大阪人、役立つものにはカネを惜しまず@プレイバック!データで見る関西人気質
Playback 20 years ago
プレイバック!データで見る関西人気質
(まえがき)
およそ20年前、とある夕刊紙に連載させてもらっていた署名原稿(本名名義)を要約・編集して紹介しています。当時とは世相が異なるため、???な内容やNGな表現があるかもしれません。ちょっとした話のネタとして読んでいただけるとうれしいです。
第12回 水とお湯
役立つものにはカネを惜しまず
マズイことで有名な大阪の水。古来より水の都と呼ばれているのとは裏腹に、大阪を流れる川という川はどれもみな汚れている。環境保全問題が取りざたされるようになって少しはマシになったとはいえ、やはり淀川の濁った水面を見てしまうと「こんな汚い水を飲んでるんやなぁ」と思わざるを得ない。そこで、今回は大阪人と水との関係を考えてみたい。
汚れた河川を浄水源にしている大阪では、浄水器はいわば生活必需品といっていいのかもしれない。表1は浄水器の所有率だが、高い数字を示している首都圏を抑えて大阪は堂々のトップである。
(表1)浄水器の所有率
第1位 大 阪 40.8%
第2位 東 京 39.3%
第3位 千 葉 34.6%
第4位 神奈川 33.7%
第5位 埼 玉 32.0%
※社団法人中央調査社調べ
「1997年度MMR資料、BBR資料」より抜粋
「生水なんて飲めたもんやあらへん。あのカルキ臭さはどうしようもないわ。いまや浄水器なんてあたり前とちゃうの? うちでは魔法瓶でお湯を沸かすのも、炊飯器でご飯を炊くのも必ず、備長炭を入れるんですよ。同じ水道料金を払うんやったら、やっぱりおいしい水を飲まな損でしょ」とは、大阪市此花区の主婦Kさん(41歳)のお言葉。
同じお金を出すならよりおいしくというのは、まさに大阪人気質の真骨頂である。ただのレチならわざわざ浄水器などを買わずに、カルキ臭い水でも我慢して飲むだろう。しかし、大阪人は実利主義なのである。だからこそ、必要なものには惜しげもなく投資するのだ。
それを顕著に示しデータが、表2のガス湯沸かし器の所有率である。浄水器以上に普及している湯沸かし器だけあって、上位の所有率はいずれも高い数字。その中でも大阪は見事ナンバーワンの座に輝いている。
(表2)ガス湯沸かし器の所有率
第1位 大 阪 89.0%
第2位 京 都 88.6%
第3位 東 京 81.1%
第4位 奈 良 80.7%
第5位 神奈川 79.2%
※社団法人中央調査社調べ
「1997年度MMR資料、BBR資料」より抜粋
大阪市北区で美容院を経営しているUさん(39歳)はいう。「やっぱり大阪の人間は、ホンマに便利なものにはちゃんと金をかけてるんですわ。ウチみたいにガス湯沸かし器がないと仕事にならんとこは別として、それでも湯沸かし器を使わんゆう家庭はごく少数ですよ。普通やったら大阪より寒い北海道や東北、北陸の方が所有率も高いはずやのに、都市圏ということもあるけど、やっぱり大阪人は便利なものには無条件で飛びつくんでしょうね」。
浄水器といい、ガス湯沸かし器といい、実際に役立つものに対する大阪人の反応というのは、ケチでもセコさでもなくやはり実利主義という言葉がもっとも適しているように思われる。しかし、冒頭で述べた大阪の水のマズさを考えると、大阪人はこと水に関してだけは、ことさらぜいたくになっているのかもしれない。
(あとがき)
大阪市水道局のサイトを見てみると、2000年に導入された「高度浄水処理」によって大阪の水はずいぶんキレイに、そしておいしくなっているとか。それまでの浄水処理に加えて、2回にわたるオゾン処理や活性炭を使った処理で、カビ臭などのもとになる有機物質を分解して水質を改善しているそうです。2000年当時に行われたアンケートでは、およそ65%の人から「以前よりおいしくなった」と支持されたほど、安全でおいしくなった大阪の水。ここはあえて、現在の浄水器の所有率は調べないことにしましょう。