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各国の無香料ポリシー【カナダ】肺協会編

こちらも2020年に訳したのをほぼそのまま移動します。ほぼ原文ママを志しましたが、noteの見出し・もくじ機能を使って少しだけ見やすくしました。

元記事はこちらです

元々は、Sakakiさんに教えて頂いた記事です。Sakakiさん、ありがとうございました!

カナダ肺協会のHPより(訳注:日本風に言えば「肺疾患」協会なんでしょうが、疾患を得た状態の肺に限らず、肺の健康を予防原則込みで、健康なうちから肺全体のことを医療面から考えるので、あちらでは呼吸器疾患や肺疾患の協会という表現をせず、肺の協会となります。協会TOPページにリンクを貼りますが、表題ロゴを見て頂くとわかりやすいですね。disease(疾患)の文字をわざわざ赤で消して、病気ではなくても肺のケアに寄り添うことを強調しています。)

カナダ肺協会トップページへのリンクがこちら↓↓↓

そんなカナダ肺協会が、香りが呼吸器に影響を及ぼす可能性について言及・啓発しているページを和訳してご紹介します。

ちなみにこの肺協会、前記事でご紹介した無香料プログラム推進のダルハウジー大学とも連携しています。



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Scents(香気)/カナダ肺協会


香気と聞いて思い浮かべるものは?

我々は香気といえば通常は香料、アロマや香水―何かしら香りを付加するものを思い浮かべます。

香気はパーソナルケア用品の中につきものです―香水、髭剃りローション、コロン、シャンプーやコンディショナー、石鹸、全身ローションや制汗剤など。

また香気は家庭用品にも含まれます―例えば空気清浄剤、脱臭剤、キャンドル、一部の洗濯洗剤、衣料用柔軟剤、清掃用品等です。

また香気は職場でも見られます(洗浄用品、接着剤、コーキング材など)。


香気付きの製品は健康にどのような影響を与えるのでしょうか?

製品に香気を付加するために使われる化学物質は、ある人々、特に喘息やCOPDなどの肺疾患を持つ人々にとって健康上深刻な問題の原因となり得ます。香気を付加された製品は、ただ側にあるだけでも人々を病気にすることがあるのです。

香気は肌や肺を通って我々の体の中に侵入します。香気に使われる化学物質は多くの異なる反応を引き起こします。天然由来の植物成分を使った製品ですら、ある人々にとってはアレルギーの原因になり得るのです。

香気の影響で起きる症状は軽いものもあれば重いものもあります。一般的な症状には次のものがあります。

  • 頭痛

  • めまい

  • 疲れやすい/虚弱

  • 息切れ

  • 吐き気

  • 感冒様症状

  • 喘息症状の増悪作用


香気に使われている成分は?

香気は通常天然のものと人工の化学物質を混合して作られます。典型的な香気には通常100~350種の成分(訳注:規制がガバガバの日本においては、そのほぼ十倍)が含まれます。香気を含んだ製品の問題は、においそのものよりもそのにおいを作り出している化学物質にあります。

香気付き製品は常に空気中にいくつかの有害な化学物質を揮発させ、髪や衣類や周囲のものすべてに付着します。一般的に香りを長持ちさせるために使われる化学物質にフタル酸ジエチルがあります。

アメリカ国立医学図書館による有害物質の就業時曝露のハザードマップによれば、これは皮膚にアレルギー反応(接触性皮膚炎)を起こす可能性があるため皮膚感作剤として分類され、また生殖毒性もあるとあります。


無香性や香料無添加の表示は、確実に香料0を意味する?

いいえ、”無香性”や”香料無添加”との表示がある製品でも、実際はある特定の成分の原料臭を隠すために香料を添加することが許可されています(訳注:いわゆるマスキング剤、日本の製品も同様)。カナダ厚生省は企業がこれらの製品ラベルに成分表示をする際の特定の規定を設定しています。カナダ厚生省の規定によれば、”無香性”と”香料無添加”の表示は、香料が全く添加されていないものと、香粧品から別の原料臭を隠すためのマスキングのために香料が使われているものも含んでいます。


各家庭で香気成分を避けるには

より安全な洗浄製品を選ぶか、また自分自身でより良いものを作る方法もあります。安全な製品と自作する方法のレシピ集は  低毒性製品ガイド(訳注:カナダの製品リスト)をご参照ください。低毒性のパーソナルケア用品、洗浄用品やその他の製品はノバスコシア州環境衛生協会、独立非営利団体、が公開しています。

  • 香料無添加のパーソナルケア用品の使用をお勧めします。より安全なパーソナルケア用品を探すためには  スキンディープデータベース をご覧ください。シャンプー、ボディクリーム、ベビー用清拭剤などの多くのブランドの安全性を比較評価しています。スキンディープはアメリカの非営利調査機関である環境ワーキンググループの運営するものです。また 低毒性ガイド.ca はパーソナル用品やベビー用のおしりふきの、推奨される使い方も提供しています。

  • 換気をよく行ってください。換気扇がない場合は窓を開けて新鮮な空気と古い空気を入れ替えて下さい。または空気の通る窓辺に扇風機を置いてもう一か所の窓を開け、空気の流れが増えるようにしてください。


屋外で香気を避けるには

  • 出来る限り香料無添加の製品を使用してください。

  • 職場やオフィスでは換気を継続してください。

  • 洗剤や石鹸類は密閉できる保管庫か常にドアが閉じた状態の食器棚に入れて下さい。またそれを保管した部屋の換気が良い事を常にチェックしてください。

  • 職場、学校や礼拝堂などに ”無香料の建物” の表示をしてもらうようお願いしてください。

  • 無香料ポリシーが整備されていない場合は、あなたやあなたのお子さんの職場や学校、礼拝堂、ジムなどと協力して無香料ポリシーや香料削減ポリシーを採用していってください。


もしも香水を使いたい場合は

  • 寝室には香水や香料入り製品を置かない事。

  • 気温が高い時には香水はなるべく弱めに使って(あるいはまったく使わないで)下さい。香気は熱で強まります。

  • 香気が過度にならないよう注意しましょう。手を伸ばした距離にいる人があなたの香りに気づけない程度を心がけて下さい。



元記事: Scents BREATH lung assosiation




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あとがき?


以上が訳文でした。

>香気付き製品は常に空気中にいくつかの有害な化学物質を揮発させ、髪や衣類や周囲のものすべてに付着します。

凄いですね。移香にもしっかり言及していますね。注目すべきは、化学物質過敏症ではなく、呼吸器の健康と呼吸器疾患を考えて情報提供する、医療専門家と患者の団体である肺協会が打ち出している記事だという事です。
この肺協会、ダルハウジー大学を中心としたノバスコシア州の無香料プログラムと、早い段階から連携しています。

ダルハウジー大学の記事によると、「地域に香害はほとんどない」とのことでした…が、それでもカナダ全域を見ると、香害に無頓着な人もまだまだいるようです。
例えば、2017年にはカナダ西部で、香水つけすぎの人が運転手に乗車拒否されるという案件もありました。

この事件は女性が一度ならず二度までも乗車拒否され(つまり懲りてない)、挙句に人種差別問題になぞらえて自分が被害者のように語っています。イノセントポリューションとはよく言ったもので、自らの意思で選んで使用する香りが、他人の人権を侵害している点には全く無頓着なんですね。

だから、カナダを見ると全く香害がなくなっているわけではなく、根強い問題なのだと思います。西洋圏は香水文化が早くから浸透してますしね。
けれどここで注目したいのは、バス会社が運転手に注意をしたり処分をするのではなく(おそらく、そうでなければ女性客の方にこのような進言はしないと思います→)、女性客の方に後ろの席に移動するよう進言している部分です。現在までの日本では、十中八九の場合はこうはいかず、運転手に注意をしたり、何も考えずただただ「お客様になんてことを言ってしまったんだ、大変失礼いたしました、申し訳ありません」となってた気しかしません。
そして仮にこの運転手が、CS患者やぜんそく患者だったり、これを契機に発症したりで業務の継続に問題が発生した場合でも、運転手の個人的な健康問題として片付けられ、運転手の健康を守ろうという動きはなさそうですよね、日本では。
その点においては、カナダは日本より、かなり対応は進んでると思います。2024年4月からの合理的配慮の義務化で、日本でもこういった意識が広まるように期待します。

しかし現状の日本においては、なぜこの問題は取りざたされないんでしょうね。他国ではこんなに注意喚起がされています。前のIFRAに関する記事でも紹介しましたが、日本の呼吸器疾患のHPでは、生活習慣上の大気汚染源として、喫煙の悪影響だけに言及しています。
喫煙だけ。
他国ではこれだけ香気が呼吸器疾患にも悪影響であるとされているのに。(他にはアメリカCDCや肺協会、いくつかの州の看護協会などが注意喚起しています。)
国境を越えて日本に入ったら香気が悪影響を出さなくなるんでしょうか?そんなわけないのに、なぜか日本は規制もガバガバです。その上なぜか「海外のほうが香りが強い製品を使いがちだけど、日本の香りはほのかで優しいから大丈夫」という、今となっては根拠のない、間違った認識が広がっています。ですがそれは香害前のことですよね。現在はもうすでに、日本の方が規制ガバガバで、氾濫している香料の種類は欧米の主要国の10倍ですし、そのうえ香り成分そのもの以外の、製品に添加されるマイクロカプセルや安定化剤その他の化学物質のほうの規制も同じくガバガバゆるゆるです。
そして消費者のほうも。アロマや香水をはじめ、日用品に付加される香りも、ここ10年ほどで急にみんなが使い始め、使い方も知らずにモノだけが広まってしまっています。その結果、知識やマナーのほうは置き去りです。
全然大丈夫じゃないです。何を言っちゃってるんでしょうか。

しかも肺協会さん、香料をFragranceなんて表現せずにScents(悪臭)と表現してます。これはアメリカの肺協会も同様の表現をしています。Scentとは、人にとって不快だったり有害だったりするニオイ全てを指します。この記事で言及しているのは生理的悪臭や生活臭などは含まず、香粧品香料に特化した話をしているにもかかわらず、それでもFragranceではなくScentsという単語をわざわざ選んでいます。自分がこの記事を初めて見たとき、まずそこに感動しました。

そして日本では、このScentsに該当すると思われる香害は、まるで化学物質過敏症に関する特殊な問題のようにされて、肺疾患や他の疾患への多大な影響をガン無視なのは、一体何なんでしょうね。
香料は、化学物質過敏症という概念が出てくる前から、健康に悪影響を及ぼす場合があるとして、医療界では慎重使用または使用禁止だったはずです。ずっと。
それがなぜ、この10年ほどで無視されるようになったんでしょうか。

忘れないでね。
香害は、化学物質過敏症だけではなく、他の様々な疾患にも悪影響を及ぼします。そして何より感覚の差異だけを見ても、様々なシーンにおいて(例えば食事の場や教育の場)、非常に迷惑極まりないのです。


2024年3月

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