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【箱根旧街道】甘酒を求めて箱根で雪道ハイキング〜登山日記#6
箱根にある「甘酒茶屋」というお店をご存知だろうか。
私は昔からここの甘酒の大ファンで、これまで旅行のたびにこの茶屋に寄ってきた。
もう3年以上通っているだろうか。
いつもは車で行っているのだけど、今年は登山を始めたし、歩いて行ってみようと思い立った。
まずは箱根湯本駅へ行き、そこからバスに乗る。
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「畑宿」というバス停で下り、箱根旧街道に入る。
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さっそく有名な石畳の道が現れた。
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不揃いな岩たちがごろごろと敷き詰められていて、歩きやすいような歩きにくいような。
足元をジッと見ながら慎重に進んだ。
昔この道はひどい泥道で、毎回竹を駆使して歩いていたらしい。だけどもその度に手間も費用もかかることから、いよいよ岩を使っての整備がなされたとのこと。
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時を経て、自分がこうやって歩いているのがなんだか奇妙に感じた。
当時どういう人がどういう思いでここを歩いたのかな。
生きることに必死だったのかな、私みたいにただ甘酒が飲みたいだけの人はいたのかな。
いろんな想いはあれど、通る人をずっと支えてきた道なのだ。
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道の隅には少し雪が残っていて、日に照らされてキラキラ輝いていた。
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気軽に歩けるコースだと思っていたけど、意外と登りがキツくて汗だくになった。
前の登山は寒かったのに、もう春がくるんだと、体で季節の変化を感じた。
登山とかキャンプとかバイクとか、外での活動を始めてから、季節の変化というか、気温の変化を身をもって感じている。
昨日までバイクに乗るのが寒かったのに、少しずつぽかぽか陽気になっていたり、夜が来るのが遅くなっていくのがわかったり。
今まではずっと家にこもっていたから、ニュースでしか季節の訪れを知れなかったけれど、日々こんなにも季節は移り変わっていて、おんなじ日はやってこない儚さというか、無常というか、ちょっとした希望みたいなのもじんわりと感じる。
ちゃんと日々は過ぎていって、明日がやってくるよって思える。
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箱根旧街道は車道の近くを歩いているんだけど、自分は自然の中にいて不思議な感覚だった。
近代的な舗道と昔ながらの旧街道が一緒の空間に存在していて、残すものと新しくするものの狭間にいる気がした。
生きる上でなにを残して、なにを変えていくべきか。
そんな選択は自分にできるのかな…。
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足元に目をやると苔から芽が出ていた。
日を浴びようと一生懸命にょきにょきしているように見えてとても愛らしかった。
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畑宿から1時間くらいで念願の甘酒茶屋に着いた。
前回は家族で来て、お母さんが甘酒をすごく喜んでくれたから自分もうれしくなったことを思い出した。
普段あまり話すことのないお父さんは、甘酒茶屋の内装をじっと見ていた。
建築関係のお父さんはお店に入るといつも内装をじっと見る。あと働いている人のことも。
そこではなにも語らないけれど、お父さん自身の仕事を見ていると、なにかを吸収しているのは明らかで、いつもそのすごいセンスとこまかな作業に私は尊敬するしかなかった。
お父さんは私にとって憧れの存在で、だけど自分はそうはなれない、そんな能力がないんだとずっと悲しかった。
だけど、もうお父さんの影を追いかけるのはやめて、自分の好きに生きようと思い始めてから、不思議とお父さんらしい選択をしている自分が出てきているのに気づいてきて、自分のなかにも尊敬するお父さんの血があるんだとうれしくなって、自分の良いところとうまく組み合わさって私らしく生きていきたいと思うようになった。
そういえば、家族で来たときは入り口にお江戸のカツラがおいてあって、みんなでかぶって写真を撮ったっけ。
コロナのせいかそのカツラは置いていなくて少し寂しかった。
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甘酒は熱々で、冷えた体に染み渡る。
ほのかな甘さがすぐエネルギーに変わっていくのがわかる。
とてもとてもおいしかった。
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期間限定の胡麻きなこもちも食べた。
これまたおいしすぎて、たぶん5分もせず完食してしまったと思う。
また食べに来なければ。
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寒がっているとお店の方が暖炉に木をくべてくれた。
キャンプ以来ひさしく火を見ていなかったから、おぉいいですねぇと体を暖炉に寄せて温まった。
実は、キャンプで焚き火していると、煙ばかり気になってあまり楽しめない自分がいる。
髪の毛に臭いがつくとか、帰って服を洗わなきゃとか。
煙とか片付けとかそういうことばかり気にして、行為自体を楽しめないの、もう変えたいなと思った。
先ばかり見てないで、「今」をもっと堪能できたらいいな。
甘酒茶屋の暖炉は、なかなか木に火がつかなくて、これもあるあるだよなぁとうなづきつつ、お店を後にした。
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茶屋から芦ノ湖までのルートは雪がたくさん残っていた。
つるつる滑るので一応持ってきていた軽アイゼンを付けることに。
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付け方がわからなくて説明書を見ながら装着。
普段の自分だったら家で付ける練習してから挑むのに、まさか今回使うことになると思ってなかったからなにも準備していなかった。
だけどなんとか付けられて、なんだ大丈夫じゃんとちょっと気が抜けた。
登山にはもちろん念入りな準備が必要だけど、急な事態が起こったときこうやって対応できる自分もいるとわかって、やみくもに心配しすぎなくてもいいかなと少し自信がついた、かもしれない。
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初めての軽アイゼンをつけて、ざくざくと雪道を歩いた。
これが雪山かぁ!と感動して、確かにこの雪のきらいさを見たら冬山に登りたくなるよと実感。
今年か来年には雪山デビューできるかなとか考え出したけど、まだいいかなとふみとどまった。
いつもなら、雪山行きたいって思ったらすぐ調べ出して道具揃えて計画立てて…と突っ走るけど、最近はその傾向が落ち着いてきた。
行けるときでいいやとか、まだちょっとめんどうだしいいやとか、一呼吸おけるようになってきた。たぶん焦る心が減ってきたからだと思う。
それは、自分に対して「それでいい」といつも声かけをするようになって、自己肯定感が上がってきたからだと思う。
焦っても、ネガティブになっても、落ち込んでも、それでいいよとまず肯定してあげると、不思議と心が落ち着いてきて、変に焦ったり不安に駆られたりすることがなくなってきた。
今はまだ実践中だけど、落ち着いたらまた文章にまとめたいと思う。
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雪道を堪能しながら歩いていると、芦ノ湖が見えてきた。
もう終わってしまうのかと少し寂しい気もした。それくらい初めての雪道が楽しかった。
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芦ノ湖はやっぱりきれいだった。
車で来ていたときとは違う感覚で、まさか自分が登山を始めて、そしてここに歩いてくるなんて想像もしていなかった。
昔から生きるのがつらくて、旅行しても人の目ばかり気になって、楽しいのかつらいのかよくわからないことが多かったけど、今はなにが楽しくて、なにがしたくないのか、わかってきた感覚がある。
自分の好き嫌いがわかるなんて当たり前かもしれないけれど、私にとっては初めてのことで、あらためて人生の中心に自分が戻ってきている感覚がしている。
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3時間弱の短いハイキングだったけれど、飲みたいと思った甘酒を飲み、大好きな苔を見て、初めての雪道に夢中になるという、自分の好きがたくさん詰まった箱根旧街道になった。
暑くなる前にまた歩きに行きたいな。