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恋ってやつは

「地元に帰ったら二人で一緒に住むんでしょ?」
東京に住んでいる女友達の家で、こんなことを言われた。
私は思わず、飲んでいた紅茶を吹き出しそうになった。


ーーーーええっ!?
なんで、つき合ってもないのに、そんな話になってるの?

と思ったら、

となりに座っていた彼が
「僕が勝手に思ってることだから…」

と。

勝手に…って。
この人、私のこと好きなのかしら?
にしても、私、告白されないんだけど…。

ーーってことがあったんだよね。

その時は22歳で恋愛経験も浅くてね、見た目と雰囲気で決めちゃったんだよね。恋する基準を。
相手がさ、見た目がタイプで自分のことを好きかもって感じられたら、自分も恋しちゃうみたいな感じ。

でも、いつまでたっても告白してこないから、私がこんな質問したのよ。

「私はあなたの彼女になれるのかな?」

って。

そしたらね、彼が言ったの。

「そんな…彼女になれるかだなんて…僕の方こそ、よろしく」

って。

結局、なんだか私が告白したみたいになっちゃってさ。

それがキッカケで、おつき合いが始まったわけ。
最初は楽しかったのよ。
初めてのことばかりだったしね。

…でも、半年過ぎても彼は何もしてこないのよ。
手は繫ぐよ。だけど、それだけ。
別にそれはそれでいいかとも思ったんだけど、職場の先輩に相談したら、
「それは、ありえない」
って言われたわけ。
その辺りから、本当の彼が見えてきたの。

実はめちゃめちゃ借金があるとか、その他モロモロ…。
そこがわかった時点で別れるべきだったの。
住む世界が違いすぎるから。上手くいくわけないって。
理性が勝っていたら、すぐに別れる決断をしていたはず。

だけど、恋ってやつは…
理性を破壊するんだわ。

彼の借金がなくなれば2人で幸せになれるはず…とかって、勝手に思い込んで、自分が汗水たらして働いたお金を愛する彼のために捧げちゃうの。
……バカでしょ?

恋ってやつは、冷静な判断をできなくするのよ。

結果、私は200万円近くを貢いだ挙げ句、彼に別れを告げられるわけ。

付き合って2年くらい経って、こう言われたの。

「やっぱり僕と一緒にいないほうがいい。君の幸せのためだよ」

って。

ショックだったよ。
でも、本当はこんな結末がくることをわかってたんだと思う。

つき合い始めた頃に、彼が
「部屋の合鍵を渡すよ」って言ってくれたとき、私は
「合鍵はいらない」
って拒否したの。

だって、別れた時に返すのが面倒だから…。

そう思ったんだよね。

彼とは幸せになれないって、わかってたのに……貢いじゃったんだよね。
好きだったから。

私は深く深呼吸した。

ほんとに、恋ってやつは…。






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