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『琅琊榜〈弐〉〜風雲来る長林軍〜』感想

 『琅琊榜〈弐〉〜風雲来る長林軍〜』を見終わりました。

 最近、ドラマばかり観てしまって、中国語のリスニング力はこれで上がったような気がします(笑)

 さて、かの名作『琅琊榜 〜麒麟の才子、風雲起こす〜』の続編ということですが、いろんな口コミを見ると前作よりは評判が落ちるのであまり期待していませんでした。しかし、個人的にはこれはこれで面白い作品だと思います!私は好きです。ちなみに、夫は前作よりもこちらの方が好きと言っていました。

 今回は、その感想をまとめておこうと思います。


スーパーヒーロー梅長蘇の勧善懲悪復讐劇に対して、今回は…?

 前作の「〜麒麟の才子、風雲起こす〜」の主人公、梅長蘇は頭キレッキレのスーパーヒーローで、この人が失敗したり、誰かに騙されたりすることは絶対にありませんでした。だから、見ている側としては、「どうせ上手く行くんだろうけど、どうやってこの状況を切り抜けるのかな?」ということだけを考えてみていれば良かったです。

 ところが、今回の「〜風雲来る長林軍〜」では、主人公がわりと平凡。腕は立つけれど、頭がいいわけではありません。むしろ軽率で、あまり物事を考えずに突っ走りがちです。お父さんやお兄さんに迷惑かけて叱られることもしばしば。
 梅長蘇が病気に身体を蝕まれながらも、宮廷で知謀を巡らしていた一方で、この主人公は皇帝直属の長林軍の子として生まれながら、宮廷の生活が合わないと言って自由気ままな世界へすぐ逃げ出そうとするタイプです。

 だからか、見ていてとてもハラハラします。次はどうなってしまうんだ!?大丈夫なのか!?と一話一話思わずにはいられなくなり、「〜麒麟の才子、風雲起こす〜」とは別の意味で目が離せないドラマです。

見所は、若者の成長

 はじめのうちはイライラすることもあるのですが、最後まで見ると主人公は主人公なりに成長します。そこで、このドラマの面白さは登場人物の「成長」にあるのだと気づきます。

 主人公と同じくらい、いや、むしろそれ以上に成長を見せるのが若くして皇帝となる蕭元時です。はじめは臣下や親戚たちのいいなりになって、優柔不断、知謀も何もわからないので単純思考です。それが、蕭元啓の謀反を知り、大切な人の死や逃亡、戦いを通して別人のように逞しく成長します。『精霊の守り人』のチャグム皇子を彷彿とさせる人物です。(顔立ちも何となく神木隆之介くんに似ている気がします…。)

 はじめは、周りの意見を聞いて「じゃあ、そうする」と判断していた元時が、最後の方は誰かが意見を言う前に自分の意見をはっきり主張するようになっていて、成長したなあとしみじみします。個人的には主人公よりも、元時の成長の方が面白かったです。顔つきも前半と後半でかなり変わります。

蕭元啓の哀れさ


 
 主人公の親友にして、ラスボスになる蕭元啓ですが、何となく最後まで哀れなキャラクターという感じがしました。志がありながら、親の罪が原因で思うように自分の実力を発揮する機会に恵まれません。そこで、敵国や中ボスの濮陽纓と手を組んだりします。この濮陽纓と元啓の関係が「NARUTO」のサスケと大蛇丸の関係にとてもよく似ています。「利用されるなら、こっちも利用してやろう」という辺りが。濮陽纓な雰囲気も、大蛇丸に似ています。やってることも似ているし、蛇を扱っているし。
「主人公の友達と思っていたけど、実は敵だった」という展開って、王道なんでしょうか?逆(敵だと思ったら味方ぢった)も結構ある気がしますが。そういう意味では、『射鵰英雄伝』の楊康にも似ています。

 この元啓が哀れなところは、はじめは迷いながら悪い道へ少しずつ足を踏み入れて行くのですが、最後は自分が悪いことをしているという自覚があまりなく、周りから真の理解者がいなくなってしまうことに気づかないというところです。長年、親のせいで虐げられた生活を送ってきた元啓にとっては、どんなやり方であれ権力を握って「どうだ、やってやったぞ」と示すことが全てなのですが、そんな彼を心から理解してくれる人はいません。しかし、元啓にはなぜ周りが自分を理解してくれないのかが最後までわからない。この辺りが、悪役だけれどとても哀れな感じがしました。私たちにも、こういう一面ってあるんじゃないかと思います。「自分は悪いことをしているつもりはないのに、なんで周りはそんな風に見るの?自分はこんなに頑張ってるのに!」という(私は経験があります)。いろいろ周りと上手くいっていないと、こういう考えになることがあると思います。

 中国ドラマを見ていると、ラスボスは最初から悪い人ではないことが多いです(はじめから悪そうなのは中ボス)。はじめは主人公の友達で、何となく弱い立場の人間なのですが、上手くいかないことが積み重なっていって、悪事に手を染めていくというパターンが多い気がします。
 
 しかし、これは現実でもあり得ることだと思います。そう考えると、すごく怖いです。自分もなる可能性があると思いますし、自分の周りにもそういう人がいそうだなと思うと、人との接し方や自分の生き方について考えさせられます。

所々に前作の要素が

 お話の舞台が、前作から50~60年くらい経っているので、前作に登場した人物も何人か出てきます。さらに、前作で梅長蘇が使っていたものなんかも登場します。それが、主人公や皇帝を助けるための道具になることがあるので、見ていてとても胸熱です。梅長蘇亡き後も、この梁の国は彼の力によって守られているんだなあと実感します。ドラマ事態は、前作を見ていなくてもわかるのですが、前作を見ていた方がより楽しめるポイントだと思います。

馬に乗りたくなる

 前作は宮廷の中のシーンがほとんどだったのに対し、今回は戦争の場面もかなり多いです。それから、荒野を馬で駆けるシーンもたくさん登場するので、自分もやってみたくなります。中国のどこかをロケ地にしているのだと思いますが、広大な大地と雄大な山の景色は、日本ではあまりお目にかかれない分、憧れます。早く中国へ行きたいです!

まとめ

 口コミでは前作と比べると劣るとの評価でしたが、この作品は前作とは違う面白さがあると思います。前作のような、主人公がスーパーヒーローでない分、周りが何かと知謀を巡らせ活躍するので、それが面白いところです。

 そして、前作は梅長蘇という謀士がいかに活躍するか、というのが面白いところでしたが、今回は未熟な君主や未熟な長林王がどうやって苦難を切り抜け成長していくのかが面白いところです。視聴者もドラマを見ながら一緒に成長していけそうです。

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