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私から生まれたものがたり(ノベルセラピー)Ⅷ

ころんぱさんから生まれた
すてきなものがたりです

ころんぱ作
『手紙』

目の前にグレイッシュな、そして静か~な、穏やか~な海が見えていました。
これは、さまざまな国の船が島を行き来する時に目印となる灯台がある、岬の物語です。

そこにはマラソンウェアが好きで、ランニングを集めている少年がいました。
その少年は、出会うリスだったり虫だったり、いろんな星から飛んでくるコスモドラゴンだったり、そして地底に住んでいるお友達だったり、そんな存在達と、
一つだけ自分が違うことに気づいていたのです。

それは何かと言うと、みんなは触れると温かいのに、自分だけいつも手が冷たいのです。
困っているわけではないけれど、なんでなのかな~と気になっていました。

そんなある日、海から魚が、瓶の中に入っている手紙をもってきてくれました。
そこには、こう書いてありました。
「ローリー、知っているかい? 君は本当のローリーじゃないんだよ」
という手紙でした。

ローリーは、“はて、どういうこと?”と思い、自分のおうちにあるいろんな資料を探ってみることにしました。

そうすると、自分は子供のようなのだけど、本当は125年も前に生まれていた、ということが分かりました。

ローリーは、さっきの手紙は何なのだろうと思い、大好きなマラソンウェアを着ながら、
まずは、いつもの趣味の、ランニングに出かけることにしました。
そして、手紙のことを考えていると、
“あれ?どうして僕はここにいるのだっけ?”と不思議な気持ちが生まれてきました。

あたりを見ても、自分と同じ姿形をしているものはいなくて、みんな、違う形をしています。
みんなはそれぞれ、同じような仲間たちがいるのに、なんで僕だけこんな姿形をしているのかな?と、疑問に思いながら、毎日毎日来る日も来る日も、ランニングをしていました。

そんなある日、瓶のメッセージをくれた魚が、池の中から現れて、話しかけてきました。
「ローリー、どう?最近変化はあるかい?」

でもその時にローリーは、やっぱりまだ分からなくて、
「あまり変わりない毎日なんだよ」と言うと、

その魚が、「きっと何かヒントがあるはずだよ。そのヒントを集めればいいんじゃない?」
と、言います。

“そうか、ヒントねぇ・・”と思いながら、ローリーが走っていると、
テントウムシが現れました。
そのテントウムシは言葉に関して研究をしていて、てんとう虫語をいろんな人に広め伝える活動をしていました。

え~おもしろ~い、てんとう虫語ってあるの!?
その話を聞いてから、ローリーは、
“そうか、じゃあ、なんだかわからないけど気になるものをちょっと集めてみようかな、書き留めておこうかな、何かヒントになるかもしれない”
と思い、自分が気になった単語や響き、言葉を集めだしました。

それは例えば、
歩いている時、傍らの木が話しかけてきてくれたその言葉だったり、
鳥がうたっている言葉だったり、
それから太陽にあたった時に感じる、自分の中に生まれる気持ちよさの言葉だったり、
ときにはさみしそうに歩いているアナグマさんの背中を見て浮かんだ言葉だったり、
楽しそうにはしゃいでいるキノコのささやきだったり。
そんないろいろなこと、とにかく自分から生まれるもの、関わりから気になるものをどんどん集めていきました。
そうすると膨大な言葉の数になって、ローリーが住んでいる岬のお家は、部屋中、言葉だらけになって、そのうち、言葉の館、とまで言われるようになりました。

そんなある日、ローリーは、突然、耳がぶわっ!となって、
声が聞こえにくくなってしまいました。
でも不思議とローリーはそんなに不安は無かったのです。
ただ、今までこんなに集めてきた言葉を、もうこれからは集められなくなっちゃうのかなぁ
と、ちょっぴり思いました。

そんな時、窓から綺麗な虹が見えたので、綺麗だからこれを書き留めたい、残しておこうと思い、傍らにあるクレヨンで絵を描き始めました。
すると、
ああ、そうか、もし聞こえなくなったとしても、
まだ僕には目があるから、その時は、皆に絵をかいてもらってもいいんだ、と思いました。

それからは、出かけた時に自分が絵をかいて人々に伝えてみようと思ったり、出会った人やさまざまな存在から絵をかいてもらって会話をしていくことを試していきました。
そうすると、岬の館は、こんどは、絵がたくさん部屋中に貼りだされ、
絵の館となりました。

そして、まわりのみんなが集まってきて、展覧会が開かれることになりました。

だれからともなく、絵と言葉をつなげて、物語を作ってくれる人たちが出てきました。
あ~これは面白い!と、ローリーはあふれる膨大な言葉と絵から、
絵本を作ることにしました。

みんなが自然にやりだしてくれたその楽しそうな姿を見て、そして自分もやってみて、
ローリーはすごく楽しかったのです。

するとローリーは、“あれ?自分の体がポカポカしている”と、
自分の体に体温が宿ってきていることに気づいたのです。

そのうち、心もぽかぽかしてきて、
なんだか今までにない自分が生まれようとしている、と感じました。

そして、うれしい気持ちになって眠りについた翌朝、星の郵便局屋さんがお家にやってきて、
「君知っているかい?宇宙図書館から招待状がとどいているよ」と、
手紙をうけとりました。

何だろう?と不思議に思いながらローリーが手紙を開けてみると、
そこには宇宙図書館から、
君の物語を宇宙図書館に置いてみないかい? という案内状でした。

そこからローリーは、毎日楽しみながら作っていた沢山の絵本を
図書館に置いてもらうことにしました。

宇宙図書館にはいろ~んな存在達が銀河中からきていて、
みんな楽しそうにそこで過ごしていました。
「君はどんなことを思ったの?」とか、
「こんな星があってね、君は行ったことがあるかい?」とか、
たくさんの交流が生まれて、ローリーはいろいろな星にも行って、
もっと多くの存在達と出会いながら、絵本を作り、そして交流を続けたのでした。

☆おしまい☆

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