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3月10日:おおみそか。これほどオゴオゴがバリの人に大切にされる理由を考えてみた<バリ島が教えてくれた365個の幸せ>
今日は、バリ島の大晦日だ。バリ島の新年「ニュピ」を明日に控え、バリの人たちはいろんな意味で佳境を迎えている。
「いろんな意味」とは。
「トリ・ヒタ・カラナ」というバリ島の哲学は、このニュピにも色濃く現れる。「神と人」「人と人」「人と自然」の調和を重視することで、人々は幸せに過ごし喜びを感じることができるという考えだ。ニュピを迎えることで、バリは「神と人」「人と人」「人と自然」の3つの軸でリセットされる。
神と人:海や湖で、聖水で体を浄化する(メラスティ。新年の二日前)
人と人:1ヶ月かけて村総出でオゴオゴ(悪霊のおみこし)を作る。子どもも大人も、顔を合わせて、自分たちの持つアイデアと技術をオゴオゴに全力で注ぐ(新年の前日)
自然と人:家とお寺でセレモニーをおこなう。村をみんなでパレードをする。1日人間の営みを止める(新年の当日)
こうして、人も神も自然も、新しい性格になるのだ。
この中で、オゴオゴは1980年に正式に始まったので、歴史は実は新しい。でも、バリの人はオゴオゴを大切にしている。それには理由がある。
オゴオゴとは、悪霊の人形だ。バリの人は、大晦日に大きな音を立てて、このオゴオゴのお神輿を担ぎ、村を練り歩く。そうやって、悪霊を祓うのだ。
アーティストは、このオゴオゴに1年間、愛と情熱を注ぐ。いかに不可能を可能にするか。どんなストーリーをこめるか。いかに派手にみせるか。アイデアを考え、技術を磨き、創意工夫を鍛錬する。最近では、電動で動いたりけむりが出たり、ピカピカ光るものもある。
子どもたちは、夢中になっている大人の背中を見ながら、1ヶ月かけてオゴオゴづくりを手伝う。大人は、全力でサポートをする。そうやって、若きアーティストたちも情熱とテクニックを育くむ。そして、村全ての人が、みんな心をひとつにして、オゴオゴを迎える。
オゴオゴを通して、アーティストたちは「タクス」と呼ばれる神から与えられる力強い魂を身につけ、個性を磨く。アートを大事にするバリの人にとって、オゴオゴは大事な非日常。「ハレ」の行事なのだ。
切ってもきれない「人」と「自然」と「神」。その3つともがリセットされるためには、これぐらい大掛かりな「ハレ」が絶対に必要だ、とバリの人は考えているのかもしれない。
「ケ」のためのエネルギーを蓄えるためにも。
「トリ・ヒタ・カラナ」は壮大だ。
※今回ニュピとオゴオゴの取材にあたって、AYANA RESORT BALIのSAKA MUSEUMを訪問させてもらいました。映像やオゴオゴが印象的で、とても勉強になりました。ご協力ありがとうございました。
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バリ島に住んで5年の月日が経ちました。コロナ禍で観光経済が壊滅したり、過剰開発で環境が破壊されたりひどい渋滞が起こったり。そんな現状を目の当たりにしながらも、バリ島に暮らす人々は、いつも明るく笑顔で、とにかく幸せそう。
-嫌なことが起こったのは悪霊のせい
-人と神様と自然の調和が大切
-貯金はしない
なんでだろう?と探っているうちに、バリ島に根付く「トリ・ヒタ・カラナ」という哲学に辿り着きました。「神と人」「人と人」「人と自然」の調和を重視することで、人々は幸せに過ごし喜びを感じることができるという考え方です。
その哲学がしっかり根付いているバリ島の日常にこそ、幸せのヒントたちが落ちています。ここに住まわせてもらっている議事録もかねて、バリ島が教えてくれた365個の幸せを綴っていこうと思います。