
拝啓 東洋経済オンラインにキャリア相談した40代バイトのHYさんへ
こんな記事を見つけました。東洋経済オンラインの記事、キャリア相談です。
こんにちは。就職氷河期時代に就活に挫折し、現在に至るまでバイト生活でしのいでいる40代中ごろの者です。
私は何度も正社員になろうと頑張りましたが、もう年齢を考えても、無理なのではと最近わかりつつある身です。
田舎育ちですが、大学進学とともに東京に出てきました。当時は皆と同じように東京で仕事をして、家を建て、結婚して、と考えていましたが、全部実現できていません。最近の学生は順調に就職できているとのことで羨ましい限りですし、時代が違うだけでやっぱり損したという気持ちも昔はありました。
以前は普通の生活すらできないのは政府や景気が悪いとか仲間内で酒を飲んで話していましたが、もう大半は諦めモードに入っています。それでも生きていくうえで何か希望を見出したいのですが、どこからどう考えればよいのかがわかりません。この先、どういった考えやスタンスで生活し、仕事をしていくのがよいのでしょうか?
HY フリーター
これに対し、回答者は「他人との比較ではなく自分の幸せを掴むべきだ」というテーマで、このように締めくくりました。
自分オリジナルの人生論や生き方をキチンと自分の中で整理し、理解し、そのうえで生きるべし、ということなのです。
HYさんもあるハズのない普通や他人との比較をベースに自分の人生を考えるのではなく、今までの人生経験を通じて培ってきた考えや知見を総動員して、自分自身をベースに、キチンと将来を考えることが大切です。
確かにその通りです。自分の幸せは自分で決めるべきで、隣の青い芝生を眼前に入れてはいけない。もし私がこのような相談を受けたら、きっと同じような回答になるでしょう。「優しいモード」の私だったら。
HYさんの内容を見て、「あー大変だなぁ」「可哀想だなぁ」「早く正社員になれるように頑張ってほしいよね」という感想をもったあなたもきっと優しいのでしょう。
でも、質問を読む限り「優しいモード」ではいるのはムリです。それは、もっと過酷な環境で生き抜いてきた同年代がたくさんいると知っているから。私もそんな1人です。
HYさんはきっと「誰かが自分を幸せにしてくれるはず」という概念で生きてきたのでしょう。相談の文書から、それはひしひしと伝わります。大学に入れば就職できる、就職できれば結婚できる、結婚できれば家が買える、子どもが出来れば出世して給料が上がる etc.
こんな人生を望んでいたんだと思います。いまの日本社会における、記事にも記されていた「普通の人生」。私も含めた就職氷河期世代がこうした人生を送るのが難しかったのは、確かに時代のイタズラだったのかもしれません。
でも、HYさんは40代中ごろ。同世代なので、同じ時代を生きてきたはずです。
私は高校卒業後、1997年から2006年までフリーター生活でした。フリーターではなくなったのは、放送作家事務所に入って仕事が入り、アルバイト生活から抜け出したときと定義します。
フリーター時代は合計20種類ほどのアルバイトをしました。高校生から続けた「よろこんでいらっしゃいませ!」と挨拶するマニュアルがあったチェーン居酒屋を筆頭に、テレビ番組の美術製作会社でセット作り、トーハンの工場で各書店向けに配送する本を段ボール箱に流れ作業で詰め続ける作業、イベント会場の交通整理、地下鉄浅草駅近くで深夜の工事現場での肉体労働、新宿ルミネの従業員ロッカーを30人くらいで全て入れ替える23〜6時の肉体労働。バイト仲間から治験のバイトに誘われたけど、なんか怖そうだったから断ったことを思い出しました。
まだ20代前半だったし、なによりメジャーデビューを夢見ての未来や希望があったので、この生活自体に苦はありませんでした。苦どころか毎日楽しく生活していたくらいです。
結局、その夢は叶わず、26歳のときによしもとNSCの作家コースに入って、バイトしながら通って、卒業して半年後くらいにテレビ局の報道スタッフに週5日常駐することになり、そこから放送作家としてのキャリアが始まりました。そこからはバラエティ番組のリサーチ、クイズ番組の問題作成などちょっとずつ仕事を振ってもらえるようになりました。
フリーター時代も、放送作家時代も、場面場面でしんどいこともあったし、理不尽な扱いや言動もされました。フリーター時代、ある居酒屋の店長とソリが合わず、クソどうでもいいことばかりで私にいちいち釘を刺され、私の何が気に入らないのかも教えてくれない。「畜生この野郎」と腸が煮えくりかえる気持ちを抱いていました。
でも、なりたい自分像があったし、それを叶えるまでは耐え忍ばないといけない。そんな覚悟でやってきました。だから、相談内容を見ると、HYさんに優し言葉を投げかけようと思えないんです。
だって、自分の人生を他人に切り拓いてもらおうとしているから。
-------------------------
未来に希望が持てず、死んだ魚のような目をしながら満員電車にベッドタウンから都会に揺られて仕事に行き、9ー17時の仕事をこなして、また満員電車に乗ってぎゅうぎゅうになりながらローソンで350ミリと500ミリのストロング缶と柿ピーとからあげクンを買って、家に帰って15秒後に「プシュ!」と缶を開けた右手でテレビのリモコンに手を伸ばし、ひな壇芸人勢揃いの番組を見て、人気上昇中のグラドルのアシスタントを見ながら「こんな子とやりてぇな…」と一気に500ミリのストロング缶を飲み干す。酒飲みながらタバコはやっぱうめぇなぁ。ポチポチイジるスマホのパズルゲームの画面がタバコの煙でモクモクと。
HYさんをはじめ、「もっと幸せな人生があったはずだ」「人生こんなはずじゃなかった」と嘆いている方々は上記のようなルーティンで生活しているかもしれません。
こういう人たちの典型的思考は「他責」です。圧倒的なまでの他責。政府のせい、景気のせい、職場のせい、誰かのせい、あらゆる他責を念じながら生きている。
でもさ、他責でもさ、それはさ、あなたが選んだ人生だよね?40歳も過ぎてさ、他人に人生の生き方聞くなよ。相談するメールを書く時間があるならさ、昨日より今日の自分が好きと言えるような行動を何でもいいから起こせよ。あ、でも相談メールを送ったという自分は「素敵だ」と褒めてもいいけどさ。
俺はさ、なりたい自分を求めていろいろ動いてきたよ。NSCを出たからって、よしもとは放送作家を雇う仕組みじゃなかったから、「放送作家 募集」で検索しまくって、5つほどの募集を見つけて片っ端から応募したんだよ。
その中で一番ひどかったのは「大御所放送作家の弟子」。名前は忘れたけど、そいつの鞄持ちでずっとつきっきりで月に3万円。面談には俺の他に同い年くらいの男性がいて、面談後に「なんか、ビビッときたので弟子になろうと思いますけど、木村さんはどうします?」と聞かれたので、「いや、つきっきりで月3万円なんて、バイトも出来ないし、ムリッスよ」と言って、弟子入りは蹴った。その後、その男性がどうなったかはわからんが、彼は幸せだろうか。
いくつか問い合わせをした中で、その後に所属することになる事務所の対応が一番紳士的だったので、その事務所を選んだ。私のマネジメントを巡って事務所と何悶着かはあったけど、育ててもらった事に感謝している。
-------------------------
そう、感謝。HYさん的な人って、人生にどれだけ感謝の数を重ねているのだろう?恨みと感謝、自分の人生を振り返ってみて、恨み事が多い人はこれからもずっとなりたい人生は歩めないよ。
生き様は顔に出る。言動に出る。「正社員になろうと何度も頑張ってきた」っていうけどさ、頑張ってきたかを判断するのは基本的に他人だよ。なりたい自分になろうと必死にもがく行動をした自分は褒めるのはいいけど、それはきょう一日が終わって眠りにつく瞬間だけ。
どんなスタンスで生活していけばいいかって?簡単だ。感謝の数を増やせばいい。
相談を受けて「他人との比較ではなく自分の幸せを掴むべきだ」と回答をもらったじゃん、すぐに感謝のメールは出した?仕事とは言え、優しい回答を頂いたんだから、感謝はしよう。
飲食店で店員さんと接するとき、口癖のように「ありがとうございます」と言ってみる。コンビニでお会計した後、商品を受け取ったら「ありがとうございます」と言ってみる。「ありがとう」はぶっきらぼうな印象だから、「ございます」は必須ね。
工事現場。誘導灯を振りながら歩く場所を示してくれる作業員さん、その人と目を合わせて「ありがとうございます」と言って通ろう。
「何言ってんだこいつ?」と思っている?だまされたと思ってやってみ。
ありがとうって言える自分、素敵だと思わない?
あと、笑うこと。「笑う」は人間にしかない特権。お笑いでも何でもいいから、これを見たら笑えるコンテンツは持っておこう。できれば今日会う人たちを笑わせよう。
この前、メンタルかなり持って行かれる出来事があって、友人女性にそのことを電話で一報を伝えたのよ。そしたら「木村さん、そんな出来事を笑いながら話すのはさすがに良くない」と言われた。それはそれで笑った。っていうくらい笑うクセをつけよう。
-------------------------
そもそも僕は、就職氷河期というレールにすら乗らない人生を歩んできました。20代や30代は特に気にもとめなかったけど、40代になって、「独身中年の哀愁」的な記事が目にするうち、「この世代って大変なんだ」とようやく気づきました。
僕自身はいわゆる「成功した人」なんて、ホントにこれっぽっちも思ってないけど、HYさんのように、彼らなりに必死になって生きている同世代を見るたび「マジできばってくれ。俺も気張るから」って思うんです。
ファミコンで小学生時代を過ごし、600万部超えの週刊少年ジャンプの発売日を毎週心待ちにし、月9や木10のフジテレビの連ドラに大人たちの理想と幻想とみた世代じゃないですか。地域は違えど、同じ時代を生き抜いてきた同志じゃないですか。
これからの時代、もう他責の人生は詰み人生まっしぐらです。私も自戒の念を込めて、自分の責任を受け入れ続けています。
生きるのはしんどい。でも、それが人生だもの。人間として生まれてしまったんだから、しゃーない。もっと同じ時代を生き抜こうぜ。
最後まで読んでいただき感謝です。ほんの少しでも、心が動いた、ざわついたなどの揺らぎを感じてくださったら、スキを押してくださると嬉しいです。また、ツイッターでの拡散も大歓迎です!
また、2023年5月分から投げ銭記事にしました。私が好きな缶コーヒー1本をあげてもいいよという心優しい方の投げ銭もお待ちしております!
ここから先は
¥ 150
暑苦しい文章、たくさん書いていきますので、ぜひサポートを!!