輝きを追いかけて旅に出る
君の輝きに照らされていつまで覚めない夢を見るのか。
朝4時。
新幹線に乗るために身体を起こす。意識にスイッチを入れる。このために用意したワンピース。歳相応に小奇麗に見えるコスメとアクセサリー。コンテンツに寄せたネイルチップ。
全部、全部装備して家を出る。
もう外は明るくて、明け方の風は心地良い。
たどり着くまで『便秘でお腹出てるの誤魔化せてるかな……。なんかこの服、失敗したかも……化粧ノリ悪……ストレスじゃん、職場許さない……』ずっと嫌なことを考えている。気づいたら意識が落ちていた。
今回は、一泊。
土曜日は某イベントの一部。
二部は当たらなかった。どうやらまあまあな申し込みの多さに、両部当たる方が希という話だった。日曜日は推し(便宜上)が主人公を務めるアニメのラジオ番組の公開録音。当たると思っていなかったので嬉しかった。
開催地に着く。初めての土地。初めての雰囲気。浮足立つ足。イベントは終始楽しかった。一緒に出演している方も好きだから余計。パーソナルなことを知りたいわけではない。ここに至るまでの破片を拾うような、そんな気持ち。このイベントはお渡し会がある。宛名とサインの入ったブロマイドを手渡される。その時に気持ちを伝えてもいいし、質問をしてもいい。でも、話したいことはない。伝えたいこともない。だから困る。もう困って困って『世界一かっこいいです』としか言わなくなった。世界一って、いつか変わるけど、今の世界一かっこいい(特に顔)は、推し(便宜上)しかいない。
今回のイベントはブロマイドとパンフレットがあった。
写真が上がった時から顔の良さに破顔していたのだが、いざ手元に置くと良すぎてちょっと拝みそうになった。
見た目に対して『国が傾く』という表現を使っている人がいる。推し(便宜上)は世が世なら見た目の良さで国が一つ二つ建ちそうだと思う。
ホテルに着き、キラキラな硬質カードケースにブロマイドを入れた。キラキラが似合う君は誰よりも光っている。
大阪もなかなかに楽しんだ。
マンゲキに行けたから、次は花月で新喜劇を見たい。
日曜日。
一年ぶりのちゃやまち推しフェスティバル。活気があって良い。去年は早い時間帯すぎて、活気を感じられずに終わった。今年は推し(便宜上)が主役を務めるアニメのラジオの公録。アニメになぞらえた料理を食べながらの番組。大きな水餃子を一口。頬をパンパンにする姿。今年に入って2回ももりもり食べる姿を見ている。たくさん食べる姿が見られるだけで嬉しい。終わりのBGMがかかる。「20秒ください!」そう言ってスープをズッと飲み込む。あんなに話していたのに、どこでそんなに食べていたのか。ずっと見ていたはずなのにわからなかった。
いつものイベントだと男女比は圧倒的に女性が多い。この作品に関わる現場に行くと男の人が多くてびっくりする。良いことだな〜と思うし、もう気が迷うのなんてやめたらいいのにと思う。
遠征って楽しい。その土地、その瞬間でしか味わえない空気が多い。行ったことない場所にも行ける。でも、いつも帰ってくると虚しくもなる。推し(便宜上)は輝いているのに、輝いているのに。旅の終わりは、この迷いの終わりは、執着の終わりは、いつ来るのだろうか。嫌いじゃないまま、終わりにしたい。楽しいまま終われる旅を。