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転倒しにくい歩き方:専門家が教えるチェックポイント


〜はじめに〜

転倒は日常生活の中で誰にでも起こりうるリスクですが、その多くは正しい知識と工夫で未然に防ぐことができます。

本記事では「理学療法士(PT)」の視点から、転倒しにくい歩き方に関する具体的なチェックポイントを分かりやすく解説するのと共に、正しい姿勢維持の秘訣や環境への配慮、そして筋力とバランスの強化方法を紹介致します。

このガイドを通じて、これであなたも安心して歩ける日常を手に入れて、日々の生活をより安全に過ごすための第一歩を踏み出しましょう。

まず当記事「転倒しにくい歩き方」のチェックポイントが特に必要な対象者は以下のような方々です。

〇高齢者

加齢に伴い、以下の理由から転倒リスクが高くなります。

・バランス能力の低下
・筋力の低下
・関節可動域の制限
・反応時間の遅延

〇神経系疾患患者

パーキンソン病、脳卒中後遺症、多発性硬化症などの神経系疾患を持つ患者は、以下の理由から転倒リスクが高くなります。

・筋力低下
・協調運動障害
・バランス機能障害
・歩行パターンの変化

〇整形外科的問題を抱える人

関節炎、骨折後、人工関節置換術後などの整形外科的問題がある人々も対象となります。
これらの状態は以下の影響を及ぼします。
・関節可動域の制限
・筋力低下
・痛みによる歩行パターンの変化

〇視覚障害者

視覚情報の不足は歩行の安定性に大きく影響するため、視覚障害者も重要な対象となります。

〇薬物療法中の患者

めまいや眠気を引き起こす可能性のある薬物を服用している患者も、転倒リスクが高くなる可能性があります。

〇過去に転倒経験のある人

過去に転倒を経験した人は、再転倒のリスクが高くなります。
これは身体的な要因だけでなく、転倒への恐怖心も影響します。


~姿勢のチェックポイント~

転倒を防ぐためには、まず姿勢を正しく保つこと。
3つ、ポイントを紹介いたします。

・背筋を伸ばし、顎を引いて前方を見る。
猫背や前かがみ姿勢は、バランスを崩しやすく転倒リスクを高めます。
背筋を伸ばして姿勢を正すことで重心を安定させ、転倒しにくくなるのと共に、顎を引くことで視線を水平に保って周囲の状況を把握しやすくなります。

・肩の力を抜き、自然に腕を振る。
肩に力が入っていると身体が硬直してしまい、結果バランスを崩しやすくなります。
肩の力は抜いて自然に腕を振ることで、身体の柔軟性を高めてスムーズな歩行を助けます。

・腹部に力を入れ、体幹を安定させる。
腹部に力を入れることによって体幹を安定させて身体の軸をしっかりとし、バランスを保ちやすくなる、これも転倒を防ぐ要因の一つとなります。

~歩行のチェックポイント~
姿勢が正しくても、歩行の仕方が間違っていると転倒のリスクは高まります。
正しい歩行方法も意識していきましょう。
各部分、細かくチェックポイントを上げさせていただきました。

〇足の動き
・かかとから着地し、つま先で蹴り出す。
かかとから着地することで衝撃を吸収し、膝への負担を軽減します。
また、つま先で蹴り出すことで、推進力を得てスムーズな歩行を可能にします。

・足を高く上げすぎず、適度な高さを保つ。
足を高く上げすぎるとバランスを崩しやすくなりますので、適度な高さで足を運び、安定した歩行を心がけましょう。

・歩幅を大きくしすぎない。
 歩幅は大きくし過ぎず、無理せず小さいところからでいきましょう。
大きすぎると身体が前傾しやすく、バランスを崩しやすくなります。

〇バランス
・両足を肩幅程度に開いて立つ。
足の閉じすぎは、バランスを崩しやすくなる原因の一つとなります。
両足を肩幅程度に開いて立つことで、安定した姿勢を保ちます。

・歩行中は重心を安定させ、左右に大きく揺れない。
重心を安定させ、左右に大きく揺れないように意識して歩きましょう。
重心が不安定な状態は、転倒のリスク向上に繋がってしまいます。

・方向転換時はゆっくりと小さな歩幅で回る。
方向転換時は急な動きを避けて、ゆっくりと小さな歩幅で回りましょう。
急な動きはバランスを崩しやすく、結果転倒の原因に繋がります。


〇環境への注意

・足元の障害物に注意を払う。
足元には段差や障害物などが存在することがあります。
まず周囲をよく見て、注意を払って歩きましょう。

・滑りやすい床面では全足底接地、特に慎重に歩く。
床が濡れている場合や、タイルなど滑りやすい素材の場合には、特に注意が必要です。
通常より歩幅を小さくし、慎重に歩くことをお勧めいたします。
また、滑りやすい路面に関しては、普段注意していただく足の動きとは異なり、
踵からはつかずに全足底接地が有効となります。

・階段では手すりを使用する。
階段を昇降する際には、必ず手すりを使用しましょう。
手すりを使うことでバランスを保ちやすくなり、転倒のリスクを軽減できます。


〇補助具の活用

・必要に応じて杖や歩行器を使用する。
バランス感覚が不安定な場合や足腰が弱っている場合は、杖や歩行器などの補助具を使用することで、安定した歩行を助けます。

・補助具は適切な高さに調整する。
補助具は、身長や体格に合わせた適切な高さに調整することが重要です。
高さの調整が適切でないとバランスを崩す原因にもなり得ますし、身体に負担がかかったりする可能性があります。
補助具における杖などの高さ調節は、持った時に肘が軽度曲がる程度が目安となっており、
合わない高さで使用すると逆に歩行の妨げになりますので、もっとしっかり調整するならリハや福祉用具の専門職に聞き、しっかり調節をしてご利用いただくことをお勧め致します。
ちなみに杖は基本的に機能が良い方で持ちます。
(右足を怪我していたら左手で持ちます、たまに右利きなので右で持っている方も見かけますので、ここはご使用される御本人様としっかり確認していきましょう)


〇筋力とバランスの強化

転倒リスクを低減するために、日頃から筋力とバランスを強化していきましょう。

・筋力トレーニングを定期的に行う。
筋力を強化することで、歩行時の安定性を高め、転倒リスクを低減できます。
スクワットやつま先立ちなどの下肢トレーニングや、体幹のインナーマッスルトレーニングを定期的に行いましょう。

・バランス訓練を日常的に実施する。
バランス感覚を鍛えることは、転倒予防に非常に有効です。
片足立ちや、閉眼立ちなどのバランス訓練を日常的に行いましょう。


〇日常生活での注意点

日常的な生活習慣もまた、転倒リスクに影響を与える要因となりかねます。

・急いで歩かず、ゆっくりと安定した歩行を心がける。
焦って歩くとバランスを崩しやすくなります、ゆっくりと安定した歩行を心がけましょう。

・長時間の歩行後は十分な休憩を取る。
長時間の歩行は疲労が蓄積していますので、十分な休憩を取り身体を休ませましょう。

・疲労時や体調不良時は無理をしない。
疲労時や体調不良時は身体のバランス感覚が鈍り、転倒リスクが高まります。
無理せず休息を取り、体調が回復してから歩行しましょう。


〇視覚と聴覚の活用

・眼鏡や補聴器を適切に使用し、周囲の状況を把握する。
視力や聴力が低下している場合は、眼鏡や補聴器を使用し、周囲の状況を把握しましょう。

・暗い場所では十分な明るさを確保する。
暗い場所では、足元が見えにくくなり、転倒のリスクが高まります。
照明を点けたり、懐中電灯を使用するなどして十分な明るさを確保しましょう。


〇薬の影響への注意

・めまいや眠気を引き起こす可能性のある薬の服用後は特に注意する。
服用する薬によっては、副作用としてめまいや眠気を引き起こすものもあるかと思います。
その時は特に注意が必要で、転倒のリスクが高いため歩行時には周囲に注意を払い、慎重に歩きましょう。

・薬の副作用について医師や薬剤師に相談する。
医師や薬剤師に相談して、副作用について必要な情報を得ることも対策になります。


〇定期的な評価と訓練

専門家による定期的な評価と訓練を受けることも、転倒予防に役立ちます。

・理学療法士による定期的な歩行評価を受ける。
専門家である理学療法士による定期的な歩行評価を受けることで、歩行能力や転倒リスクを客観的に評価することができます。

・個々の状態に合わせた歩行訓練プログラムを実施する。
個々の状態に合わせた歩行訓練プログラムを実施することで、歩行能力を高め、転倒リスクを軽減することができます。

以上のように細かく提示してきましたが、これらのチェックポイントを意識しながら、日々の歩行を行うことで、転倒リスク軽減へと繋がります。
ただし、個々の身体状況や環境によって最適な方法は異なるため、必要に応じて理学療法士による個別の評価と指導を受けることをお勧めします。

いかがでしたでしょうか?
今回上げさせていただいたアドバイスで、少しでも転倒のリスクが軽減でき、快適に歩くことへのキッカケになれば幸いです。

チェックポイントは非常に多いとは思いますが、安心して歩ける日常を手に入れることは、日々の生活をより豊かに過ごすことへと繋がりますので、まずは一度細かくチェックしていくことをお勧めいたします。

いつまでも健康に歩ける日を続けられるように、その一歩を踏みしめて生きましょう。

医療系任意団体「君がため」では、理学療法士をはじめ、言語聴覚士・作業療法士といったリハビリ専門資格を持っているメンバーが専門的な視点から、高齢者・シニアに役立つ情報を発信しています。ぜひほかの記事もご覧ください。
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団体概要:医療系任意団体君がためは、主に介護予防や健康促進を目的とした活動を行っています。特に、認知症予防に焦点を当てた「納得☆健康塾」という健康教室を毎月開催しており、参加者に対して身体の使い方や介護予防法を実践的に学ぶ機会を提供しています。
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