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ヒアリングという間違った注文の仕方
注文住宅を計画する際、建築会社は「ヒアリングをさせてください」という流れになることが一般的です。この会話自体はごく普通のものであり、特に問題があるわけではありません。しかし、私個人的にはこのアプローチに少し違和感を覚えるのです。あくまで私の主観的な見解ですので、軽く受け止めていただければと思います。
ヒアリングの前提に潜む問題
「ヒアリングをする」という行為は、お客様が間違いのない明確な要望を持っていることを前提としています。しかし、多くの方にとって注文住宅は初めての経験です。そのため、正確に建築会社や設計事務所に要望を伝えること自体が非常に難しい作業となります。
注文住宅は、既製品を選ぶのとは違い、自分たちのライフスタイルや価値観を反映させることが求められます。しかし、初めての経験でそれを正しく言語化するのは至難の業です。結果として、顕在化した要望に基づいて設計が進められますが、それが本当に最適な住まいかどうかは別問題です。
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潜在ニーズと固定概念の打破
顕在化した要望だけでなく、潜在的なニーズに目を向けることが重要です。たとえば、「広いリビングが欲しい」という要望の裏には、「家族とゆっくり過ごす時間を大切にしたい」という思いが隠れているかもしれません。このような本質的なニーズに気づかずに設計を進めると、完成した住まいがどこか物足りないものになってしまうことがあります。
固定概念や既成概念に囚われない柔軟な発想が、理想の住まいづくりには欠かせません。注文住宅は単なる箱づくりではなく、住む人のライフスタイルや価値観を形にするプロジェクトなのです。
「ヒアリング」ではなく「ブレインストーミング」
個人的には、「ヒアリング」という一方通行の情報収集ではなく、「ブレインストーミング」のような双方向のコミュニケーションが理想だと考えています。建築家とお施主様が対話を重ね、お互いに気づきや発見を共有することで、住まいの形が自然に見えてくるのです。
例えば、暮らしに対する価値観や、快適だと感じる時間の過ごし方、将来的な子育て環境など、多角的な視点から話し合うことが重要です。家の広さや間取りの話ではなく、「新しい住まいでどのような時間を過ごしたいのか」「将来どのような家族の形が理想なのか」といったイメージを共有することが、理想の住まいづくりの第一歩です。
住まいの形は自然に決まる
このような対話を通じて、住まいの形は自然に決まっていきます。具体的な要望を伝えることに躍起になるのではなく、理想の暮らしについて考えることが重要です。その結果、広さや間取りといった物理的な要素も、自ずと最適な形に収まるのです。
注文住宅を検討されている皆様には、「正しく要望を伝えなければならない」というプレッシャーから解放されてほしいと思います。理想の住まいづくりは、完璧な要望を伝えることから始まるのではなく、建築家と共に理想の暮らしを見つけ出すプロセスから始まるのです。
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注文住宅における「ヒアリング」というアプローチは、お客様が明確な要望を持っていることを前提としています。しかし、多くの方にとって注文住宅は初めての経験であり、正確に要望を伝えることは容易ではありません。
そこで重要なのは、「ヒアリング」ではなく「ブレインストーミング」のような双方向の対話です。暮らしに対する価値観や理想の時間の過ごし方を共有することで、住まいの形は自然に決まっていきます。
住宅購入を検討されている皆様には、この視点を持って理想の住まいづくりに臨んでいただきたいと思います。理想の住まいは、建築家と共に見つけ出すプロセスの中で生まれるのです。