ミュージカル『李香蘭』を一緒に見た友達
劇団四季の『李香蘭』をご存じだろうか?
私は大学に入学してすぐ、同じ学科の友達に誘われて、一緒に観に行ったことがある。
私は李香蘭という人をその時初めて知った。簡単に説明すると、第二次世界大戦前後で歌手、女優として活躍し、後に政治家になった人である。歌が上手くて見た目もとても綺麗、才媛とはこういう人のことを言うのだろうと思った。
私は十代のころは少年漫画ばかり読んでいたので、いわゆるこういった、大人の女性には興味がなかった。芸能人でも好きな女優やタレントに全く興味がなかった。だから、李香蘭なんて知るはずもなかった。
ミュージカルの内容も、あまり興味がもてなかった。才能ある美女の波瀾万丈な一生を描いた物語だったが、まあ自分とは違う世界の人の話だなとしか思えなかった。
私を誘ってくれた友人は、見た目も綺麗で頭も良かった。大学が同じだったけれど、本当はもっと上のレベルのところに行けたのでは?と思うくらい才能がある人だったと思う。
彼女は卒業して、社会的にかなり活躍して海外にまで飛び立った。自分は今までそんなタイプの人と付き合いがなかったので、なぜ学生時代にあんなにも意気投合したのか不思議で仕方がない。いや、本当に意気投合していたのかも怪しい。あることをきっかけに大喧嘩になり、学生時代の大半は仲良く過ごすことはできなかった。単に都合のいい存在なだけだったのかもしれない、と思うこともある。
そんな彼女から、李香蘭の存在を知ったのだが、思うに、彼女は学生時代から李香蘭やそれに近い女性たちを目標にして、自分を近づけようとしていたように思う。
一方、私は何も目標がなく、目標にしている人もいなかった。すると、彼女からあきれたように
「目標にするべき人を見つけた方がいいよ」
と言われた。
そうはいっても、当時は見つけられなかった。
当時はぼんやりした学生だった。
将来の夢は決まっていなくてもいい。けれど、どんな人になりたいか、どんな人を目標にするか、これは学生時代に考えておいても良いのではないかと思う。そうすると、憧れの人のようになるために、自分は今何をすべきかが明確になるのだから。そうして、努力を重ねれば、恐らく自分が憧れていたような人に近づけるのかもしれない。