怪談の形式


「現代怪談」とはなにか?

私がここで考察の中心にしようと考えているのは,稲川淳二氏などが行っているアレのことである.聞いていてぞくっとするような話を大まかに怪談とする.都市伝説と呼ばれるものがあるが,これと重複する部分はある.

ただし,神話,昔話,伝説などの形式が古からのお話の形式としてあるが,一番近いのは昔話だろうか.
柳田國男氏の『遠野物語』では現代で言う怪談っぽい話が収録されているし.

怪談の語り方

怪談というのは自分の体験談や人から聞いた話という体をとっていることが多い.「これ,一週間前考えた話なんですけど…」というのはタブー.小説や映画とは異なる意味で「リアリティ」を持っていなければ怪談として成立しない.

怪談の「リアリティ」に関する部分でもう一つ目立つのが叙述のリアリティだ.小説などではその主人公の心象に焦点が置かれる記述になるが,怪談においては一見どうでもよさそうな主人公の習慣,職業の業務内容,生活している街の地理などに多く描写が割かれる.

一見すると話の本筋とは無縁で無駄のことのように思えるが,これは幽霊が出るという非常識なコトを語る際にそのリアリティを担保するテクニックであると考えられる.

「友達がさぁ,昨日仕事場で髪の長い女の幽霊見たんだって!怖くなってすぐ逃げたらしいけど.」

これでは怪談は成り立たない.

「どこどこで派遣で働いてる友達がいるんだけど,ちょっと怖い体験したらしいんだよね...

友達が働いているところって東京でも郊外なんだけど,この不景気で残業時間はヒトがあんまり残ってないらしいんだよ…」

これが怪談の話し方である.言うなれば物語本筋の周囲から固めて非常識な事象が起こっても話が破綻しないようにしているといえる.

擬音・擬態

怪談は非言語的な表現を用いることが多い.「スーっと影が過ぎていった...」,「ひた...ひた...とその足音が近づいてくる...」などである.これは稲川淳二氏の影響が大きいか?

お化けとの遭遇パターン

心霊スポットに行く話

心霊スポットに行ってお化けと会って逃げる,失神するなど.話としては作りやすいかと思われる.呪いのパターンにつながることもある.

徐々に謎が解き明かされるパターン

大学進学に従って上京,初めての一人暮らしに充実した日々を送る.彼の住むアパートは不思議なことが起こるが,「まぁ家賃も安いし」と気にすることもなくなっていた.あるとき夜中に目が覚めると髪の長い女が枕元に立っていて日に日に怪異がエスカレートしていく....

実はあれはお化けだったんだパターン

かなり高度な怪談.大学進学に従って上京,初めての一人暮らしに充実した日々を送る.隣の部屋の住人も感じがいいきれいなお姉さんで毎朝挨拶をしてくれるようになった.数か月過ぎたある日アパートの大家さんと立ち話になりふとその隣人の話になるとあの部屋は空き部屋だよと言われる.

呪いのパターン

心霊スポットなどに行ったなどのイベントをきっかけに主人公に呪いがかかる.多いパターンが心霊スポットに行った友達が一人ずつ死んでいき,次は自分の番じゃないかとおびえる日々を過ごすパターン.

呪いのアイテム,人形などを家に持ち帰ってしまい不幸が一家を襲うなどのパターンもこれに相当する.

死期が判るパターン

小さい子が病院にお見舞いに行った際「あのひと(患者)死ぬよ,だって黒い影がついてきてるもん」などと不可解なことを言うが,その日の夜元気だった患者が死ぬ.

老人ホームのボケたおばあさんがあの黒い影がいるから今日は死人が出るよなどというパターンもある.

予知夢

夢に頻繁出てくる女のひとがいる.彼女は「○日後,会いましょう」といつも話してくる.その日にちがだんだん迫ってくるのが気持ちが悪い.しかし人間毎日のように起こることだと気にしなくなるもので,起きている時間はそんなこと頭に浮かぶことはなくなっていた.残業でくたくたになった深夜の帰り道.公園のそばを通り過ぎるとその女の人が公園の奥の方で手招きをしていた.恐ろしくなり走って家まで帰るが……みたいな.

夢に出るお化けが予言めいたことを言うとさらに怖い.「何日誰々死んじゃうの.かわいそう,かわいそう」とか.

怪談における禁忌

怪談の主人公が死んではいけない

怪談の主人公が死んだらその話誰から聞いたの?となる.

新聞に載るような大事件をストーリーに入れない

そんな大事件,絶対新聞やネットに残っているはず!となる.

あまり出来すぎた話にしない

あまりに話が出来すぎているとなんか嘘っぽい.最近は「あれって結局何だったんだろう???」みたいなオチで具体的に幽霊が出てこない話もあるがそれはそれで現実味がある.

終わりに

とりあえず思いついたことだけ書きました。

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