自分を居心地よくさせられるのは自分
フランス暮らしでは、理不尽なことがとても多い。いちいち関わっていたら一日がそれだけで終わってしまうんじゃないかと思えるぐらいだから、気にせず聞き流す術も身につけているけれど、たまに白黒つけてストレスをためないようにもしている。
何かのトラブルで、わざとじゃないとか自分のせいではないと言い逃れ…というよりは開き直りが圧倒的に多いから。
例えば、急ブレーキをかけたバスで転倒して怪我をしても、スーパーマーケットで価格やポイントにエラーがあっても、顧客に謝罪どころか、ややもすると何もなかったことにされてしまったりもする。
大規模スーパーでオンラインが故障していて、クレジットカードが使えなかったどころか、15ユーロのクーポン券が発行されなくて、しかも、受付の責任者は、できないものはできないと怒鳴り散らされたことがあった。
翌週、この件はどうなったのか立ち寄ったら、信じられない横柄な態度だったので、お客様相談センターに連絡した。翌月になっても連絡がないので、もう一度電話した。
レシートやクーポン券を送るように言われたので、メール添付したけれど、何の音沙汰もないまま…気がついたら年を越した。
徒歩圏内には大中小合わせて7つのスーパーマーケットがあるし、そこに行かなくても事足りるので、そのままにしていたけれど、やたらとクーポンサービスの案内が来るので、面倒なので解約しようと思ったら、お客様相談センターに連絡しないといけないとわかった。それで、いきさつを話したところ、再度店に確認することになり、4日後、店の責任者の秘書から電話があった。
「クレームの申告が伝わったので15€のクーポン券を受付に置いておくので何時頃来れますか?」とのこと。
郵送だと紛失の恐れがあるから(これはフランスでは常識)と。
でも、私が筋を通したかったのは、15ユーロのクーポン券ではなくて、受付の責任者の人を人とも思わない態度のことで、また何かエラーがあってあの人間と接するのを避けたくて、あなたの店に行かなくなってもう5ヶ月ですと淡々と話した。
あんな人間から金券を受け取るなんて屈辱的だから行きたくないと伝えた。
それでは…と、彼女が受付に来て手渡すから、来店したら呼び出してほしいということになった。
昨日午後、いつでも良いと言われたので、空いているだろう時間を選んで行った。受付の責任者は不在で、別の女性だったけれど「約束があるからわたしが来たのを伝えてほしい」と言ったところ、「何の用事で?」(「は?」でしょう?)
「あなたに関係ないでしょう。私の名前を伝えてくれればわかるから」
私にはけんもほろろな対応のその受付女性は、奥の男性に伝えて同意を得てから、猫なで声で「お忙しいところを申し訳ありません。約束があると言ってきてる人がいるんですが」と私の名前を告げた。
途端に、うってかわって丁寧になって「すぐ来るそうですから、少々お待ちになってください」(本当にドラマチックな豹変ぶりで映画みたいだ、いや映画がとことんリアルなのかもと思う)
謝罪を繰り返しながらクーポンを手渡してくれた秘書の女性は、こちらも彼女の非ではないのに丁寧な対応してくれたことに感謝を伝え、水に流すではないけれど喉を潤して忘れてしまおうと、平日の晩ごはんに開けるにはちょっといい赤ワインを買ってきた。
自分の居場所は見つけるものではなく、気がついたらそこにいたとか、他に選択肢がないからということも少なくないはずで…居心地良くするのも我慢するのも自分次第。
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