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後宮ドラマから考えた一夫多妻について

 最近、中国の後宮ドラマ『宮廷の諍い女』やトルコの後宮ドラマ『オスマン帝国外伝』を見ました。どちらも後宮の話なので、一夫多妻の社会の物語です。日本も、大奥がありますから昔は一夫多妻制があったのは有名な話です。

 欧米にも一夫多妻はあったのか、気になっていましたが、『オスマン帝国外伝』を見ていたら、キリスト教圏は一夫一婦制だ、という話が出てきました。どうやら、宗教的な考えによって一夫多妻かそうでないかわかれていたようですね。

 イスラム教は、今でも一夫多妻は認められており、1人の男につき女は4人まで、という決まりがあるそうです。ただし、全員平等に愛さなければなりません。

 『オスマン帝国外伝』の舞台になったトルコはイスラム教ですが、近代に入って改革により一夫一婦制になったようです(近代化によって一夫一婦制になったのは日本や中国も同じだそう。近代化=西洋化なので、キリスト教の考えに従った、というところでしょう)。このドラマの主人公は、近代化する前の人間ですが、事実上一夫一婦をやったというのですから、すごい。皇帝を独り占めしようとする欲が、彼女はとても激しいですからね。

 しかし、現代の考えでいけば、好きな人に他にたくさん女がいると考えたら普通に嫌ですし、独占したいという気持ちを抱くのは普通です。そう考えると、この主人公はとても近代的な人だったのではないかと思います(もともとトルコ人ではなく、クリミアのギリシア正教会の娘なので、一夫一婦制を貫きたがるのは当然なのかもしれませんが)。

 一夫多妻制は、なぜ取り入れられていたのか。調べてみると、基本的には上流階級の人が、自分の血筋を多く残すためだったそうです。他にも出産リスクを分散させるため、男性の性欲を充たすためなどいろいろありましたが、一番確実なのは子孫を多く残すためでしょう。

 とはいえ、中国や日本でもそうでしたが、基本的には経済的に豊かでないと複数の奥さんを養うことはできません。だから、現在一夫多妻が認められている国も、奥さんを二人以上持っている人は少ないようです。

 今年の東京都知事選挙で、少子化対策として一夫多妻制を謳っていた立候補者がいたようですが、よく考えると、そもそも日本に一夫多妻できるほどの富豪がいるのか、と思います。
 生活費に加えて、家賃、育児にかかる費用、学費、保険…。さらに、現代なら一緒に旅行にだって、いろんな所に行きたいでしょう。それを女性の給料を足したとしても、一人の男性が何人もの女性が満足できるくらい平等にお世話できるのでしょうか?
 イスラム教方式で考えるなら、この「平等に」というのはかなり金銭的負荷があるようです。
 例えば、一人の奥さんに数千万する家や宝石を与えたら、他の奥さんたちにも同じくらいの家や宝石を与えないといけないのだとか。
 それって、石油王か皇族か大谷翔平並みのメジャーリーガーでない限り無理な話ではないでしょうか。いや、そのレベルの人たちでも程度によっては無理なのでは?と思います。

 時間のやりくりも大変になります。
 夫と複数の妻たちの、仕事と休みの兼ね合いを考えたら、「長期休暇中に旅行に行けるのは、一人につき一泊まで!」という風になりそうです。そして、毎日違う奥さんと違う場所へ旅行に行く…。夜も毎日違う奥さんのところへ行く。なんとも、とても忙しいスケジュール。

 さらに、一夫多妻だと家事育児を夫がやる時間がかなり制限されます。「今日は○○のところへ行くから、また2日後ね」とか「家事育児は一人につき○○分まで」となりそうです。

 こんなに過密スケジュールだと、ご主人が奥さんや子どもの名前を呼び間違えたりしそうですよね。
 考えただけで、夫婦共に超ストレスフルです!

 というか、昔はほぼ皇帝レベルでないとできなかったのを、庶民にやらせたとことで、後宮ドラマのような、陰湿ないじめや諍いが起こるだけな気もしますね。

 さらに、一夫多妻制は、女性の権利を侵害しているという問題点があります。
 後宮ドラマを見てもわかりますが、誰一人として後宮で幸せそうな女はいません。
 イスラム教では、「夫は複数の奥さんを平等に愛さなけれはならない」という決まりかあるようですが、後宮ドラマを見る限りでは、このルールを守っている皇帝はいません。どだい無理な話だと思います。ドラマでは、いじめや人権問題につながる事件が多発しています(暗殺も横行します)。
 ドラマならただの面白い話で済まされますが、現実でこうなったら、アウト確定です。社会の乱れに繋がるでしょう。

 そう考えると、一夫一婦制でよかったなと思わずにはいられません。
 


 こちらの記事を参考にしました。


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