの海外旅行にも連れて行った。バルセロナの街並みや火事になる前のノートルダムのミサなどを美しい画像で残してくれた。しかし、旅行へ持って行って再認識したことがある。思ったほど軽量ではない。それほど小型でもない。複数の旅行者から「立派なカメラですね」と言われたところをみると、存在感も決して小さくはない。
確かにスペックにも不足はないし、グループ展で好評を得た写真も撮れたのだが、何かもう一つグッと感動する画が撮れないような気もした。霞のような不満が心の中に漂い出した。思い込みに過ぎない。まったく科学的根拠はない。結局は腕の問題だろうが。
写真仲間でZ6の使用者が増えて行く。それをよそ目にOM-D E-M1 MarkⅡをメインに使い続けた。たまに仕事で撮影するときもこれで何も不足はなかった。
その2年後、予想通り改良型のZ6Ⅱが発売された。手にしてみると想像以上に軽く感じた。スペックではOM-D E-M1Ⅱの方が軽量なのだが、Z6Ⅱの方がずっしり感が少ない。感覚的にも小さく感じる。完成度は高いと判断した。半年ほど様子を見て、OM-D E-M1シリーズからZ6Ⅱへ乗り換えることにした。これが最後のメイン機になるだろうという予感とともに。
F2.8のいわゆる大三元に色気を出さず、F4通しのズームレンズで十分と見切ることにした。それでも得られる画像はm4/3より分がある。ボケを意識して撮影することもあるが、ボケ中心の写真はほとんど撮らない。明るさとボケがほしければ単焦点レンズを手に入れればよい。なにより軽さだ。軽ければ撮影に持ち出す機会が増える。それが最も重要なポイントだと考えた。
誤算もあった。Fマウントレンズが使えるアダプターFTZだ。機能は完璧に近いが、これにFマウントの大三元などを装着するとアダプターの分も加わって実に重い。仕事なら使うかもしれないが、趣味として持ち歩きたくなる重量ではない。
思い切ってFマウントレンズ数本を、OM-D E-M1、MarkⅡとともに売却してしまった。数年間、防湿キャビネットで冬眠させていたのは、なんの意味もなかった。
マイクロフォーサーズとはほぼ5年のおつき合いだった。しかし、まだ1台残してある。パナソニックのGM5。小さい、軽い、EVFもある。どこへでも持って出られる。m4/3はこうでなければならない。フルサイズのミラーレスに対抗しようと優れた機能を満載しても、センサーサイズの差は埋めようがなく、カメラは大きく重くなる一方だ。それならm4/3である必然性がないではないか。
GM5とセットの12-32mmがあればコンデジの出番はない。さらにレンズが交換できる。そのメリットを活かすべく、オリンパスの軽い30mmマクロレンズを残しておいた。もう1本、ライカ銘のパナソニック製SUMMILUX15mm F1.7。評判はあまり聞かないが、このレンズのシャープさと色のりのよさは捨てがたい。
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