人生が変わる手帳
なんてものはないのかもしれない。でも、買い物するとき、これで人生が変わるかも!といつも結構期待している。清水買いの品物だって、100均の便利グッズだって、「これがあれば暮らしが楽しくなるに違いない」という確信を持って買う。その高揚感は、買い物の楽しみの一つだと思う。
手帳を買って一週間。とにかく、朝起きるのが楽しい。
起きてまず、昨日あったことを数行にまとめる。シンプルにブルーブラックの万年筆一本で。そしてその万年筆は、いつだって手帳にセットされている。それだけのことだが、毎朝すごく満たされる。白い無地リフィルに書きたい分だけ。7日間で、まだ2枚目の表だけれど、それでいい。無理せず積み重ねていく記録と思考の断片が、まっさらな手帳を彩っていくのがうれしくてしょうがない。
ここ一年程、システム手帳熱が再燃して、ずっとジプシーだった。私は大切な一日一日を取りこぼしているのではないか。気分の浮き沈みの中で、今が指の先からこぼれていってしまうような、漠然とした不安を抱えていた。
去年の8月から、買った手帳は三冊。いずれもミニ6(M6)サイズで、どれも本当に欲しいと思い、実際使ってみても素晴らしい手帳たちだ。
一冊目は、アシュフォードのサントシャペル。今までの私なら、趣味じゃない、と言っていただろう。手帳は黒か茶か紺。ビジネスシーンできりっと決まる色がいいと思っていた(し、今も仕事ではネイビーのA5手帳を使っている)。でも、内なる私が、美術部の文化祭のテーマが「無機質」なのに粘土細工のフラワーフェアリーを展示していたころの反抗的でカラフルな私が、これを欲していた。
二冊目は、ノックスのピアス。緑色の園芸手帳をつくりたくて、Nピアスの情報を目を皿のようにして探していた私に、ふと降りてきた柔らかなバッファロー革の手帳。誰かの使いこまれたつやりとしたピアスのインスタに、すっかり心を奪われてしまった。お値段も手ごろで、ワンテーマの手帳に巨額を投じていいのか?と悩む私に現れた、救世主だった。
三冊目は、ブレイリオのミネルヴァボックス。Nピアスで芽生えたナチュラルカラーを経年変化させてみたいという想いは消えることなく、ヌメ革手帳の写真を眺める日々の中で、伊東屋のシステム手帳フェスで見たあの使い込まれたあめ色の革の雰囲気を、忘れることはできなかった。
これで満たされた!と思ったのだ。内なる私に忠実に、新しい趣味の受け皿も確保、撫でまわして楽しむヌメ革もやってきた。もはやほしいものは…
あるのだ。
M6は持ち運びに優れる。が、ずっとサコッシュに入れておくならトラベラーズノートのパスポートサイズにまさるものはない。M6で携帯性にこだわるなら、プロッターにいくべきなんだろう。でもあのM6システム手帳の厚みがあってコロコロした感じ、好きなんだよなー。
でもでも。インクテンスの色鉛筆を買って、A5のノートに絵を描き始めたので、スケッチ用にもう少し大きな筆記面のシステム手帳がほしい。。バイブルサイズもA5ももう数冊ずつ持っているのだが、新しいのがほしい。なんでも描けて、ラフに使ってこそ味わいを増していくような。重くても大丈夫なリュックも買ったので、重くても大丈夫。万年筆だけじゃなく、鉛筆や消しゴム、のりも持ち歩きたい。私の全部を受け止めてくれる、そんな手帳…そうして出会った運命の一冊について、使いながらゆっくり書いていきたいと思う。