8/24
一晩たって、あなたが言っていた言葉を思い返した。
「君は、俺の真面目な所が好きだったでしょ?」
そうだった。
わたしは確かに、この人の真面目なところが好きだった。
どうして言われるまで忘れてしまっていたんだろう。
誰に見られていなくても真面目に、丁寧に仕事をする所とか、自分の考えがちゃんとある所とか、真摯に人に向き合う姿勢とか。
わたしが好きなあなた。
きっと忘れてしまっていたのは、二人で同じように間違ってしまったからなんだろうな。
正解とか、不正解とか、良いとか、悪いとか。
全部わからなくなった。
というか、なにが正解でなにが不正解かなんて分からなくてよかった。
わたしには、そんな答え必要なかった。
けれど、やっぱり物事には全部理由があって、答えがあって、いつのまにかそんな子供みたいなことを言ってられる年齢じゃなくなっていて。
この日からわたしはちゃんとしようと思った。
生活習慣も整えて、部屋も片付けて、やるべきことをちゃんとやる。
ちゃんとした人間に生まれ変わろうと思った。
でも、そんなすぐには変わらなかった。
たくさんの影響を及ぼしてきたあなたがいなくなっても、わたしの生活は変わらなかった。
それが、とても悲しかった。
もちろん、未練がないわけじゃない。
この日はご飯も食べられなかったし、眠れもしなかったし、数日たっても一日中ずっと、考えている。
なんなら、考える時間は増えた。
きっと、変えたくないんだと思った。
変わってしまうのが、変わらなかったことよりもずっとずっと悲しいのだと気づいた。
ずっと好きなままでいたいし、ずっとあなたと過ごしたわたしの形でいたい。
あなたがわたしの人生にいた形跡を少しでも残していたい。
わたしがこうなることをあなたは望んでいないのも分かってる。
すぐにでも前を向いて欲しいと思っているだろうし、自分にばかり囚われて欲しくないと思っているでしょう?
でもね、あなたの事だから、やっぱりわたしがこうなってるのにちょっとだけ嬉しい気持ちもあるんだと思うの。
わたしのことを誰よりも分かっていたあなた。
わたしのことを誰よりも好きだったあなた。
わたしにとって、なによりも大切だったあなた。
今はまだ、あなたのことを好きでいさせてください。
いつか、ちゃんとするから。