コーヒーであること
「きみはコーヒーが好きだな。これを飲んでみろ」
「これはコーヒーだね?飲ませてもらおう…………おいしい」
「ふふ、実はそれは、ほどよい苦味とコクと香ばしさと忌まわしくない見た目があって喉を潤してくれるしおいしいし安全なだけのコーヒーじゃない液体だよ」
「そうか、だがもう一杯もらおう。僕がコーヒーに求めてるものは、まさに、ほどよい苦味とコクと香ばしさと忌まわしくない見た目があって、喉を潤してくれるおいしい安全な液体であることだ。それを満たしてくれるのならこれはコーヒーなんだよ。僕にとってね」
「しかし、これは…………コーヒーじゃないんだ。これがどうやってできたのか知らないだろう?もし、俺が悪魔に淹れてもらったやつなら、どうするんだ?」
「安全性がなくなるからコーヒーじゃなくなるね」
「では、きみはなぜこれが安全だと、コーヒーだと言えるんだ?」
「君が飲ませるものだからだよ。君への信頼によって、これはコーヒーになりえた」
「……………………」
「思索に耽るといい。僕は三杯目も飲ませてもらおう」
「うん、おいしい」