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家庭内における高齢者の転倒事故とその傾向

〜はじめに〜
高齢者の転倒は深刻な問題です。 65歳以上の高齢者の約3分の1が年に1回以上転倒し、介護施設入居者の約半数が年に1回以上転倒しています。
過去に転倒経験のある人は再転倒のリスクが高いため、高齢者の転倒予防は非常に重要です。
ここでは理学療法士の視点から、家庭内における高齢者の転倒事故の具体的な予防策や対応策を提案します。

1. 転倒リスクの認識

高齢者は加齢に伴い、筋力やバランス能力、視力などが低下するため、転倒のリスクが高まるのと共に、転倒は骨折や寝たきりなどの深刻な結果につながる可能性があり、高齢者のQOL(生活の質)を大きく損なう要因となります。
そんな転倒リスクを高める要因は、以下の内容となります。

・加齢による身体機能の低下(筋力、バランス能力、視力、聴力など)
・特定の疾患(脳卒中後遺症、認知症、パーキンソン病、視力障害など)
・服用している薬の副作用(ふらつき、眠気、立ちくらみなど)
・環境内の障害物(段差、滑りやすい床、照明の不足など)

2. 家庭内の転倒事故はどこで起こる?

寝室、リビングなどでの立ち上がり時に事故が多い

家庭内での転倒事故は、以下の場所で多く発生しています。
・居室: 寝室、リビングなどでの立ち上がり時、歩行時
・廊下: 歩行スペースでの転倒
・階段: 昇降時
・浴室: 滑りやすい床、段差、浴槽の出入り時
・トイレ: 立ち座り動作時

これらの場所では、適切な手すりや照明の設置、床材の滑り止め対策など、転倒防止対策を講じることが重要です。

3. 転倒の主な原因

高齢者の転倒事故は、単一の原因ではなく、複数の要因が複合的に作用していることがほとんどです。

・加齢による身体機能の低下
筋力の低下、バランス感覚の悪化、反応時間の遅れ等により、転倒しやすくなる。

・疾患の影響
脳卒中後遺症、認知症、パーキンソン病、視力障害などは、身体の動きや判断力を低下させ、転倒リスクを高めます。

・薬剤の副作用
 睡眠薬、高血圧薬、糖尿病薬など、服用している薬の副作用によって、ふらつきや立ちくらみを起こし、転倒につながる場合があります。

・環境内の障害物
段差や敷き詰められた絨毯、照明の不足に家具の配置といった、環境内の障害物が転倒の原因となることがあります。
目に見えて気を付けやすい場所は勿論ですが、絨毯とフローリングの境目といった、意識が向きにくい小さな段差等にも気を配っていただくことで、転倒に繋がる原因の解消に繋がります。


4. 転倒予防策

バランスのよい食事と運動習慣の維持

転倒予防は、高齢者自身と家族、介護者、医療従事者など、様々な立場の人々が協力して取り組む必要があります。
⚪︎個人ができる予防策
・定期的な体力測定
自身の体力変化を把握し、筋力やバランス能力の低下に備えます。

・バランスのよい食事と運動習慣の維持
筋力やバランス能力の維持、骨粗しょう症予防に役立ちます。

・住環境の整備
段差の解消、手すりの設置、滑り止めマットの敷設など、転倒リスクの高い場所の安全対策を行います。

・服薬管理
薬の副作用を理解し、必要に応じて主治医に相談します。

・視力、聴力、認知機能の定期的なチェック
身体機能の変化に早期に対応することで、転倒リスクを軽減できます。

⚪︎家族や介護者ができること
・高齢者の身体状態の理解
高齢者の体力や能力、疾患などを理解し、適切なサポートを提供します。

・環境の整備
高齢者が安全に過ごせるよう、住環境を整備し、転倒リスクを減らします。

・定期的な運動の促進
高齢者が積極的に運動できるよう、サポートします。

・見守りの強化
高齢者の行動を注意深く見守り、転倒リスクを早期に察知します。


5. 転倒後の対応

医師による検査

転倒後につきましては、以下の対応が重要です。

・医師による検査
転倒の原因を特定するため、医師による診察を受けます。骨折や内臓損傷などの有無を確認し、必要に応じて治療を行います。

・理学療法士との協力
理学療法士は、転倒の原因分析、身体機能の評価、リハビリテーション、転倒予防のための運動指導などを行います。

・骨粗しょう症の検査
転倒によって骨折しやすい状態である骨粗しょう症の検査を行います。

・転倒リスク軽減プログラム
理学療法士や医師と連携し、個々の状況に合わせた転倒リスク軽減プログラムを作成します。


6. 特に注意が必要な状況

以下のような状況では、転倒リスクが高まるため、特に注意が必要です。

・階段やステップの使用時
手すりをしっかりつかむ、ゆっくりと昇降するなど、注意が必要です。

・睡眠薬、高血圧薬、糖尿病薬服用
これらの薬の副作用によって、ふらつきや立ちくらみを起こしやすいため、注意が必要です。

・視力低下による環境認識の困難
視力の低下により段差や障害物を認識しにくくなり、転倒のリスクが高まります。


7. 家族や介護者の役割

家族や介護者は、高齢者の転倒予防において重要な役割を果たします。

・高齢者の身体状態の正しい理解と把握
高齢者の体力、能力、疾患などを正しく理解し、安全な環境を提供します。

・過信や油断を避け、適切な支援を提供
高齢者の転倒リスクを過小評価せず、適切な支援を提供します。

・定期的な運動の促進と見守り
高齢者が積極的に運動できるよう、サポートします。
また、日常生活での行動を注意深く見守ります。

〜最後に〜
高齢者の転倒は、適切な予防策によって大きく減らすことができます。 
高齢者自身、家族、介護者、医療従事者などが協力し、転倒予防に取り組むことが重要ですので、この記事を参考にしていただき、一人でも多くの方に認知していただきたく思っております。

医療系任意団体「君がため」では、理学療法士をはじめ、言語聴覚士・作業療法士といったリハビリ専門資格を持っているメンバーが専門的な視点から、高齢者・シニアに役立つ情報を発信しています。ぜひほかの記事もご覧ください。
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団体概要:医療系任意団体君がためは、主に介護予防や健康促進を目的とした活動を行っています。特に、認知症予防に焦点を当てた「納得☆健康塾」という健康教室を毎月開催しており、参加者に対して身体の使い方や介護予防法を実践的に学ぶ機会を提供しています。
ご連絡先:(君がため代表 日高)公式 LINE




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