摩利支天尊の枝垂れ梅
春の訪れを他の花よりも一足先に告げる梅の花。
その梅を、特に枝垂れ梅を見に、淡路島神代浦壁にある摩利支天尊という寺院に行ってきました。境内には樹齢23年以上の一本の枝垂れ梅がありピンクの花が今まさに満開の状態で咲き誇っていました。
実は、淡路島にはつとに有名な「村上宅の枝垂れ梅」この摩利支天尊からさほど遠くない場所にあります。
でも、私は人出の少ない所をと思いこちらの摩利支天尊へと行きました。
私は、その静かなたたずまいの一本のみの枝垂れ梅をスマーフォンで撮影
すべく構えました。ところが一番見どころの場所には一人の女性がプロのような機材を駆使して撮影しようとしているところでした。
思わず私は、「ごめんなさい。すみません!」と言って場所を変えようとすると、その女性が「どうぞ、私は時間があるのでゆっくり後で撮影します」とカメラを設置しているにも拘わらずその場所を譲ってくれました。
「ありがとうございます、お言葉に甘えさせていただきます」とお礼を言って先に撮影をさせていただきました。
その女性の優しさにほっこりとした気分にひたりながら撮影を続けました。
肌寒い日であったにも拘わらず私の心は暖かい感情で満たされていました。
「こんにちは。このしだれ梅、素敵ですよね」と彼女。
「こんにちは。はい、とても綺麗ですね。あの、先ほどはありがとうございました。あなたは、プロのカメラマンですか?」と私は尋ねました。
「いえいえ、趣味ですよ。でも、このしだれ梅は毎年撮りに来ています。
寂しい場所だけれど私にとってはいい場所なんです」と彼女は言いました。
「そうなんですか。人が少ないのがいいですね」と私が言いますと、すかさず彼女は、「そうでしょう。有名なところは人が多くてなかなかいい写真が撮れません。その点、ここは人が少なく静かで自分が納得するまで撮れます」と言い彼女は、また、撮影に集中していました。
すると。どこからともなく真っ黒な子猫が私に近づいてきました。
思わず抱き上げると、のどをゴロゴロ鳴らして目を細めました。
「暖かくていいね」と頭をなでてあげると益々のどを鳴らします。
「もう いいか?行くよ!」主人の声で「はーい」言って子猫をおろしました。
先ほどの女性にもう一度「ありがとうございました」と声を掛け主人の方へと急ぎました。
女性も「いいえ、どういたしまして!」と返してくれました。
肌寒い日にも拘わらず、満開の枝垂れ梅と女性とのやりとりや子猫の登場で、思わぬ(ほっこり)に出会って、陽だまりの暖かさの中にいるような気分でその場を後にしました。
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