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立春の頃の気象について考えてみた
明日は立春ですが、気象的にどのような意味がるのでしょうか。立春を過ぎると気温があがるイメージですが、全国どこでもほぼ一斉に気温が上がり始まるのでしょうか。それとも南からなのでしょうか。調べてみました。
県庁所在地の平年値
アメダスの観測所は約1300箇所もあり、すべてのデータを扱うのは困難です。また、特定の年の気温は、日々の気温変動が大きく、地域の特性を把握しにくいです。そこで、今回は県庁所在地の平年値(1981-2010年の30年間の観測値の平均[最新])を用います。そうすることで、大まかですが、全国的な傾向が調べられるのではないかと考えます。
1月29日頃 内陸から海沿いへ最高気温が上がり始める
平年値を見ると、12月、1月と日最高気温は下がり続けますが、下の図のように1月29日〜2月2日頃を境に、上がり始めます。47都道府県の平均値で見ると1月29日になります。本州内陸に注目すると、1月24日〜27日と、全国的に見ても早い段階で最高気温が上がり始めます。また、九州でも、本州内陸部ほどではないもの早い段階で最高気温が上がり始めます。それに対して、海沿いでは上がり始めが遅くなっています。東北地方に注目したとき、海沿いでも岩手県・山形県・福島県の上がり始めが早いように見えますが、この3県の県庁所在地が内陸にあることを考えると、内陸が海沿いより最高気温の上がり始めが早いことに矛盾がありません。
2月2日頃 最高気温が上がり始める日よりも3日程度遅れて最低気温が上がり始める
最低気温が上がり始めるのは、2月1日〜2月5日頃と、最高気温の上がり始める日より3日程度遅くなっています。47都道府県の平均値でも見ても2月2日と、最高気温が上がり始める日の1月29日より3日遅くなっています。内陸や九州で上がり始めるのが早く、海沿いで遅い傾向は、最高気温のときと同じです。
この時期、最高気温より高い海面水温
気象庁に月別の海面水温の平年値があります。期間は、1981-2010年と、最高・最低気温の期間と同じです。下の上段の図が1月、下段の図が2月です。比べると、2月の方が海面水温が下がっています。もう少し詳しく見ると、1月はオホーツク海付近を除き、日本海側と太平洋側で大きな海面水温差はありません。2月になると、北日本の日本海側よりも、太平洋側で水温が少し下がります。
海面水温に負けない大陸からの強い寒気
最低気温が上がり始めた1月31日の各県庁所在地の最高気温を示したのが下の図になります。九州付近では、最高気温は海面水温に近いものの、全体としては、最高気温よりも海面水温の方が高くなっています。単純に考えると海風が入ると気温は上がりそうに見えます。特に2月の海面水温では、北日本の日本海側よりも太平洋側の方が低くなっています。北日本の最高気温を見ると、反対に日本海側の方が低くなっています。これは、日本海を吹走してもあたたまりきらない大陸からの寒気の影響で、日本海側では最高気温が低くなっていると考えられます。
日気温差は海沿い・日本海側で小さく内陸で大きい
1月31日の最低気温と最高気温の気温差を見ると、日本海側でが小さく太平洋側で気温差が大きい傾向があります。また、関東の北部を中心に内陸で気温差が大きくなっています。
最低・最高気温の上がり始める日の差は内陸で大きい
関東の北部を中心に内陸部で差が大きく、海沿いで差が小さい傾向があるように見えます。沖縄では、最低気温も最高気温も同じ日に上がり始めています。海沿いでは最低気温と最高気温の上がり始める日の差は小さいものの、内陸では最高気温が早い段階で上がり始めていると言えます。
風速との関係
1月、2月の平均風速(平年値)を見ると、海沿いで強く、内陸で弱い傾向があります。相関係数は出していませんが、内陸に比べ、海沿いでは気温が上がるのが遅いことと、風が弱いこととに関係がありそうです。
海沿いより先に、内陸で気温が上がる理由
冬至を過ぎ、1月から2月と春分に向け日射が増えます。日射が増えることは気温を上昇させる要素になります。風が強いことは、大気がかき混ぜられることから気温の上昇を抑える要素になります。風が弱い内陸は、日射が増えることに伴い気温が上昇するのに対して、海沿いでは、風が強いことから気温上昇が抑えれるために、気温が上がる日が遅くなるのではないかと考えます。
最低気温よりも、先に最高気温が上る理由
最低気温よりも、先に最高気温が上るのはなぜでしょう。3〜4日のことですが、最高気温は上昇し始める中、最低気温は下がり続けるあるいは下げ止まってています。海沿いでは、風が強く、放射冷却が効きにくいため差が小さくなるのではないでしょうか。逆に内陸では、日中、日射で気温が上がっても、風が弱いため、放射冷却で大きく冷え込みます。日気温差も大きくなります。しかし、放射冷却による冷え込みよりも日射の強まりが強く働くようになり、最低気温も上がり始めるのではないでしょうか。また、以前書いたように、この時期から降水量も増えてきます。雪のない関東の北部では、地面が湿れば、放射冷却が弱まります(積雪は放射冷却を強めます)。
まとめ
1 1月下旬頃内陸から海沿いの順に最高気温が上がる。
2 2月に入ると内陸から海沿いの順に最低気温が上がる。
3 この頃の海水温は最高気温よりも高い。
4 太平洋側よりも日本海側で最高気温が低い(大陸からの寒気は、海を渡っても低いのではないか)。
5 日気温差は海沿いより内陸で大きく、最低・最高気温の上がり始めるまでの差も海沿いより内陸で大きい。
6 内陸よりも海沿いでは風が強い。
風が強いことが、日射による気温の上昇を抑え、内陸から海沿いの順に気温上昇になるのではないか。
日射が強まることにより最高気温は上昇するが、内陸では風が弱いことで放射冷却が強く働き、気温低下が続き、日気温差が大きくなるのではないか。