聞こえの改善 補聴器の選び方と慣れるまでの道のり
「最近、テレビの音量が大きくなった気がする」「会話が聞き取りにくい」「人の声がモヤモヤして聞こえる」
このような悩みをお持ちの方、もしかしたら聴力低下のサインなのかもしれません。加齢とともに聴力は徐々に衰えていくものですが、適切な対処をすることで、快適な生活を取り戻せる可能性があります。
この記事では、医療系任意団体「君がため」の言語聴覚士(ST)が専門的な視点から、加齢性難聴と聴力低下のメカニズムについてわかりやすく解説し、必要になる補聴器の選び方と慣れるまでの道のりについて詳しく解説します。
聴力低下に悩むあなたや、家族のために、ぜひこの記事を参考にしてください。
加齢性難聴とは?特徴と症状
加齢性難聴は、年を重ねるにつれて少しずつ聞こえが悪くなっていく状態のことです。
耳の中にある、音を感じ取る小さな細胞が徐々に弱くなっていくのが主な原因です。多くの場合、高い音から聞こえにくくなり始めます。
例えば、「さ」「た」「か」などの子音の区別が難しくなったり、孫の声(こどもの声)が聞き取りにくくなったりすることなどですね。
聴力低下の影響
次に聴力低下の影響についてまとめました。聴力低下が進行すると、日常生活に多くの支障をきたす可能性があります。
例えば
車や自転車が近づく音に気づくことができず、転倒や交通事故に巻き込まれる。
火事や災害時、火災報知器や緊急時の警報音を聞き逃してしまい逃げ遅れる。
電話やインターホンの呼び出し音に気づきにくい。
不審者の侵入を許してしまう。
安全な生活を送る上で支障をきたす場合が増える可能性があります。
また、以下のような心当たりはありませんか?
家族や友人との会話が難しくなり、社会的な孤立感を感じる。
会話への参加が億劫になる
集中力が低下する
疲労感が増す
精神的なストレスを感じる
誤解やトラブルが発生しやすくなる
コミュニケーションがスムーズに送れなくなることで、人との交流自体が減ってしまい外出頻度の減少や認知機能の低下を引き起こすことも考えられます。
そのため、聴力低下を決して軽視しないでキチンと準備・対策をすることが大切です。
補聴器の種類と特徴
補聴器は、大きく分けて耳かけ型、耳穴型、ポケット型があります。また、最近のデジタル補聴器は、高度な機能を備えています。例えば、周囲の騒音を抑えて会話を聞き取りやすくする機能や、音の大きさを自動調整する機能などがあります。
耳かけ型
従来からある一般的なタイプ。耳にかけたフレームにスピーカーとマイクが装着されています。小型で扱いやすく、様々な機能を備えています。
耳穴型
耳の穴に直接装着するタイプ。目立ちにくく、装着感が良いのが特徴です。小型化が進み、高性能なモデルも登場しています。
ポケット型
ポケットや衣服に収納して使用するタイプ。外部のマイクで音を拾い、スピーカーから耳に音を届けます。補聴器の中でも最も大きいタイプですが、機能が充実している場合があります。
補聴器選びのポイント3つ
①耳鼻咽喉科で聴力検査を受けましょう。
補聴器を選ぶ際は、まず自分の聴力状態を正確に把握することが重要です。
②自分のライフスタイルに合わせた形状を選びましょう。
例えば、メガネをかけている方は耳かけ型が適している場合があります。スポーツや外出が多い方は耐久性が高く、汗や埃に強い耳かけ型が適しています。
また、手先の器用さや見た目の好みなども考慮に入れると良いでしょう。
③補聴器を購入する前に、必ず試聴をしましょう。
これは車を買う前に試乗するのと同じです。試聴では、様々な環境で補聴器を使用し、自分に合っているかを確認します。
購入後は、フィッティング(調整)が重要です。これは補聴器を自分の耳に合わせて調整する過程です。初期の調整だけでなく、定期的な調整も必要です。聴力や生活環境の変化に合わせて、3〜6ヶ月ごとに調整することをお勧めします。
補聴器相談医の存在も重要です。専門的な知識を持つ医師のアドバイスを受けることで、より適切な補聴器を選ぶことができます。
補聴器への慣れ方
補聴器の使用には慣れが必要です。最初は1日1〜2時間から始め、徐々に使用時間を増やしていきましょう。脳が新しい音の入力に順応するには時間がかかります。
初期には違和感を感じることがありますが、これは正常な反応です。例えば、自分の声が普段と違って聞こえたり、周囲の音が大きく感じたりすることがあります。
これらの違和感は、使用を続けるうちに徐々に解消されていきます。
また補聴器を急に使い始めると、脳は新しい音環境に順応しようとします。この順応には人によって時間がかかるものなので、無理は禁物です。
やがて、徐々に音声を聞き取りやすくなり、会話への参加や生活の質が向上する効果が期待できます。
補聴器のメンテナンス
補聴器は精密機器です。毎日の簡単なお手入れが大切です。就寝前に柔らかい布で拭いたり、除湿ケースに保管したりすることで、長く良好な状態を保つことができます。
また、6ヶ月〜1年に一度は専門店でのチェックを受けることをお勧めします。
補聴器と集音器の違いとは?
補聴器と集音器は、どちらも聞こえに関する問題を解決するための機器ですが、その役割や機能、安全性、個別対応、アフターサポートにおいて大きく異なります。
見た目は似ているため、混同されがちですが、それぞれの特徴を理解することで適切な選択ができます。ここでは、補聴器と集音器の違いについて詳しく解説します。
違い1.機能の違い
補聴器と集音器の最も大きな違いは、その機能にあります。補聴器は、使用している人の聴力に合わせて「聞こえにくい音」だけを増幅し、聞こえる音はそのままにするように設計されています。
これにより、日常生活の中での会話や音を自然な形で聴取することができます。
例えば、電話の着信音や女性の声が聞こえにくいといった状況では、それに対応した音域を適切に増幅します。補聴器には、大きな音を必要以上に増幅しないように制限をかける機能もあり、過度な音による不快感を防ぎます。
一方、集音器は、すべての音を一律に大きくするため、周囲の雑音も一緒に増幅してしまいます。
これにより、大きな音がさらに大きくなることで、騒音がうるさく感じられることや、言葉が聞き取りにくくなることがあります。
日本聴覚医学会でも、集音器は会話を聞くための機器ではなく、難聴者が会話を聞くためには補聴器を使用するべきとされています。
違い2.安全性の違い
補聴器は、医療機器として厚生労働省から正式に認定された製品です。薬機法で定められた管理医療機器として、補聴器はその効果や安全性について厳格な基準をクリアしています。
製造や販売に関しても、認定を受けた企業のみが行うことができます。これにより、消費者は安心して補聴器を利用できる反面、値段は平均10~30万円と高額な場合が多くなります。
一方、集音器は一般家電製品として販売されています。そのため、通販や家電量販店で手軽で比較的安価に購入できる反面、医療機器としての基準を満たしているわけではありません。
特に、大きい音(強刺激)に慣れてしまうと、騒音性難聴などのリスクが高まるため、難聴を進行させてしまう可能性があります。このため、集音器の長期的な使用は推奨されません。
違い3.一人ひとりに合わせる調整
補聴器は、使用者の聴力や聞こえ方に合わせて細かく調整することが可能です。
例えば、どのような音が聞き取りにくいのか、どのくらい増幅すれば聞きやすくなるのか、雑音をどの程度抑える必要があるのかといった個別のニーズに応じて設定を調整できます。これにより、各使用者にとって最適な聞こえを提供することが可能です。
対照的に、集音器はあらかじめ設定された製品であり、個々のニーズに合わせて調整することは想定されていません。多くの場合、購入者はそのままの設定で使用することになります。
また、集音器は対面販売でないことが多く、操作に関する不明点や故障時の対応で困る方も少なくありません。アフターサポートが乏しいため、購入後のサポートが期待できない場合が多いです。
補聴器と集音器、どちらがいいの?
難聴が進行している場合や特定の音が聞き取りにくいと感じる場合、医療機器として認定され、個別の聴力に合わせて調整が可能な補聴器の使用が推奨されます。
集音器の使用は、補聴器と比べて安価である反面、音を一律に増幅する特性から、聴覚への悪影響を及ぼす可能性があります。特に、長期的に使用する場合は、そのリスクが高まるため注意が必要です。
最終的には、聴覚の専門家に相談し、自分の聴力に合った適切な補聴器を選ぶことが、より快適で安全な聞こえのための最善の方法です。
まとめ
聴力低下は加齢とともに起こりうる自然な現象ですが、適切な対処をすることで快適な生活を取り戻すことができます。補聴器は、聴力低下の悩みを解決する有効な手段の一つです。この記事では、補聴器の種類、選び方、慣れ方、メンテナンスについて解説しました。
加齢性難聴に悩んでいる人は、この「聴こえ」に対する理解を深め、補聴器を選ぶ際のポイントや使い始めの注意点を把握することで、より快適に生活することができます。
補聴器の使用には慣れが必要です。確かに初期は違和感を感じる場合もありますが、徐々に使用時間を増やすことで、脳が新しい「音環境」に順応し、聴こえ方が改善されていきます。
聴力低下は決して恥ずかしいことではありません。適切な補聴器を選ぶことで、快適な生活を送ることができます。
医療系任意団体「君がため」では、言語聴覚士(ST)をはじめ、作業療法士、理学療法士といったリハビリ専門資格を持っているメンバーが専門的な視点から、高齢者・シニアに役立つ情報を発信しています。ぜひほかの記事もご覧ください。
団体名称:医療系任意団体「君がため」
公式HP:https://kimiga-tame.com/
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団体概要:医療系任意団体君がためは、主に介護予防や健康促進を目的とした活動を行っています。特に、認知症予防に焦点を当てた「納得☆健康塾」という健康教室を毎月開催しており、参加者に対して身体の使い方や介護予防法を実践的に学ぶ機会を提供しています。
ご連絡先:(君がため代表 日高)公式 LINE
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